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(回答先: マクロ政策で日本は救えない 投稿者 転載 日時 2003 年 5 月 30 日 23:06:28)
「マクロ政策で日本は救えない」ということを一見もっともらしく説明しているフェルドマン氏だが、彼の持論(企業のコスト削減や資産流動化の努力)を正当化するために数字遊びをしているだけである。
持論の正当性を強調するためには、リフレというマクロ政策の無効性や非合理性を示すのが手っ取り早いと考えたのだろう。
経済や経営に造詣が深く、財務省の法人企業統計を丹念に調べるくらいの人なら、指摘するような前提を設定しないだろう。
指摘1:L/OCF(総負債の対営業キャッシュフロー比率で、営業利益+減価償却費に対する総負債の比率)
倍数の妥当性はともかく、キャッシュフロー比率を債務の返済能力として考えるときには、総負債ではなく総借り入れ(社債を含む)ベースで算定すべきである。
買掛金や支払い手形などは、製造原価や販売管理費を構成している費目に対応するものであり、「営業利益」はそれらを差し引いて算出されるものである。
買掛金などはフローであり、売上を生み出すために購入した“資源”に対する支払いの先延ばしである。
そして、借り入れとは違って返済するものではなく、経費として売上から差し引かれるものである。「営業利益」は、買掛金など支払うべき経費が既に差し引かれたものである。
借り入れ金よりも買掛金と支払手形を合わせたほうが大きい企業は数多くあるから、フェルドマン氏の前提だと過大な負債を計上することになる。
倍数は、財務省の法人企業統計(76年から90年)の平均値を基準にするのではなく、現存する借り入れ残高の期間・利率・目的によって算定されなければならない。
過去の統計で、L/OCFが10倍を超える産業は10倍に、10倍未満の産業は実数の平均値という設定も意図的である。
(生産設備の増設のために償却期間と同じ期間で借り入れをしたのであれば、元本−残存価額は、減価償却費として経費計上され営業利益の減少に加味されている。残存価額+利息を営業利益で稼ぎ出さなければならないだけであり、利払いを含む経常利益が黒字であれば、順調に債務が履行できていることを示す。投機目的での借り入れとは性格が異なる)
指摘2:必要な売上げ増加率
目標のL/OCFを達成するために、どれくらいのインフレ率が必要なのかを考察している。
「売上高所要額はOCF(キャッシュフロー比率)を引き上げて目標を達成するために必要な売上増加率(現在の売上経費率での所要値、経費は売上原価と販管費の和)として導き出した。」とあるが、インフレ状況では、給与の引き上げは後追いになるものだから、売上経費率を定数とするのは不合理である。
設定条件は、生産性の上昇など動態的な変化が考慮されず、固定的債務がインフレ率分だけ実質的に減少するという見方に立つものである。
116%のインフレ率が必要とされる鉄鋼業を取り上げて困難さ強調しているが、表によれば、合計(産業総体?)の必要インフレ率は49%である。
指摘3:資産価格上昇率
「資産価格上昇率の要求水準は、債務返済に充当する利益を上げるために必要な資産価格の上昇を計算して導き出した」と説明されているが、不動産業や建設業のように土地や不動産を買い入れて転売したり開発して利益を上げる業種を別にすれば、資産価格が上昇したからといって「営業利益」が上がるわけではない。
(経常利益は上がる)
指摘4:資産流動化
「資産流動化の所要規模は、債務削減に充当する資金を得るために必要とされる保有土地・株式の比率として導いた。資産流動化において簿価に対し25%の損失が発生すると想定した」とあるが、それに対応する借り入れが75%ほど減少するとしても、資産が「営業利益」を生み出す原資であれば、「営業利益」を減少させることになる。
指摘5:コスト削減率
「コスト削減率の要求水準は、現在の売上高の下でOCFを上昇させ目標を達成するために必要なコスト削減率を明らかにすることで導き出した」そうだが、個別企業のコスト削減は、他にとっては需要減だから、GDP的連関でコストを削減した企業の売上も減少することになる。
短期的には、売上減少<経費減少により営業利益を増加することができるが、他も同じ行動を示せば、中期的には売上減少>経費減少となって営業利益が減少する。
(これは、この間日本が経験してきたことである)