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8月5日(ブルームバーグ):デフレの脅威からインフレ懸念へ――この 180度転換には異論もあろうが、5月初旬以来の米長期債利回りの低下とその後の上昇は、その大部分が実質金利の動きであってインフレ期待(予想インフレ率)の変化ではない。金利上昇は本物だ。
6月13日から8月1日までの金利上昇の3分の2は、インフレ調整済みの借り入れコストである実質金利の上昇だ。実質金利については、10年債利回りと10年物のインフレ連動債(TIPS)利回りを比べると分かる。
同様に、5月5日から6月13日までの金利低下でも、実質金利の低下分が 80ベーシスポイント(1ベーシスポイント=0.01%)のうちの65ベーシスポイントを占め、インフレ期待の低下は15ポイントにすぎなかった。
これはどういうことだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)は5月6日に、「好ましくない大幅なインフレ率の低下」について警告したのではなかったか。投資銀行のバークレイズ・キャピタル・グループの米国担当チーフエコノミスト、ウィルモア氏は「市場は、米金融当局がデフレ回避に成功することを信じた」と説明する。
人々がデフレになると考えてインフレ期待が低下すれば、名目金利を急速に引き下げない限り、実質金利は上昇してしまう。実質金利の低下は、金融当局のデフレ回避に対する市場の信頼を示した。同様に、実質金利の上昇は政権の経済政策に対する信頼を示しているとみられる。
株とジャンク債
興味深い、というか不気味なのは、金利上昇が株価に影響を与えていないことだ。金利上昇は、増益や成長加速への期待という逆方向の要素がなければ、株価にとってはマイナスのはずだ。なぜなら、長期金利(長期債利回り)は、将来のキャッシュフロー(現金収支)を現在の価値に計算し直す際の割引率だからだ。
「ユニバーサル・エコノミクス」を発行するニューポート・ニューズ(米バージニア州)の運用担当者兼市場アナリスト、モントゴメリー氏は、理論的には、金利が上昇すれば「将来のキャッシュフローの割引率が上がるのだから、株価は下落する」と説明する。同氏によると、金利上昇はナスダック(店頭市場)総合指数にとっては特に痛手なはずだ。ナスダック銘柄の「キャッシュフローは事実上、全額が将来発生するもので、配当の形で現在得られるものはゼロ」だからだ。
実際は全く逆だ。8月4日の取引終了時点で、ダウ工業株30種平均とS&P500種株価指数は10年債利回りが3.1%だった6月13日からあまり変わっていないのに対し、ナスダック総合指数は5.4%上昇している。
150ベーシスポイントの金利上昇にびくともしないということは、株価上昇には持続性があるのかもしれない。しかし短期的には、株価は下落する公算が大きいとモントゴメリー氏はみている。
ヒントとなるのはジャンク債(高リスク・高利回り債)の動きだ。ジャンク債市場は、国債利回りよりも企業の利益見通しにより敏感に反応する。ジャンク債利回りは、2002年10月からことし6月半ばにかけて低下した後、上昇(価格は低下)し始めている。
隘路(あいろ)
モントゴメリー氏は、3月半ばの株価急落時にジャンク債相場が動かなかったことを挙げ、下落は「長期的な上昇の旅路の一時的な回り道だった」とみる。ジャンク債の示すところが正しいとするなら、同氏の言う「株価上昇の旅路」はもう一度中断するかもしれない。この旅路を行くには、金利上昇と期待外れの企業利益という2つの障害物の間を縫って巧みに進路を取る必要がある。その道は狭い。(キャロリン・ボーム)
(ボーム氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストで、同氏の見解は彼女自身のものです)
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Last Updated: August 6, 2003 03:40 EDT
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000003&sid=ak4BdTqF89ho&refer=top_kaigai