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題名:No.581 日本のデフレ対策は疑問
From : ビル・トッテン
Subject : 日本のデフレ対策は疑問
Number : OW581
Date : 2003年7月4日
アメリカのある経済誌の六月号に、日本政府が過激なデフレ対処法を検討しているという記事が掲載された。それは「国民にお金を使わせるために現金や預金に年間3%から5%の課税をするというもので、タンス預金に税金がかかるとあれば国民はそれを消費に向けるかまたは株や債券、不動産を購入することによって日本経済に活況がもたらされる、というのである。
(ビル・トッテン)
日本のデフレ対策は疑問
このデフレ対策を行うために、日本政府は来年4月にも新しい紙幣を発行し、旧紙幣との交換の際に3%から5%を徴収するという。日本政府に税金を払いたくない国民は、そのお金を海外に向け、それによってアメリカの金融市場にはツナミのように日本円が押し寄せるだろう」と書かれていた。「資本家の道具」である同誌の記事は、まさにアメリカの資本家にとって待望の政策である。
同誌には書いてなかったが、調べてみると慶応大学の深尾光洋教授が自民党が開いたデフレ対策特命委員会と金融調査会・金融と物価に関するワーキングチームの合同会議において、その提案をしたようである。深尾教授は長年日本銀行に勤めていた金融の専門家だという。
深尾教授の主張によれば、低迷する日本経済を放置しておくことはデフレのさらなる悪化を招くだけであり、景気停滞の原因である銀行の不良債権を解決するためには、いくら公的資金を注入しても現在の国の借金と税収の減少をみれば、日本の国債の格付けを下げるだけである。したがって日本の財政赤字とデフレを解決するために劇的なことをしなければならない。そこで物価上昇目標(インフレターゲット)を設定し、従来の国債の買オペに加えて日銀が不動産投資信託(REIT)や東証株価指数(TOPIX)連動の投資信託などの実質資産を毎月数兆円、物価が徐々に上昇するまで買いつづけ、それでもデフレから脱却できない場合はデフレ率に見合った税率で、預金、国債、地方債、郵便貯金、簡易保険、現金といった政府が実質的に価値を保証する金融資産すべてに課税し、強制的にマイナス金利に誘導する、すなわち預金に課税することで株や不動産に資金をシフトさせる。さらにはデノミを実施して百円を旧102円と引き換えれば2%の課税ができ、課税対象は1000兆円を超え20兆円以上の税収入になるだろうという。
アメリカ政府が日本政府に不良債権処理を早く行うよう圧力をかけていることは周知の事実である。それによってアメリカの資本家が底値で日本の不動産を買い上げ、その後日本政府に資産価格をインフレさせるよう圧力をかけて値上がりしたところで売却すれば巨額の利益を手にすることができる。同誌に書かれた提案はまさにそれを実現させるためのものである。
日本経済が直面するデフレは、製品やサービスの価格の値下がりが原因であって、銀行の不良債権や金融資産の値下がりが原因ではないし、この提案で金融資産が上がっても日本のデフレが治ることはない。なぜなら製品やサービスの価格が下がる理由はただ一つ、それらの過剰供給にあるからだ。
過去200年間に起きたエネルギー革命によって、人間が消費できる量を上回って劇的に生産能力が向上した。生産能力があるからといってその能力いっぱいに生産する必要はないのだが、現在の状況から21世紀の経営者が自主的に過剰供給をやめるということは考えにくい。
また日銀が設備投資のために貸し出しを増やすように窓口指導を行って通貨供給を増やしても、過剰供給がもたらされるだけで結局デフレを治す解決策にはならない。銀行の不良債権をなくしても製品やサービス価格のデフレは治らず、したがってデフレが原因で起きる企業倒産や失業者の増加が止まることはない。
さらに日本政府が本当に銀行を健全化したいと思うのであれば、なぜ日本人の金融資産を安全な預金からリスクの高い株式市場へ移す必要があるのだろう。将来のために安全に貯金することを好む日本人を、無理やり株式市場というとばく場に連れ出すことは資本家に利益をもたらすことはあっても、日本国民の安定や幸福につながるはずはない。
マイナス金利については基本的に賛成だが、それは保管料とか預金保護料と呼ぶべきである。つまり政府が預金を100%保証するかわりに保管料をとるのである。過剰生産が続く限りデフレ傾向は続くので、手数料がデフレ率(製品やサービスの価格が下がる率)より高くならなければ、預金者は安心してお金を預け好きなときに出し入れができる。そのための安心料だと思えばよい。科学技術の進歩によって経済情勢が変わったのだから、預金を株に回すのではなく、例えばデフレ率が年間3%なら、3%の手数料を保管料として払うほうを私は選ぶ。
日本が直面するデフレを解決すると称して政府がとろうとする政策が、国民のためなのか、それとも国民の1%にも満たない億万長者やアメリカをより富ますものか、国民は注意を払わないといけない。