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【ロンドン＝飯塚恵子、黒井崇雄】欧州単一通貨ユーロの英国への導入問題について、ブラウン英財務相は９日、現時点で参加に踏み切る経済的条件は満たされていないとの演説を英議会下院で行い、導入の前提となる国民投票の先送りを表明した。
欧州との連携強化を基本政策に掲げるブレア英首相は、「欧州戦略」の練り直しを迫られることになった。
「英国の政策金利はユーロ圏を１・７５％上回るなど、経済状況に格差がある」
ブラウン財務相は演説で、英国のユーロ参加が時期尚早であると判断するに至った理由を、詳細な経済分析を使いながら３０分以上にわたって説明した。
英国経済は現在、２００３年の経済成長率見通しが２％超と、先進国の中では数少ない「勝ち組」だ。これに対し、ユーロ圏は１％程度の成長しか見込めておらず、経済格差は歴然となっている。また、欧州中央銀行（ＥＣＢ）が９日から利下げを実施したため、ユーロ圏の金利は英国の半分近くにまで低下しており、現状のまま英国がユーロを導入すれば、バブル発生は避けられないというのが大方の経済評論家の見解だ。
しかし、ユーロ問題は、ブレア首相にとっては単なる経済問題ではない。１９９７年の就任以来、「最大の政治決断を要する内政・外交課題」（英ＢＢＣ放送）だ。
９７年の与党・労働党の選挙公約は「欧州への新たな始まり」だった。首相は先月３０日、ワルシャワで行った「欧州演説」で、「英国外交は、約５０年間も冒してきた『欧州から距離を置く』誤りから脱却しなければならない」と強い決意を示したばかりだ。
首相が「欧州全体のリーダーへの野心を懐に持つ」（英野党幹部）との指摘も絶えない。首相の理想は、９日をユーロ参加の前提となる国民投票実施の意思表明をすることだった。
９日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、「英国内の親欧州派や欧州の各政府は、英国がまたお決まりの踏ん切りの悪さを見せたと受け止めるだろう。首相の約束はやはり現実ではなく、ただの夢だとの証明だ」と指摘し、事態はブレア首相の政治家としての信頼性にかかわる失点だと指弾した。
一方、先月末の世論調査では、「もしあす国民投票があれば、ユーロ参加に反対する」と答えた人が６２％に上るなど、国民のユーロへの懐疑心は最近強まっている。財務相は９日、「（来年春の）予算評価の際に条件が合えば、国民投票を行うかどうか再び判断する可能性もある」と言及し、首相が強く求めていた「第２のチャンス」はかろうじて担保された。
だが、参加の是非を問う国民投票に残された時間は少ない。２００５年にも行われる可能性のある総選挙を任期一杯の翌年に先送りしてでも、「国民投票を今任期中に行う」（首相周辺）ために、新たな駆け引きが始まることになる。
(2003/6/10/01:19 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030609it18.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。