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[年金改革]「将来像の設計に不可欠な消費税」
全体像をきちんと示さないまま議論をしても意味はない。
来年に予定されている年金制度改革で何より大事なことは、若い世代を中心に広がる年金不信を払拭(ふっしょく)し、国民が安心できる制度に再構築することである。
そのためには、年金だけでなく、医療や介護も含めた社会保障の将来像を明確な形で提示する必要がある。
だが、政府内で高まる議論は、相変わらず今の財政状況の枠内にとどまったままだ。高齢化に伴って膨れ上がる社会保障費の財源をいかに確保するかという、肝心の問題は棚上げにされている。
財源としては、全世代が広く薄く負担する消費税の引き上げしかない。
経済情勢が厳しい中で、政府の最優先課題がデフレ克服にあることは言うまでもない。消費税の引き上げ時期も、景気がある程度回復してからになるのは当然だろう。
とはいえ、いずれ引き上げは避けられない。小泉首相は在任中の引き上げを否定しているにしても、議論の道筋さえつけようとしないのは無責任に過ぎる。
財源確保の問題を避けたまま、財政の枠の中だけで、「給付減」「負担増」の議論を繰り返しても展望は開けない。
財政制度等審議会が提出した来年度予算編成に関する建議は、年金給付額の大幅カットなどを求めたものの、肝心の国庫負担の引き上げは先送りしている。
塩川財務相自身も「現在の財政状況では難しい」と見送りを示唆した上で、年金給付額の三割削減を提言している。
国庫負担については、二〇〇四年までの間に安定財源を確保し、現在の三分の一から二分の一に引き上げることが、法律の付則で定められている。
国庫負担が増えることで保険料の上昇も抑えられ、年金財政も安定する。制度の維持には欠かせない措置だ。
しかし、前提となる財源確保を怠ったままでは、政府が約束していた、来年からの基礎年金の国庫負担引き上げも先送りされる恐れが強くなる。
確かに厳しい財政難である。若い世代の負担増を考えれば、年金カットも検討課題となるだろう。とはいえ、全体像を抜きにして、“局部的”な議論だけ進めても仕方ない。
年金は老後の暮らしを支える“安心ネット”の中核だ。一人暮らしや夫婦二人だけの高齢世帯が増える中で、年金の役割はますます重くなっている。その一方で、医療や介護の負担は増えている。
財源確保に向けて議論を深めていくのが政治の責任である。このままでは、国民の将来不安は増すばかりだ。
(2003/6/11/22:21 読売新聞 無断転載禁止)