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週刊RR vol.24 掲載
民主党 参議院議員
大塚 耕平 氏
聞き手 編集局長 島田 一
――りそな銀行に対する公的資金投入後の経過についての印象は…。
大塚 ここまでは、結果オーライだ。世論が収束して、株価にも大きな影響を与えず、むしろ好転するとは誰も予測していなかった。しかし、仮に株価が下がっていたり、真相について世論の関心が薄れなければ、大失敗といわれている可能性もある。その真相とは、そもそもりそなが債務超過であったのかどうかという問題と、金融庁が債務超過を認められない背景についてだ。りそな銀行は少なくとも、発表された財務指標によれば、繰り延べ税金資産を除くとTier1が水面下に入ってしまう水準だった。また、そもそも資産査定がかなり甘かったとすると、金融庁の特別検査が適正であったかどうかという問題に発展する。
――3月期に実施された特別検査が厳格であれば、りそな銀行は大幅な債務超過だったのではないかと…。
大塚 金融庁が特別検査の最中にりそな銀に対して増資及び合併を認可したということは、その時点では債務超過ではないという認識だったということだ。その2カ月後には公的資金注入を決定しているにもかかわらず、金融庁は特別検査時の判断が甘かったと認めていない。竹中大臣が厳しく査定すると言ったものの、役所はその通りに動かなかった。これが、日本の改革が進まない最大の原因だ。それを今回、金融庁が如実に見せてくれた感がある。
――りそな銀行の決算でも繰り延べ税金資産の計上が問題になった。今までは5年分まで計上できたものが、3年分までしか認められなかった。デフレが進行する最中のこうしたルールの変更は問題だとの意見がある。
大塚 柳沢大臣のころは良かったものが竹中大臣に変わって認められなくなったという見方は、実は正確ではない。金融庁が金融機関を監督する当局として、規制会計というルールを示していないことが根本的な問題だ。柳沢大臣は会計基準の問題には触れていなかったが、竹中大臣は監査法人が厳格にやるべきだと発言した。しかし、それは監査法人に丸投げしているだけで、監督当局として自らの意思を明らかにしたものではない。今回、金融庁は財務当局が無税償却を認めないことや、監査法人の独断が悪いという言い方をしているが、その指摘は適切ではない。最大の問題は監督当局が規制会計を明らかにしていなかったことだ。
――公的資金投入については…。
大塚 わたしは投入すべきだと思う。先送りと虚構の金融行政が長年続いてきた結果、残念ながら金融機関が短期間で自力で自己資本を強化する道はほぼ閉ざされてしまった。金融システムを守るためには、公的資金を投入して、新しいビジネスモデルを作る。今までの経営方針では立ち行かなくなり、公的資金の投入に至ったのだから、新しいビジネスモデルは不可欠だ。同時に、繰り延べ税金資産の問題はいずれ生保に波及するため、生保と銀行を一緒にいったん公的管理下において、金融コングロマリット全体を抜本的に再編しないと、絆創膏をいっぱい張った銀行や生保が市場に残るだけで、本当の意味での改革にはならない。
――まずデフレを解消しろという意見もある。
大塚 ある面で的を得ている。デフレをインフレにする有効な手段があれば、まずデフレを解消すべきだ。ただし、それがなかなかうまくいかないところに問題がある。金利を限界まで下げたことが、構造的なデフレを呼んでいる。当初は銀行に対して収益支援するために金利をどんどん下げていった。金融システム全体を守るという意味で、ある段階までは正しかったと思うが、何事も過ぎたるは及ばざるが如しで、常軌を逸した水準以下に金利を下げたことが結果的に構造的なデフレを呼び、さらに運用機関である生保の経営危機を招いた。デフレをインフレにすればある程度好転するというのは事実だが、もはやデフレを人為的に直すということはかなり難しい。今言ったメカニズムを巻き戻すとすると、金利をある程度まで上げることになるが、銀行も一般企業も超低金利に塩漬けになっており、急に金利を上げれば両方とも苦しくなる。おまけに10年間で機関投資家や銀行が保有する国債の量は膨大になっているため、金利が上がり始めたら大変だ。だから、結論としては、自律的に景気が良くなるのを待つか、計画的に金融セクターを一定期間完全に公的管理下において、その間に企業部門から立ち直っていく姿を作る、というような発想の転換が必要だ。
――デフレ下で不良債権処理をしたらさらにデフレになるため、不良債権処理の促進と並行し、去年の今ごろに公的資金注入をすべきだった…。
大塚 我々は早くそうしろといっていたわけだが、公的資金を入れるには2つハードルがあった。ひとつは、経営責任を取らなければならないという議論だ。これは、国民の世論をみて、金融界が独自に決めればよいことだと思う。もうひとつはよりばかげた、しかし越えがたいハードルだった。それは、97〜98年の金融危機とその後の二度にわたる公的資金投入を経て、金融当局は「金融機関は健全化し、金融危機は去った」という虚構を作ってしまい、それ以降の公的資金投入を認められなくなってしまったことだ。今となっては過去を問わないから、現時点での実態を認め、さっさと注入したらどうだというのが正直な印象だ。虚構を建前としている限り、投資家は日本の金融行政や金融機関のバランスシートには相変わらず嘘があるんじゃないかと疑い続ける。
――デフレを直すのが仕事なのに、限界だとか打つ手がないとか言っている日銀が悪いという意見がある。
大塚 それはあまりにもバランスを欠いた考え方だ。金利を必要以上に下げすぎた点では日銀にも責任はあるが、むしろ景気対策として実施してきた財政政策の方が問題だ。民間から資金を吸い上げて、非常に経済効果の乏しいことをやっている。経済学的にマイナスのことを10年間続けた結果、金をつぎ込んでもつぎ込んでも景気が回復しないというメカニズムの中で、価格面で過当競争に入ってしまった。政治そのものである財政部門が構造的デフレを生んできたにもかかわらず、そこに何ら反省がないまま日銀だけのせいにするのはまったくバランスを欠いた見方と言わざるを得ない。
――それでは、日銀はどうするべきかと…。
大塚 賛否は別にして、方法論としてデフレ解消のために、最終的にいったん日銀がなくなってもいいくらいの大胆なマネー供給をやって、経済が平常に戻ったら、中央銀行を作り直すくらいの発想はあり得ると思う。株を買ったり、企業向け債券を買ったりする今の日銀は、以前渡辺喜美さんが提言した第二日銀構想が非現実的ではなくなってきたということを示している。日銀は長期金利上昇の心配はないと言いながらも、国債の保有残高を抑えるようなことをしている。そういう中途半端なことをするのではなく、この際自分たちのバランスシートは最後は崩壊してもいいくらいの覚悟でやるのもひとつの考えだ。 (了)
【大塚氏略歴】
昭和34年10月5日生まれ。同58年に早稲田大学政経学部卒業、日本銀行入行。政策委員会室国会渉外課調査役を最後に平成12年退行。同年に早稲田大学大学院博士課程を修了。同13年に参議院初当選し、現在党政調副会長、役員室次長、企業会計WT座長などを務める。