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調査部長 高橋進 の主張
2003年6月8日
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(本原稿は、読売新聞「エコノeye」に掲載されたものです)
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アメリカ経済に対する見方が大きく変化している。イラク戦争終結とともに消費者心理は若干持ち直したものの、企業活動には依然、活発化の兆しが伺えず、景気の回復が思わしくない。
今後を展望しても、a.財政赤字の大幅悪化によって長期金利の低下が期待できない、b.長期金利が下げ止まれば、これまで家計消費を下支えしてきた住宅市況もピークアウトし、消費が鈍化してしまう、c.そもそもITバブル崩壊後の企業部門の回復が遅れており、設備投資や雇用拡大があまり期待できない、といった懸念材料がある。
したがって、アメリカ経済は戦争終結で一時的に持ち直しても、そのまま順調な回復軌道に乗るのは難しいとみられる。
景気の先行き以上に心配なのが、デフレ懸念の台頭である。今年に入ってアメリカの物価上昇率の鈍化傾向が明確化している。Fedの五月の会合では、「望ましくないインフレの大幅な低下の可能性が、インフレが加速する危険性を超えている」という声明が出された。注目すべきはFedが短期的な景気の下振れよりも物価の下振れを懸念し始めた点である。Fedはアメリカがすでにデフレに陥ったといっているわけではない。しかし、デフレ心理が広まることで実体経済に悪影響が及び、デフレの罠にはまってしまうこと、つまり日本の二の舞になることを警戒しているのである。
アメリカにとってデフレ回避の処方箋は、積極財政の継続、金融緩和の強化とドル安である。自国通貨安によってデフレを輸出してしまうことができる。ドルは実効相場ベースでは年初来すでに10%低下した。サミットではブッシュ大統領が「強いドル政策」を表明したものの、これは、双子の赤字拡大下で、ドル急落を回避するための方便である。世界経済の牽引役であるアメリカがデフレに陥ることは何としても避けなければならないが、アメリカの通貨戦略の転換は、日本にとっては円安を通じたデフレ脱却の道が塞がれていることを意味している。
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