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中国版PHS「小霊通(シャオリントン)」の主要部品メーカーである沖電気工業は6月下旬、20社以上の中国企業から、技術供与や業務提携などの申し込みを受けた。しかし、同社は首を縦には振らなかった。
沖電気工業の前田裕常務取締役は先ごろ、日経ビジネスの取材に対し、中国での「小霊通」の急速な普及によって、同社の関連部品の売り上げが急増していると述べた。しかし同時に、市場がどれほど大きくとも、中国でのPHS関連事業をこれ以上拡大する意思はないことも明らかにした。
沖電気工業の慎重な姿勢に代表されるように、日本の主要なPHS技術保有企業はどこも、爆発的な勢いを見せる中国の「小霊通」市場への進出に二の足を踏んでいる。
中国市場に向ける冷静な視線
日本の主要なPHS設備(基地局、端末、部品を含む)メーカーで、中国市場の盛り上がりを理由に生産ラインを拡大するところはなく、大半が従来の規模を維持している。生産規模もほとんどが1997年ごろのままだ。日本ではPHSサービスは、1995年7月にNTTパーソナルとDDI(いずれも当時)が開始。95年から97年にかけて黄金期を迎え、一時は利用者数が700万と、携帯電話利用者全体の18%を占めていた。
しかし、移動体通信技術の発達につれ、1997年末を境にPHS市場は縮小を続けることになる。社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、2003年4月末現在のPHS利用者数は540万で、携帯電話利用者全体の6.6%にまで減少している。
この間、日本のPHS設備メーカー各社はスリム化に努め、生産ラインを縮小し、研究開発投資も基本的にストップした。
現在、エイビットや本多エレクトロンなど数社が、チップ開発に投資しているが、いずれも会社の規模が小さく、大きな流れをつくるには至っていない。この状況が中国版PHS「小霊通」の隆盛によって変化する兆しはない。
現在PHS用チップの生産は、東芝、沖電気工業、三菱電機など数社しか行っていない。いずれも新たな研究開発は行わず、1999年に開発されたチップを生産している。
沖電気工業の前田常務取締役は「中国政府が一旦政策を転換すれば、PHS市場が消滅するおそれがある」と懸念する。
しかし、PHS技術を有する日本企業の中には、中国市場に関心を示すところもある。エイビットは無名ともいえる中小企業だが、目下のところPHS用チップの研究開発を行っている日本で唯一の企業である。だが、会社の規模が小さく、チップを自社生産することができず、縮小し続ける日本のPHS市場で苦戦を強いられている。
エイビットは発展を続ける中国市場に希望を託している。同社の檜山竹生社長はパートナー企業を探して中国に現地法人を設立し、「小霊通」のコア技術とチップの研究開発および端末を設計・生産することを計画している。
同社はこの計画の実現に向けて、日本でのビジネス経験が豊富な中国人、胡力遊氏を中国地区担当として招聘している。
中国企業から技術料を徴収
中国で急成長を続ける「小霊通」市場に、日本企業が心を動かされないというわけではない。しかし、彼らは損得勘定に抜け目がない。中国市場に直接進出して、生産ラインを新設するには、新しく開発チームを組織し、新規に金型を製作し、部品メーカーを呼び寄せる必要があり、かなりのコストがかかる。そこで、日本企業は先端技術を輸出して、中国企業から技術料を徴収する方法を選択した。
松下(中国)の宮沢慶和副総経理は、「パナソニックモバイルコミュニケーションズ(旧松下通信工業)としては、新たに生産ラインを設けて、PHSの戦場に戻るつもりはない」と述べている。同社はすでにPHS技術一式をUTスターコムに売却し、技術料を得ている。
技術の販売には二つのやり方がある。一つ目は技術そのものの提供、つまりUTスターコムなどの中国企業に製品設計資料(PHS端末の金型など)を提供する方式だ。中国企業はこれを基にOSの中国語化をはじめとする改善を加え、中国の技術規格に従って製品を複製し、中国市場で販売する。同時に中国企業は、日本側のパートナー企業に相応の報酬を支払うが、これにはロイヤルティーを支払う場合と、あらかじめ取り決めた金額を一括払いする場合の二通りがある。
二つ目は部品の提供、すなわちチップ、アンテナ・モジュール、ディスプレイなどを販売する方式だ。現在、中国は国内でこうした部品を生産する実力はなく、日本企業もこれら部品の生産技術を戦略的に保護し、外国企業を厳しくシャットアウトしている。中国企業は端末用チップや関連部品を日本から輸入(その他大部分の部品は中国国内で調達可能)し、自社で組み立てるといった方法を採らざるを得ない。
こうした手段を通じて、日本企業は「小霊通」という沃土から黄金を掘り出しているのだ。
社団法人電子情報技術産業協会の統計によると、2002年には三菱電機、京セラ、三洋電機の三社が、PHS基地局のシステムによって90億元を手中に収めた。2003年第1四半期にも、三洋電機のPHS売上高が30億元を超え、京セラも25億元を手にしている。
しかも、抜け目のない日本人はPHSのコア技術を手元から離さず秘匿しているため、中国企業は今もって受身の立場にある。
例えば、UTスターコムが現在入手している技術は、音声チャネルを利用してデータ通信を行うものだが、日本ではすでにパケット通信技術が採用され、音声通話とデータ通信が同時にできるようになっている。UTスターコムの技術では、現在のところ同時に通信を行うことは不可能だ。
このほか、中国企業にコア技術がなく、日本で製造されるチップに依存しているにもかかわらず、日本の部品メーカーが中国市場の動向に不安を抱き、部品供給体制の強化に躊躇するため、必要な部品が不足し、端末の生産が需要に追いつかない現象も起きている。端末の供給不足は、「小霊通」発展の足かせとなり始めている。
UTスターコムと中興通訊は、チップなど自社生産が難しい一部部品を除けば、ほぼ自主開発が可能になったとしている。
易観諮詢の通信コンサルタント朱敏氏も、コア部品を輸入に頼らざるを得ない点を除き、「小霊通」は技術標準がオープンなため、例えば中興通訊のような企業が製品開発、特に基地局システムの開発に乗り出しても、まったく問題はないという。にもかかわらず、こうした企業が自社で製品開発を行わないのは、単にコスト抑制を考えてのことにすぎない。
市場参入への高い壁
現在までに、中国国内では300以上の都市で「小霊通」の使用が可能となった。利用者数は1400万を超え、年末までには2500万に達すると予測されている。計画では新規加入者をさらに1500万増加させる予定である。「小霊通」普及の勢いは多くの企業の参入を促している。
情報産業部は「小霊通」を「固定電話を補完するもの」と位置づけている。情報産業部が行う電波測定に合格しさえすれば、どの企業の製品であれ、携帯電話事業免許なしで市場参入することができる。このため、ビジネスチャンスにかける企業にも大きく門戸は開かれている。
しかし、NTT(中国)の職員によると、新規参入者にとって、「小霊通」市場は必ずしもバラ色ばかりではないという。「小霊通」の場合、最大の利益はネットワーク基地局システムから発生する。一方で、端末の価格はUTスターコムなど参入済みの企業が安く抑えている。UTスターコムなどは基地局システムでは利益を得ているが、端末ではそれほど利益を上げていないのが実情だ。
中国メーカーと提携する日本企業も、端末一台あたり数米ドルの利益しかない。業界関係者によると、一般的に契約のミニマムは50万台で、これを下回る場合には、提携した双方に損失が発生する。またリスク回避のため、PHS技術を保有する日本企業は通常、安易に提携先企業を変えることはない。
これに加えて、端末の生産ライン新設にかなりの費用がかかるというハードルもある。前述のエイビットが、中国側の提携先選びにあたって提示した最低投資額は、1000万米ドルとなっている。
(陳志剛 = 21世紀経済報道、上海発)