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計３兆円「全損」懸念消えず 政府「りそな」へ資金投入決定
政府は十日、「りそなグループ」に一兆九千六百億円の公的資金を投入することを正式に決めた。「債務超過に陥っ
ていた」という疑いや金融庁による会計監査への介入疑惑がくすぶるなか、何としても公的資金注入に突き進もうとす
る政府。だが、公的資金は本当に有効に使われるのか。公的資金の「全額損失」という最悪の事態の恐れはないのか。
事実上の国有化による「りそな再建策」の行方を検証した。（経済部・池尾伸一）
●査定もせず
この日夜、都内で記者会見した川田憲治社長は「二兆円の重みを真しに受け止め、不退転の決意で改革を行いたい」
と決意表明した。しかし、今回の公的資金投入決定の経緯には竹中平蔵金融・経財相の足元からも批判の声が消えてい
ない。
「資産査定もしないまま二兆円も投入するなんて、とんでもない話だ」−。先月末の金融庁の「自己資本比率規制に
関する作業部会」では、メンバーの金融専門家から疑問の声が噴出。翌週の「金融問題タスクフォース」でも「二兆円
がムダになるのでは」との声がうずまいた。
りそなに関しては、新日本監査法人と共同監査していた朝日監査法人が「債務超過」と認定していたことが判明。実
際には「破たんしていた」との疑念が消えていない。
債務超過の銀行について預金保険法は、一時国有化した旧長銀（現・新生銀行）のように政府が全株式を強制取得、
株式を「紙くず」にして株主に責任をとらせ、最終的には健全銀行に売却する処理を義務づけている。
今回も無理に生かすより破たん処理、解体し、他の金融機関に売却すべきだという意見も多く、大村敬一早大教授は
「そのほうが公的資金投入額も安くつく」と話す。
それだけに、竹中金融相の公的資金投入への固執は「政治への配慮」抜きには説明できない。破たん処理すれば、他
の大手銀行の株式も暴落する可能性があり、経済政策が弱点となっている小泉政権の「命取り」になりかねないため
だ。
一方、金融庁も経営が悪化していた関西の地銀をりそなに“押しつけた”もたれ合いの過去があり、りそなが破たん
すれば、金融庁は過去の経緯も含めて責任を問われるのは必至。「生かしたままでの公的資金注入」は竹中金融相、金
融庁官僚にとって、どうしても譲れない一線だったのだ。
●「新モデル」
なりふり構わない公的資金投入で「りそな」は本当に再建できるのか。
立て直しは会長に就任するＪＲ東日本出身の細谷英二氏や六人の社外取締役など外部出身者が主導する。金融当局幹
部ららは「細谷氏は日産自動車のカルロス・ゴーン氏のように新しいビジネスモデルを」と期待感を表明する。
政府にとってのベストシナリオは再建の成功で株価が上昇。公的資金の見返りに取得した株式を市場で売却、資金を
回収することだ。
しかし、日産と決定的に違うのはゴーン氏が責任も権限も一手に引き受け、自由に改革策を描けたのに対し、「りそ
な」の場合は大株主の政府があれこれ介入する懸念があることだ。
ゴーン氏は内外の批判を浴びながらも「収益回復」を最優先に、下請け部品メーカーの選別や工場の閉鎖など痛みを
強いる大胆な改革を断行した。だが、りそなの場合、不採算融資からの撤退を断行しようとした途端、地域の企業、経
済への影響を心配する政府や与党から「ストップ」がかかるおそれがある。
実際、りそなの地盤、大阪府の太田房江知事は先月末、金融相を訪問して「中小企業への融資の維持・拡大」を直訴
した。りそなが採算の取れない企業に従来通りの融資を繰り返せば再建は遠のくばかりか、最終的な「破たん」も免れ
ない。
今回が三回目となる投入で、りそなへの公的資金は合計三兆六百八十億円。過去二回の計一兆一千億円は株価の下落
ですでに六千二百億円の含み損を出している。「公的資金の全額損失」という最悪の事態を回避し、りそなは日産のよ
うに再生できるか。カギを握る「新たなビジネスモデル」はまだ「全く白紙」（りそなの新社外取締役の一人）のまま
だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030611/mng_____kakushin000.shtml
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。