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ＵＢＳ証券会社・経済調査部チーフエコノミストの白川浩道さん（Hiromichi Shirakawa/ Chief Economist, UBS Securities Japan Ltd.）は今週の焦点について次のようにコメント（ほぼ原文通り）する−−。
【マクロ経済データ】
＜今週の米指標、来週の追加利下げ期待固まる＞ 先週公表されたマクロ指標をみると、５月の東京地区消費者態度指数が２ヶ月連続で回復を示した。その一方で、景気ウォッチャー調査では、家計関連DIが足踏み状態にあることが示され、足元では個人消費が依然として調整局面にあることを示した。他方で、４月の機械受注統計は、市場予想比強め（前月比−1.8％）の結果となった上、通信業や情報サービス業といった国内非製造業のIT関連部門では機械発注が拡大傾向にあることを確認した。まとめれば、先週のデータは、「景気は、４−６月期、７−９月期の調整局面を経た後、10−12月期の後半から緩やかに再び上向く」という弊社の基本シナリオに沿った動きとなっている。今週の注目は、明日公表される、５月の米国CPI、鉱工業生産である。コアCPIで 前月比＋0.1％、鉱工業生産は前月比横ばいが予想される。物価が引続き落ち着いている状態で、生産回復の足取りが重いことが確認されることで、来週のFOMC （24−25日）における追加利下げ期待が固まる展開になろう。
【経済政策】
＜現在の地方税源移譲論議に欠けている「観点」＞ 先週は、財政構造改革の１つの目玉である、地方への税源移譲の議論が活発化した。あるいは、少なくとも表面的には、活発化したようにみえた。しかし、依然として迷走の域にある。加えて、地方への税源移譲については、地方への補助金を大幅に削減するとともに、国税で思い切った減税をすることに、その本質的な意義がある。現在の地方税源移譲論議はそうした前向きな観点をそもそも欠いており、その意味で注目するレベルにはない。今週は、明日、政府税調の中期答申が出てくるが、年金への課税や消費税増税など、結論は簡単に出ないものが中心であり、市場としてすぐに反応するようなものにはならない。
＜米追加利下げ受け、日銀、7-8月に当座預金30−35兆円へ＞ 今週についても、消去法的に、金融政策への関心を維持せざるを得ない状況が続く。資産担保証券の買い取りスキームを公表した日銀は、買い取るABSの最低必要格付けをBBまで落とすことで、信用リスク・テークにかなり思い切って踏み込む意思を示した。弊社の特別レポート（12日に公表）で指摘したが、日銀の購入資産分散に向けた動きは、今後一層本格化することが予想される。なお、短期的には、日銀は、FOMCでの追加利下げを受けて、７−８月に、量的緩和の追加（当 座預金ターゲットを30−35兆円へ）を決定するとみている。
＜国債市場への過度な介入、市場安定化の大いなる「代償」＞ こうした中で、日銀が、最近、警戒感を強めているのが、国債相場反転のリスクである。国債管理政策などという仰々しい言葉が使われているが、要するに、長期金利が反転上昇した場合、金融システムへの影響も含め、今から対応策を決めておこうということである。何のことはない。これは、政府と日銀が国債相場維持を狙うということである。あるいは、国債PKO（日銀を含めた公的当局による 国債購入の拡大）へのコミットメントを示すことで、国債市場の期待を安定化しようということである（日銀は、10月までに輪番オペの増額を決定しよう）。しかし、こうした国債市場への過度な介入は、市場安定化と引き換えに、国債市場のダイナミズムを殺しかねず、十分な検討が必要である。
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