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2003年6月5日 17:00
フィッチ・レーティングス−東京/香港/ロンドン−2003年6月5日:
国際的格付会社のフィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」)は本日、日本の生保による予定利率引き下げを債務不履行とする見解を発表した。利率引き下げは契約の不履行を意味するものであり、フィッチでは、かかる状況が生じた場合、保険会社財務格付を直ちに「D」領域
(「DDD」、「DD」、「D」)に引き下げることとする。
1990年代半ば以前に販売された生命保険契約の多くは、現時点における実際の運用利回りを大幅に上回る予定利率を付している。大手生保が保有する個人保険契約の平均予定利率は3%から4%であるのに対し、実際の運用利回りは平均して1%以下の水準にとどまる。こうした逆ざやは、大手生保の死差益および費差益の約20%から50%を吸収する規模に達している。内部留保の積み上げを阻む逆ざやからの圧力と多額に上る保有株関連損失とが相俟って、ソルベンシー(保険金支払余力)の低下を業界全体にもたらしている。
金融庁では、多くの生保が苦渋する逆ざや負担の軽減を図るため、保険業法改正案の国会承認を経て、政令で定める下限水準(3%を想定)までの予定利率引き下げを容認する方針を示している。引き下げに際しては大多数の保険契約者による同意が必要とされる。しかし、仮にすべての契約者によって自発的な合意が形成されたとしても、それは引き下げを拒否すれば当該生保の破綻時においてより大きな損失を被る事態が生じることを危惧したうえでの合意である。したがって、引き下げが全契約者の承認を経て決定された場合であっても、フィッチはこれを債務不履行とみなすこととする。
予定利率の引き下げは、中期的観点からすれば当該生保の内部留保の改善につながる。しかし、引き下げがソルベンシーに直ちに及ぼす影響は限定的である一方、当該生保が保険契約者の信頼喪失を余儀なくされる点を考慮した場合、かかる措置が合併または他社による救済を前提に実施されるものでない限り、当該生保が最終的にメリットを享受することは考えにくい。
近年破綻した大手生保についてみると、3%を大きく下回る水準への予定利率の引き下げのみならず、責任準備金の10%削減といったケースも少なくない。また、現在新規契約が保障する予定利率は1%から2%の水準にとどまるうえ、加入時の年齢が上がっていることに伴って保険料も増大するため、既存の契約を解約して新たに他社の保険を購入することは得策ではないだろう。
したがって、たとえば3%といった水準までの予定利率引き下げは、信用格付の観点からすれば明らかに契約の不履行であり、デフォルトを意味するものである反面、多くの保険契約者にとっては結果的に「最悪よりはましな」シナリオであると思われる。もっとも、これは当該生保が今後破綻しないことを前提とするものではある。
生保の予定利率引き下げに関する詳細については弊社レポート『日本の生命保険会社:予定利率の引き下げ』を参照されたい。なお、同レポートは弊社ウェブ上、www.fitchratings.co.jpにて閲覧が可能である(英語版『Japanese Life Insurance: Guaranteed Yield Cuts』は
www.fitchratings.comに掲載)。
(注記)本文は英文『FITCH: JAPANESE LIFE POLICY YIELD CUTS WOULD BE DEFAULT』を元に作成したものです。
http://www.fitchratings.co.jp/contents/Press_Insurance/36_044.shtml