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From : ビル・トッテン
Subject : 資産家優遇の米の減税
Number : OW579
Date : 2003年6月20日
富裕層や大企業だけに恩恵を与える減税を行い、その一方で低所得者、失業者、零細・中小企業、一般消費者は増税し、社会保険料は値上げ、給付金は厳しい改正が行われるなど福祉の削減が進んでいる。これは日本だけで起きていることではなく、もちろんお手本がある。日本政府が常に師と仰ぐ国アメリカだ。
(ビル・トッテン)
資産家優遇の米の減税
日本では国民皆保険が整備されているがアメリカにはそれがない。クリントン大統領時代にヒラリー夫人が責任者となって医療改革を推進し、アメリカにも国民皆保険を導入しようという試みがなされたが、企業への医療保険加入の義務付けは企業からの反発を受け、また医療保険関連の料金抑制を前提とした改革は政府の過剰介入になるとして、反対多数でクリントン政権が最重要公約に掲げた医療保険制度改革は失敗に終わった。
これは自民党が推し進めている「小さな政府」と同じである。企業や富裕層にとって政府が大きくなることは許されず、政府が小さければ自分たちが勝手にルールを決めて、弱い者を徹底的に搾取することができるからだ。
5月末、アメリカ議会は総額3500億ドル(約41兆円)の減税法案を可決した。減税額はもともとブッシュ大統領が求めていた額の半分以下だが、それでも1981年のレーガン減税、2001年のブッシュ減税に次ぐ史上3番目の大型減税である。
減税の中身は時限措置も導入され、配当課税軽減のほかキャピタルゲイン税軽減、2001年ブッシュ減税の前倒し実施(所得税率引き下げ含む)などだが、大部分の国民の税引き後所得額は1%未満しか増えないのに対し、年収100万ドル以上の人は平均で税引き後4.4%も手取りが増える。
減税をすれば税収が減るため、歳出を減らさなければ借金をするしかなく、国が借金をするときの保証は何かといえば、国の収入である税金しかない。そして借金が増えれば、増税するか、または支出を大幅に減らすしかなくなる。
アメリカ政府はひどい財政難にある。クリントン政権の財政黒字を2年間で使い果たし、国債を発行して財政赤字を増やしている。テロ対策費などで2003年度の財政赤字は過去最大の3000億ドル強に達するとされるが、これもイラク攻撃以前の数字だ。
たしかに減税は適切に行えば国民の実収入を増やして消費拡大につながるかもしれないが、それも好景気の場合である。また低所得や中流階級の人々への減税なら消費拡大ののぞみもあるが、今回の減税は主に巨額の株取引を行える資産家を優遇するものだ。
税収が減れば、その分歳出を削らなければならないことは目に見えている。こんなにも簡単な結末をアメリカ政府が分からないはずがない。ということは、アメリカ政府は意図的に財政破たんをもたらす政策をとっているということだ。
では何のためかといえば、セーフティーネットとしてこれまで国民に提供してきた医療保険などの社会保障費を削減するためだ。アメリカの公的医療保険制度には、65歳以上の高齢者を対象としたメディケアと低所得者向けのメディケイドがある。そして、そのいずれにも入っていない国民が約15%もいる。減税の時限措置の終わる時に、一度下げたものを再び増税せずに支出削減を選ばない保証はない。そしてその削減対象が軍事費ではなく社会保障関係費になることもまちがいない。
結局ブッシュ政権は財政危機にあわせて、1981年にレーガン元大統領が試みたプログラムを完成させようとしているのだろう。レーガンのプログラムの柱の一つは財政支出の削減だった。レーガンは軍事費を優遇し、社会保障や雇用援助、貧困者救済のためのフードスタンプ制度補助、失業者に対する特別失業手当などを削減対象とした。2004年にブッシュ大統領が再選されれば、それはアメリカ人が自らその運命を選んだことになる。
ローマの独裁者は今から2000年も前に、最小限の食事を与えられ、最大限に娯楽に興じている国民を支配することが一番簡単だということを学んだ。またマイケル・ムーアはそれに加えて、国民を支配するには絶えず「恐怖」を植え付けることだ、と言った。
今の日本を見てもまさにその通りである。BSE、SARS、北朝鮮と、国民に恐怖を流し続ければ簡単に支配することができ、平和憲法は無視され、瞬く間に日本に有事立法が成立した。
このような状況に陥った日米の共通点は、道徳教育を受けたリーダーによって国が導かれていないということだ。アメリカは建国の父たちの教えから遠く離れ、日本も昭和20年に道徳教育を捨て去った。無知で、道徳心の足りない愚かなリーダーの近視眼的な利益追求という目的によって、日本やアメリカで長年にわたって国民に与えられていた福祉が削られ、人々から安寧な暮らしが取り去られていく。
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著作:株式会社 アシスト 代表取締役 ビル・トッテン
発行/翻訳/編集:株式会社 アシスト
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