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あまりに多くの人々が、ここ数年このような不確実な時代における最も安全な投資先は家屋であると考えてきた。多くの国々で実質ベースの住宅価格は前例のないほど値上がりしてきた。こうした状況は今後も持続するのか。本誌5月31日号の「住宅サーベイ」が論じられているように、答えは明らかにノーだ。
だが、住宅価格は頭打ちになるのか、それとも暴落するのか。世界経済の命運はこの答えいかんである。株式市場の低迷以来、値上がりする不動産価格が多くの経済にとって重要な下支え要因となってきた。
住宅価格が反転したら、株式の暴落がもたらしたより遥かに深刻な影響を世界経済に及ぼしかねない。家計の資金は株式よりも住宅により多く縛られているし、住宅の場合借り入れも大きくなりがちだ。
大方のアナリストは依然として住宅価格の急落はありそうにもないと主張している。低金利ゆえに人々は住宅ローンを借り入れる余裕があるというのが第一の理由だ。だが、実質金利は低くない。そしてインフレが低いことが、名目金利が低いことの主たる要因であるなら、賃金の伸びも更に低下することになり、それゆえ将来の住宅ローン返済の負担は増すであろう。
強気派の主張する第二の根拠は過去の住宅価格の暴落はいずれも金利の上昇によって引き起こされたというものだ。確かにインフレ率がこれ程低いなかで、近い将来金利が上がる可能性は低い。だが、過去10年住宅価格が着実に下落してきた日本とドイツのケースは、低金利が住宅価格下落を回避する手段ではないことを示している。
第三の人気のある議論は供給上の制約要因に焦点をあてている。しかし、この議論にも欠陥がある。世界で最も土地が不足している香港の不動産価格は過去5年で3分の2も下落している。
住宅価格をせり上げるいんちきの議論は、投資家により伝統的な価値尺度を無視させることにつながっている。株価が収益の伸びを長期に亘って上回り続けることができないのと同様に、住宅価格も長期に亘って所得より早く上昇し続けることはできない。
住宅価格の家賃及び平均賃金に対する比率を見ると、住宅価格は世界13ヶ国で過大評価されていることがわかる。この比率はアメリカ、オーストラリア、イギリス、アイルランド、オランダ、スペインで、過去最高水準にある。
もちろん、そうだからといって、住宅価格が間違いなく崩壊するというわけではなく、単に停滞するに過ぎないかもしれない。だが、住宅価格が名目ベースで下落することは充分考えられる。過去においては高インフレが過大評価された資産が価格の大幅な下落なしに調整することを可能にしてきた。だが、ほぼゼロインフレの世界では名目価格が下落する必要がより大きい。
住宅の名目価格が下落するだろう第二の理由は、イギリスやオーストラリアのような国々での貸すために買う住宅市場の成長である。住宅価格が不安定になっても、持ち家の場合そこに住み続けるが、貸すために家を買った投資家の場合、売却してしまう可能性が高い。
そうであっても、住宅市場は株式市場が経験したような突然の暴落に見舞われることはないかもしれない。その代わり、今後4年位ゆっくりと下落し続けていく可能性のほうが高い。
だが、世界経済がすでに脆弱化し、いくつかの国々がデフレの瀬戸際にある状況下では、住宅価格のゆっくりした下落は良くて不愉快、悪ければ痛みを伴うものとなろう。だが、これこそがバブルが膨れて、そして破裂する時に起こる事態なのである。
(英エコノミスト5月29日)
http://www.nier.co.jp/kijikanri/choryu/choryu-00515.shtml