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現地10日のNY市場の取引で金価格は急落した。
前日比9.80ドル安とイラク開戦直前の3月13日の10.6ドル安に次ぐ急落
状態となった。コメックス(商品取引所)で中心となっている取引では352.8
0ドルと5月16日以来16営業日ぶりの350ドル台での取引となった。
当欄で既に取り上げてきたように5月のドル建て金価格は、ドル安を背景に2月〜
3月の急落相場から一転して戻り相場に入り、6月に入ってもここまで高値圏を推
移してきた。
NY株式に対し金価格は逆相関性が高い(NY株式と金は逆の値動きをすることが
多い)ことは、その通りなのだが、このところの値動きはやや趣を異にしている。
早い話が両方とも堅調に推移してきたのである。そこで最近よく受ける質問は、
「株高なのにどうして金も買われているのか」というものである。実際にそれぞれ
の結果を見ると以下の様になっている。
5月1日 5月30日 騰落率 6月6日現在
NYダウ30種 8454.25 8850.26 4.7% 906
2.79
ナスダック 1472.56 1595.91 8.4% 162
7.42
S&P500種 916.30 963.59 5.2% 98
7.76
NY金 342.4 364.5 6.5% 36
4.5
ユーロ 1.119 1.1766 5.1%
(ダウ、NY金、ユーロの単位はドル、騰落率%、他はポイント)
確かに株高と金高が両立しているのがわかる。それまで売り込まれていたハイテク
の戻りが目立った結果、ナスダックの上昇率が目立つが、ドル建てで見た金のパフ
ォーマンスは、それに次ぐ結果となっている。もっとも、急落した現段階では、
「〜結果となっていた」と過去形になるが。いずれにしても、この間のユーロ高に
象徴されるドル安の結果として買われたと言えるが、もうひとつ指摘しておきたい
のが、今回もやはりファンドの動きである。
NY株式が予想以上の上昇(ラリー)を見せる中で、慎重派のファンドマネジャー
も株価が節目を突破し、テクニカル指標が好転するとともに市場センチメントにも
明るさが出るに至り、流れについていかざるを得ない状況が生まれている。
今回の株式市場のラリーは、米国の中央銀行であるFRBの金融緩和が作り出した
「金融相場」であって、今月24、25日のFOMC(連邦公開市場委員会)での
利下げを先取りしたものということだろう。NY株の上昇が、国際ポートフォリオ
のなかで欧州株や日本株の相対的シェアを低下させたため、決められた一定比率ま
でこれらの株式市場に自動的に買い注文が入った結果、世界的に同時株高現象が生
まれ、それがさらに市場センチメントの好転につながるという好循環を生み出し
た。その意味では、意味のあるNY株ラリーなのだが、センチメント主導(期待先
行)である点は否めない。金融緩和が作り出した、束の間の平穏状態かも知れぬ。
もちろん一方で「株価は本格的戻り」という分析もある。
ポイントは、この久々の流れに乗らないリスクと乗った場合のリスクのバランスで
ある。そこで株式およびその関連指数の買いと並行して(株高が続かなかった場合
の)リスクヘッジとして金買いが起きたのではないかと思われる。金利の低下傾向
は、金にとっても好材料でもあるし、デフレ阻止を旗印にこの先インフレ策(リフ
レ策)が取られる可能性も高い。したがって環境としても金は買いやすい。これが
株高、金高が並存した背景ではないかと思う。事実、この間のファンドの買い越し
枚数はウナギ上り状態で6月3日時点で重量換算にして約260トンにもなってい
た。年初来の高値を記録した2月初旬の約210トンを大きく上回る史上最高規模
のものである。
さすがに、これだけの規模のいわば「売り待ち」の取引が控えているとなると、こ
れは“自壊作用”が起きるのも止むを得ないといえる。数値が発表されたNYの先
週金曜日取引終了後の段階で、今週の調整入り(下落)の可能性は高いと思われた
のである。したがって現地10日の取引での急落は、むしろ健全性の証とも言える
のではないだろうか。
個人的にいま最も気になるのは、年初より燻(くすぶ)っていた政府系住宅公社フ
レディマック(米連邦住宅貸付公社)の問題である。
ここにきて、経営トップの解任および辞任という形で問題は急浮上した。海外メデ
ィア中心(日本での扱いは今のところなぜか少ない)に報道量も増えている。会計
上の問題点ありとは、年初から言われていたのだが、いまのところ利益を繰り延
べ、収益の安定性を強調する会計処理(「クッキージャー・アカウンティング」と
呼ばれている)を行っていたとされる。デリバティブを使ったこの処理をめぐる問
題と伝えられている。問題が指摘されている期間の監査法人があのエンロンと同
じ、(その後解散した)アーサー・アンダーセンというのも気になるところだ。早
い話が粉飾疑惑である。おまけに住宅部門というここまでの米国経済を支えてきた
屋台骨のような業界の問題だけに、その進展次第では大きな材料になる可能性を秘
めている。結果的に市場を揺るがすものではないのかも知れぬが、不気味である。
いまのところ株式市場はこの問題に目立った反応をしていないのは、状況が見えな
いためだろう。金市場も同じである。
ドル建て金価格は、50日移動平均線346ドル、そしていつもの200日移動平
均線336ドルがサポートとなっている。(6月12日記)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎
※本レポートは執筆者の個人的な見解を述べたものであり、実際の投資にあたってはお客様ご自身にてリスクをご判断ください。
http://www.sumitomo-gold.com/market/index.html