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From : ビル・トッテン
Subject : ドルの一極体制は終焉
Number : OW576
Date : 2003年5月30日
今月半ば、115円10銭まで進んだ円高に対して財務省・日銀が今年最大規模の円売り・ドル買い介入を行い、円は一時117円台までもどした。(29日には米金融当局がドル安を肯定しているとの見方からドル売り・ユーロ買いが優勢になり、円も対ドルで反発し118円になっている)日本政府は世界最大の債務国家アメリカのドルを必死に支えている。しかしこれは日本政府の財政をさらに悪化させることとなる。なぜならいずれドルの一極体制は終焉を迎えるからだ。
(ビル・トッテン)
ドルの一極体制は終焉
ドルの崩壊でその価値は円に対して下落する。今年中に1ドルが100円を切るかもしれないし、来年か再来年に50円以下になっても私は驚かない。これは何を意味するかというと、日本政府がその大部分をドルで保有する外貨準備高で購入した米国財務省証券(米国債)の償還時に、その価値が激減するということである。
つまり、1ドル240円で購入した米国債は今日その価値は半分になり、アメリカ政府は半額を償還すればよい。価値が減った分は日本政府の債務となり、納税者が負担することになる。
また米国の株やドルで資産を保有する個人や企業の資産価値も同様に減少する。たとえ本業が健全でも、時価会計によってドルで保有する金融資産が劇的に価値が減少して、多くの日本企業の財政状態は急激に悪化し、企業倒産かまたは破たんを宣告されることになるだろう。
日本政府は輸出企業のために円安誘導にむけて必死にドル買い介入を行っている。日本企業は生産した自動車や工作機械その他をアメリカに輸出してドルを受け取り、それを円に換える。日本政府はそのドルで米国債を購入して再びアメリカにドルを戻しているのだ。
貯蓄率が低いうえに3千億ドルを上回る財政赤字を抱えるアメリカでは、不足分は海外から集めるしかない。アメリカへの資金流入が滞れば、財政赤字を維持することはできなくなる。アメリカにとって、この「米国債本位制」はなくてはならないものなのである。
日本にとっては、いくら米国債を買い足してもドル安になれば大半が相殺される。かといってアメリカにドルを還流しなければドルがさらに下落するというジレンマにある。
しかしこの還流システムが永久に機能し続けることはない。市場は全能ではないが、無力でもない。ドルは必ず崩壊し、その影響はアルカイダのテロより大きく及ぶかもしれない。アメリカはもはや自分の資産以上に世界を犠牲にして消費を続けることはできず、生活水準は大幅に下がるだろう。
アメリカの繁栄を支えているのはドルの一極体制、つまり世界の基軸通貨として貿易取引がドル建て決済で行われていることである。1971年、ニクソン大統領が金交換の一時的停止を発表してドルが金と交換できる兌換(だかん)紙幣から、ただの紙幣になった。つまりこの時、米ドルは、金という固定した基準価値の裏書きがなくなり、金の保有量に関係なくアメリカ政府がいくらでも刷れるようになったのだ。
本来ならこれでドルの信頼性が失われ基準通貨としての資格を失い、ドルの価値の大暴落が起きるはずだった。事実、ドルは金に対して暴落した。しかし各国も米国に追順して金本位制を廃止し、ドルにリンクした為替の変動相場制に移行したのである。
特に世界の石油代金の決済がドル建てで行われるため、日本をはじめ各国の中央銀行はドルを所有しなければならなかった。またOPEC諸国も、石油を売って得たドルをアメリカの国債や不動産に投資した。
しかし世界経済のほころびはもはや修復できないほど大きくなっている。裏付けのないドルではなく、真に世界の貿易における比較的な優位性や、世界の雇用や環境基準を考慮して再構築される時がきている。これはそれほど難しいことではない。
まず輸出国家が互いの輸出品をドルではなくその国の貨幣でのみ支払い可能にすればよい。これによって世界金融は一夜にして多通貨取引になり、準備金も不要になる。通貨為替は世界貿易の市場のファンダメンタルズを反映したものとなるだろう。
2000年11月、サダム・フセイン政権は原油取引をドル建てからユーロ建てに切り替えることを要求し、国連はこれを受け入れた。ヨルダンとリビアもこれに倣ってユーロ建てにした。原油がユーロ建てになれば原油輸入国のドル離れも進むことになる。
米国がドル以外の基軸通貨の出現を望まないのは、数年前に「アジア通貨基金構想」に反対したことからも明白である。このサダム・フセインのユーロ決済がアメリカのイラク攻撃の一つの理由だったことも考えられる。なぜならドルが基軸通貨から転落してアメリカに還流されなくなれば、世界最大の債務国家の膨大な債務が顕在化して残るだけだからである。
しかし裏付けのない経済が現在の軍事力を維持し続けることは不可能である。ドルは遅かれ早かれ暴落する。そしてそれは多くのドル資産を保有する日本経済の破たんをも意味するのである。
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著作:株式会社 アシスト 代表取締役 ビル・トッテン
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