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http://www.morganstanley.co.jp/securities/jef/wib/030630/doc03.html
ウィークリー・インターナショナル・ブリーフィング 06.30.2003
為替:EUR/USD相場は既に今年の最高値をつけた可能性あり
We May Have Already Seen the Year's Peak in EUR/USD / Stephen Li Jen
米国経済は(緩やかなペースながらも)世界の他地域に先駆けて回復し始めるだろう。これは、EUR/USD相場が1.20ドルを超えて上昇する上で大きな障害となろう。
EUR/USD相場およびEUR/JPY相場は既に今年の最高値をつけた、あるいはそれに近いレベルにあるのかもしれない。弊社為替ストラテジストの中には1.20〜1.25ドルまでユーロ高ドル安が進むと見る向きがいるが、筆者が思うに、EUR/USD相場が1.20ドルを超えて上昇するのは難しいだろう。
EUR/USD相場が既にピークあるいはそれに近いレベルにあると考える理由 ドル相場ならびに世界経済の先行きに対する筆者の見方は、以前と変わっていない。ドルの実効レートは引き続き緩やかな低下が見込まれる。世界経済については、依然として過剰生産能力が懸念され、債券相場はバブルの状態にはないとの見方を堅持している。
向こう年内のEUR/USD相場の見通しを占うにあたり、筆者は以下にあげる点を考慮している:
ポイント(1)米国とユーロ圏との間に見られる成長率格差 米国経済の先行きに対しては様々な見方があるが、ユーロ圏経済の見通しの大幅な悪化に比べると、恐らく為替相場へのインパクトは小さいだろう。EUR/USD相場ならびにEUR/JPY相場の高騰は、ユーロ圏経済に大きな影響をもたらそう。2003年のユーロ圏のGDP成長率について弊社では0.4%と予想している。これは、米国の予想成長率の6分の1で、日本と比べても低い。ドルには依然として構造的なマイナス材料が散見されるが、EUR/USD相場に関しては循環的側面の重みがさらに増している。筆者が思うに、米国経済は(緩やかなペースながらも)世界の他地域に先駆けて回復し始める可能性がある。これは、EUR/USD相場が1.20ドルを超えて上昇する上で大きな障害となろう。
ポイント(2)ユーロ圏の潜在成長率 巷では、(資産収益率が低下している中での)経常収支赤字の拡大と海外からの対米資金流入の減少はドルにとってマイナス材料になる、と広く認識されている。だが、筆者が思うに、そうした見方はもはやEUR/USD相場にはあてはまらない。以下に挙げる2つの点を考えると、ユーロ圏資産の期待収益率が米国資産のそれよりも高いとは考え難い。まず第1に、成長率予測を見る限り、米国とユーロ圏との間の格差は大きい。第2に、米国は「需給ギャップ」の問題を抱えているが、ユーロ圏も「潜在成長率」に関する問題を抱えている。筆者が思うに、米国は投資バブルの消化に奮闘しており、需給ギャップの拡大が大きな懸念となっている。これに対して、ユーロ圏の場合、デフレ圧力の不在は、構造的な硬直性故にユーロ圏の潜在成長率が低下していることを示唆している。2002年にEUR/USD相場は上昇したが、それは消去法によるもので、長所が評価されてのことではない。現在、ユーロ圏には、EUR/USD相場に影響をもたらすようなマイナス材料が散見される。
ポイント(3)「債券文化」から「『債券+株式』文化」へ EUR/USD相場にとっては、投資家の心理も重要な要素である。実際、弊社のバリュエーション・モデルによると、EUR/USD相場のフェア・バリューは、「債券文化」が支配的な状況では約1.18ドルとなるが、「株式文化」が支配的な下では約1.02ドルとなる。個人的には筆者は株価上昇の持続性には懐疑的だが、機関投資家の間では株式の比率を高める傾向が強まりつつある。こうした傾向がEUR/USD相場へ及ぼす影響には注意が必要である。この点については、弊社のバリュエーション・フレームワークを機械的に解釈してみるとよいだろう。世界の投資家が完全に債券を重視していれば(つまり、相対的なキャピタル・ゲインではなく、各国間の利回り格差だけに注目しているのであれば)、EUR/USD相場は1.18ドル付近で、債券と株式を均等に重視しているのであれば1.10ドルのレベルで安定しよう。現行のレベル(1ユーロ=1.15ドル)では、債券と株式の比率は80:20ということになる。世界が「債券文化」と「株式文化」の2つの文化の間で揺れていることを考えれば、債券・株式の比率を反映したEUR/USDの「コンポジット・フェア・バリュー」の概念について考えておくのが有益かもしれない。株価が上昇を続ければ、EUR/USD相場は1.10〜1.15のレンジで取引されよう。だが、株式よりも債券が優勢となれば、EUR/USD相場は1.15〜1.20のレンジで取引されるようになるだろう。
ポイント(4)EUR/JPY相場には依然として下振れリスクがある EUR/USD相場は引き続き現行レベルから1.20ドル前後へ向けて上昇する可能性がある。EUR/JPY相場も上昇の可能性が否めないが、上昇の程度には引き続き懸念が残る。EUR/JPY相場は、主要為替レート中で最も不自然な状態にある。筆者が思うに、確固たる米国経済の回復はEUR/JPY相場の下落を招く最大の要因になるだろう。
結論 EUR/USD相場は既に今年の最高値をつけたのではないかと筆者は考えている。ドルの構造的調整はまだ完了してはおらず、EUR/USD相場はさらに上昇する可能性がある。だが、EUR/USD相場が1.20ドルを超えて上昇するのは容易ではないだろう。この先ドルは、ユーロや円に対してではなくより広範な通貨に対して調整される必要があるだろう。