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ESRI Discussion Paper Series No.37
1990年代の金融政策の効果
マクロ計量モデルによる歴史的シミュレーション
2003年5月
川崎 研一(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)
青木 大樹(内閣府経済社会総合研究所研究官)
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( 全文の構成 )
( 要旨 )
1.趣旨及び目的
1990年代、我が国の経済は、ときおり回復の兆しをみせながらも、総じて長期間に渡って低迷した。その要因として、金融政策の対応が遅れたことが指摘されている。本稿の目的は、1990年代における金融政策の対応の遅れが我が国経済にどの程度影響を及ぼしたのか、定量的に明らかにすることである。このことは、歴史上のある時点で、実際とは異なる金融政策を取っていたとすれば、我が国経済がどのような異なる経路を歩んだ可能性があったのか、振り返ってみることである。
2.シミュレーション手法
定量的な試算に当たっては、内閣府経済社会総合研究所が維持・改良している「日本経済短期マクロ計量モデル」を用いる。その際、理論的に指摘されているいくつかの可能性について、そういった論点以外の部分については共通の枠組を維持した構造モデルによるシミュレーションを行うことにより、その何れの要因が数量的にみた場合により重要なのか比較検討する。
3.分析結果の主要なポイント
(1) テーラー・ルール型の政策反応関数によれば、1992年度以降の金利引下げの遅れが指摘されている。コール・レートが、1992年度から1993年度にかけて3−4%程度引き下げられ、より早くゼロ金利が実現していたとすると、長期金利は1%程度低下する。金利の低下により、資本の借入コストが低下し、為替レートが減価する効果により、実質GDPは、1992年度には0.4%程度、1993年度には0.6%程度押し上げられる結果となっている。
(2) 1990年代後半において、マネーサプライの増加率が毎年1%ずつ高かった場合、伝統的なマクロ計量モデルのシミュレーションでは、実質GDPは0.1-0.2%程度しか増加しない。しかしながら、合理的な期待形成を導入すれば、実質GDPは1998年度から1999年度にかけて、1%程度拡大する結果となり、伝統的なモデルによる試算結果と比べると、格段に大きなものとなる。
このことは、マネーサプライが拡大することにより、1)インフレ期待によって名目金利以上にインフレ率が加速することにより、実質金利の下落幅が大きくなり、民間企業設備、住宅投資がより大きく刺激される、2)為替相場が、最終的なマネーサプライの増加率を上回って下落し、このため、輸出の増加が大きくなり、実質GDPを押し上げる、といった主に2つの経路を通じる経済効果が生じることによる。
4.結び
本稿におけるシミュレーション分析結果からは、1990年代初期、金融政策がより早くより大きく対応して緩和していれば、一定程度、我が国経済の落ち込みを下支えしていた可能性を見出せる。
一方、1990年代後半の超低金利時代については、名目金利の引下げに限界があっても、マネーサプライの増加による金融緩和政策が有効で有り得る可能性が示されている。特に、為替相場の下落を通じて、相対的に大きな経済効果を有することが期待される。
ただし、これらの経済効果は、人々の期待形成の在り方に大きく依存していることに留意する必要がある。
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全文の構成(PDF-Format 全1file)
全文 (79KB)
はじめに---------------------------------------------------- 1
1.1990年代の金融動向--------------------------------------- 1
2.金融緩和の経済効果--------------------------------------- 3
3.ゼロ金利下での金融政策の可能性--------------------------- 6
おわりに---------------------------------------------------- 9
参考文献--------------------------------------------------- 11
図表------------------------------------------------------- 12
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