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2003年6月2日 月曜日
●プリンスの条件は能力ではなく、忠誠心
【ヴェルナー】 総裁の選び方はどう考えてもおかしい。若いうちに、たとえぼ三二-三三歳で六五歳から七〇歳の時期の総裁を決めるのは、どう考えても能力主義ではない。同期や同世代の人たちに「おれが総裁だから、君たちはどんなにがんばっても総裁にたれない」という逆インセンティブを与えてしまう。こんなやり方は、どう考えてもやはりおかしい。
【石井】 若いころからプリソスを決めるのは、日本の将軍の選び方と同じだ。
【ヴェルナー】 そう。それは貴族杜会にも当てはまる。早い時期に後継者を選ぶことにはちゃんとした合理的な理由がある。後継者選びの条件として、能力よりも重視しなければならないことがある。それは忠誠心だ。忠誠心は早く選ほないと植えつけることができない。つまり、現在のブリソスは自分に対して忠誠心のある人を次のプリソスに指名したい。なぜなら、プリソスは長期的に影響力を保ちたいから、白分の意見や政策を支持する人を跡継ぎにしないと困る。政策を変えずに、ずっと現在の政策を続けてくれれぼ、影響力を高めることができる。
これは昔の王様・将軍、独裁者の後継者選びと同じやり方だ。白分たちの王朝体制を長く続げるとい視点で後継者を選んでいる。そうすると、望ましい人物像は自分の考え方や政策を守ってくれる人だ。合理的なやり方だが、能力主義の選び方でない。能力主義なら、いうまでもなく一番能力のある人、知識があつて積極的に仕事ができる人、実績がある人選ぶ。ただし、能力はあつても政策や考え方が同じになるとはかぎらない。たとえ考え方が異なっても、一番いい人を選ぶのが能力主義のメリツトだ。民主主義の場合、後継者選びは能力主義に基づいて行わなければならない。そうしなけれぼ、民主主義ではなくて貴族主義、王朝体制になってしまう。
日銀の後継者選びはまさに王朝体制そのものだ。円の支配者が、プリソスたちが次のブリソスを早く選んで「あなたは三〇年後に総裁になる、私のおかげで」と告げる。そうすると、次のプリンスに指名された人は、そこまで支持してくれるのだから「先輩のいうとおりにがんばります」と感謝する。それで、歴代のプリソスたる先輩の考え方、政策を支持するようになる。戦後の日銀の金融政策が一貫しているのは、プリンスの条件が忠誠心だったからだ。早め早めに次のプリソスを選ぶことで、二〇年、三〇年といった長期計画をつくって導入、実施できる。
【石井】 まったく同感だ。日銀の総裁というのはまさに王様、将軍だ。将軍の跡継ぎを選ぶようなやり方で、日銀の総裁をずっと選んできたことは間違いない。日銀のブリソスはある時期がきたら先輩のプリンスたちからお墨付きをもらう。お墨付きというのは、将来総裁になれますよという証明書みたいなもので、そのお墨付きを出した時点で、たとえていえば総裁のやり方という巻物、本当の秘密も全部書いてある巻物が手渡される。この巻物を渡すということが、あなたを王様にするということになる。ヴェルナーさんのいうとおり、巻物、免許皆伝は早い時期に渡す。この巻物を持っていない人には、本当の金融政策はわからない。実は、前総裁の速水さんはこの巻物を持っていなかった。(P24−P27)
●速水おろし、速水いじめのすさまじさ
【石井】 実は、大変はずかしい話だが、それまで総裁の途中交代がなかったので、日銀はその時この総裁の任期がいつまでなのかわからなかった。速水さん本人もわからなかったし、周囲の人問もわからなかった。本人は三年程度か、あるいは松下さんの残りの任期、すなわち松下さんの任期は九九年一二月までだったので、それまでのショートリリーフかなといった感じだった。しかし、そのうちに速水さんは「いやいや私はね」と総裁の座に居座ってしまって、五年の任期いっぱい総裁をやってしまった。
【ヴェルナー】 すごくおもしろいことだ。速水さんは本当に短期問だけの総裁になる計画だった。つまり、福井さんが予期せぬ事態に遭遇して辞めて、松下さんの残りの期問が九九年一二月までだったので、三重野・福井の計画では速水さんの任期はそこまでだった。速水さんは当時、日銀を去ってから一〇年以上もたっていたので、日銀とは関係のない人にみえたが、三重野さんと速水さんは日銀の同期でしかも三重野さんのほうが立場が格段に上だったので、三重野さんが速水さんに「君ちょっと総裁になりなさい」と頼んで、速水総裁が実現した。
【石井】 おそらく三重野さんはその時速水さんの任期は九九年一二月までと考えていたはずだ。それで世の中が変わったら、福井さんを早く総裁にしようと。
【ヴェルナー】 それが計画だっただろうが、しかし速水さんには忠誠心がない。速水さんはプリソスとは全然違う。若いうちから選ばれていない。逆に、「あなたが総裁になるのはだめだ」とはっきりといわれた。そんな速水さんには、福井さんのことを忠実に守るインセソティブはやはり少ない。三重野さんと福井さんがショ-トリリーフ役に速水さん選んだのは、速水さんは三重野さんと同年齢で、従来の日銀総裁よりも年輩だったので、短期問の総裁には適任者だった。
そこで、日銀の歴史は長いから、総裁の任期は本来五年だが、この総裁の任期は九九年一二月までだということを理解してもらったうえで、速水さんに頼むという話し合いがあったと思う。しかし、速水さんには忠誠心がなかった。法律をみて、総裁の任期は五年と書いてあるのに、なぜ辞めなけれぱたらないのかと開き直って、辞めなかった。それで、福井さんは相当怒ったみたいだ。
【石井】 予定が狂ったから。三重野さんも頼んだ以上、速水さんに直接辞めろとはいえなかったのだろう。
【ヴェルナー】 速水さんが三重野さんたちが計画した任期の九九年一二月で辞めなかったからなのだろうか、二〇〇〇年には速水さんの評判が悪くなるようなことが起こった。理由は不透明なのだが、突然速水さんがゼロ金利政策を解除して金利を引き上げた。おそらく、速水さんは三重野さん、福井さんといろいろ相談して、金利を引き上げたと思うが、その結果速水さんの評判が悪くなってしまった。
金利を引き上げたから景気が悪化し、デフレスパイラルに陥ってしまったとマスコミや各方面から速水総裁は批判された。景気が悪化したのは速水さんの金利政策のせいだとみな思った。しかし、景気が悪化したのは金利を引き上げたからではない。日銀が信用創造の量、すなわち経済に入れるお金の量を九九年中、大幅に縮小させたからだ。当時、銀行は貸し出しの回収に力を入れ経済からお金を吸い上げていたが、日銀も経済からお金を吸い上げていた。経済全体に流通するお金の量を縮小させた。その縮小幅は戦後最大だった。しかし、速水さんは信用創造の量が縮小していることを、日銀が信用創造量を大幅に縮小させていることを知らなかった。
速水さんは金利を引き上げたが、大蔵省・財務省出身の総裁と同じように、本当の金融政策の意思決定にはかかわっていなかった。速水さんは信用創造のことはわからないようだ。営業局も経験していないし、信用創造の量、中央銀行の取引の量だってわからない。速水さんはただ総裁の地位にいただけで、本当の総裁は信用創造の量を決めるブリンスだった。速水さんはプリンスではないので政策決定の権限がなく、信用創造の量を決めるこ とができなかった。実際には、副総裁の山口さんが福井さんの命令によって信用創造の量を決めていた。だから、速水総裁の時にも、本当の総裁は福井さんだった。(P32-P36)
◆著者紹介 (「BOOK」著者紹介情報より)
石井正幸(イシイマサユキ)
1948年生まれ、広島県福山市出身。京都大学法学部卒業。1972年、日本銀行入行。営業局にて窓口指導等、金融政策遂行。外国局にて、国際金融・通貨政策に関与。静岡支店、松山支店にて地方金融機関の指導業務に関与。金融研究所にて米国金融革命、銀行持株会社、中国経済開放型金融制度創設計画研究。この間、日本輸出入銀行出向(2年)外務省中近東アフリカ局(経団連アフリカ協会)出向(1年)。現在、P・J・S・P‐石井プランニング代表取締役社長として金融コンサルティング業務を推進中
「福井日銀・危険な素顔」という著書は6月の12日に発売されます。たまたま書店で見かけたので、面白そうだったので購入しました。センセーションを巻き起こした「円の支配者」のリチャード・ヴェルナー氏と、日銀で営業局を勤めた石井正幸氏の対談を本にまとめたものだ。
日銀と言う王朝は外部からの勢力の侵入を防ぐために、早くから後継者を指名する。後継者は日銀の秘伝が書かれた巻物の授受が行われる。日銀の後継者の条件は本人の能力より忠誠心が求められる。現代のサラリーマン社会も能力よりも忠誠心が高いサラリーマンの方が出世する。
能力は高いが、独立心の強い人物は組織では警戒され、潰されてゆく。日本社会全体がそのような傾向がある。政治家も官僚も企業経営者たちも、世襲化されてゆくか、エリート階級が出来て固定化されてゆく。実はアメリカ大統領も早くからプリンスが指名され、ブッシュ大統領も早くから決められていたようだ。
日本を支配しているのは小泉首相ではなく、福井日銀総裁である。それは小泉内閣を生んだのは日本の長期不況であり、その長期不況にさせているのは日銀だからだ。日銀はアメリカ権力中枢の指令にもとづいて動く。日本の総理大臣の指示には従わなくても良い。
リチャード・ヴェルナー氏と石井正幸氏の対談の内容はかなり過激なものであり、紹介した内容は出だしに過ぎない。例によって日本のエコノミストからは「とんでも本」「インチキ暴露本」とレッテルを貼ることだろう。しかしこのエコノミスト達は日銀のプリンスに顎でこき使われた存在でしかない。
出来ることなら「株式日記」で全てばらしたいところですが、著作権の都合でさわりだけしか紹介できません。私もまだ読みかけですが、日銀を構造改革しないと日本の経済はアメリカに確実に売り渡される。小泉首相がいくら「政府・日銀が一体となってデフレと戦う」といったところで、福井日銀総裁は就任してから、「通貨の信認を守る」と称して円高政策を始めている。
日銀によるドル買い介入は史上空前の規模で行われている。日本がドルを買い支えていなければドルは大暴落していたところだ。日銀は日本の中央銀行であるにもかかわらず、アメリカのために全力でドルを買っている。しかしそのドルは紙切れでしかない。日本の国益からすればドルからユーロへシフトさせてゆかなければ、巨額の為替差損を生み出すだろう。
リチャード・ヴェルナー石井正幸著「福井日銀・危険な素顔」:http://bookweb.kinokuniya.co.jp/pocketpc/wsea.cgi?W-NIPS=9976962789&HITCNT=10&RCODE=C07&W-NDC=338&ISN=80793&STRCT=11