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From : ビル・トッテン
Subject : 現政策では国が壊れる
Number : OW578
Date : 2003年6月13日
私がいつも読む新聞は、日本で一番発行部数が多いという全国紙の英語版である。それは主義主張に賛同するからではなく、多くの日本人が日常的にどのような情報を得ているかを知るためであり、プロパガンダが多いと知った上で、その新聞を読んでおけば日本政府の方針も将来的な計画も想像がつくからだ。5月末、興味深い2つの記事が掲載された。
(ビル・トッテン)
現政策では国が壊れる
1つは2007年度に消税を10%に増税するというもので、小泉首相の諮問機関である政府税制調査会が6月に策定する税制改正の「中期答申」に対して発表した意見書である。社会保障制度の破たんを避けるために公的年金などの財源を消費税で賄うために、2005年度以降、消費税率を現在の5%から8%に引き上げ、2007年度までに10%にするよう求めているという。
以前も取り上げたが、今年1月には経団連が消費税の増税を提言し、その方法として2004年度から1%ずつ引き上げ、2014年度に16%とする案を出している。どのような経緯があって今回の意見書になったかは知らないが、とにかく消費税増税という選択肢だけは譲れないようである。
もう1つの記事は、金融機関の破たん処理で国民負担額が10兆円を突破という記事である。1998年度から2003年3月末までの累計で、日本政府が破たんした金融機関の処理に投入した公的資金のうち、すでに「国民負担」として確定した金額が累計で10兆4326億円に達したことが分かったという。
この2つの記事の皮肉な関連性を、読者はどのように見て取っただろうか。
消費税は基本的に消費罰税である。消費税を5%に増税した1997年から日本経済が急速に悪化してきたことからも、需要不足と供給過剰によってデフレに陥っている日本は消費税増税をすべきでないと、私は繰り返し述べてきた。しかし政府与党にはこの単純な関係が分からないらしい。
それとも関係は理解しつつも、自分たちの支持団体で資金提供者である大企業や富裕者層への減税を考えると、その結果不足する税収を補うために消費税増税が選択肢となるのだろうか。しかし与党がどんな政策をとっても、選挙でそれに反対する意思表示をしない一般国民を、彼らが冷遇し続けるのは仕方ないことかもしれない。
税引き上げの布石
大企業がメンバーを占める経団連は5月の定時総会で、企業が政治に主体的に関与すること、つまり“政治献金の必要性”を強調した。経団連の副会長らは「望ましい政策の実現に向けて献金は必要な一つの手段」「志を同じくする政治活動を支援するのは当然のこと」と述べた。
つまりこれは消費税を上げ、法人税や証券税制を見直し、グローバル化を推し進めて企業のもうけを増やし、アジアの安い労働力と競争させることによって日本人労働者の賃金を下げ、そして、自分たちが損失を出したときには、政府に肩代わりをしてもらおう、といっているのに等しい。
来年4月1日からは消費税を含めた総額表示が義務付けられる。財務省は内税化ではないと主張するが、これは消費税の負担感を希薄化させ、消費税引き上げをやりやすくするための布石以外の何物でもない。おそらく内税化になれば毎年1%ずつ増税しても消費者は気付かないだろうと経団連や政府は考えているのだろう。
結局国民が犠牲に
日本政府は国と地方の長期債務を合計約705兆円も抱えている。そしてそれを大きな理由の一つとして、一般国民への増税と福祉切り捨てを押し進めている。
その一方で、金融機関にはこの5年間に10兆円を超す援助を行った。10兆円が注入された1998年から2002年の5年間の平均預金残高は約469兆円である(日銀経済統計月報をもとに筆者が試算)。毎年2兆円ずつ注入されたとして計算すると、銀行は預金残高の0.4%に相当する額を毎年受け取ったことになる。
ではこの5年間に銀行が預金者に払った利子はどうかというと、普通預金の金利は1998年に0.1%、2002年には0.03%、定期預金は1998年が0.46%、2002年は0.061%である。銀行が公的資金として受け取った金利よりもずっと低い。すなわち預金者である国民が犠牲になったともいえる。
政府はりそなグループへの約2兆円の公的資金投入を決定した。つまり国有化にして、不良債権処理を一気にすすめようということである。これによって残りの大手行も、国有化を恐れて自己資本を引き上げるために貸しはがしを行い、ますます企業倒産が増えるだろう。
日本政府も経団連も、自分たちがとっている政策は短期的には自分たちに利益をもたらすかもしれないが、長期的には日本という国を壊すことになるということに早く気付くべきである。そして一般国民は、ここ十年以上にわたってこのような政策を推し進めてきた政治家を国民の代表として選出したのは、政治に無関心で選挙を棄権してきた自分たちであるということを知るべきである。
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著作:株式会社 アシスト 代表取締役 ビル・トッテン
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