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頭が破壊されている人々 経済コラムマガジン
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投稿者 力なき市民 日時 2003 年 7 月 14 日 08:48:51:

頭が破壊されている人々

シュムペータの創造的破壊
先週号で述べたように、構造改革の終着駅は、国内の需要不足に拍車をかけ、輸出依存を強めることである。そして輸出増加によって、そのうち為替は円高になり、なお一層の構造改革に走らざるを得ない状況に追込まれる。まさにイタチごっこである。

ところで円高への為替調整は、常時行われているとは限らない。むしろ逆の動きをする場合もあり、それが長く続く時もある。これは資本取引が増え、この影響が大きくなっているからである。たしかに短い期間では、経常収支と円高の関係は分かりにくい。しかし経常収支の大幅な黒字が続けば、いつかは為替が大きく調整されることになる。これを一度に行ったのが、85年のプラザ合意である。この時には1ドル240円だった為替レートが、一時120円台まで急激に調整された。

以前、経常収支の黒字幅の限度をGDPの2.5%と言っていた米国高官がいた。現在の日本の経常収支の黒字幅はこれを越えている。つまり既に危険水域に達しているのである。まさしく米国では、政府と貿易の大きな赤字が問題にされている。とりあえず問題にされているのは、中国の元が安過ぎることであるが、その次ぎは日本の円がターゲットになると思われる。実際、既に欧州からは円安批難が出ている。


構造改革派の変種に「創造的破壊」派がいる。これはシュムペータの経済理論を信奉している人々である。シュムペータはケインズのほぼ同時代の経済学者である。筆者に言わせると、彼は経済学者というより経営学者である。ここが人々が大きく勘違いをしているところである。

シュムペータは、経済の発展の法則として、イノベーションを起こすイノベーターの登場を重視する。彼の理屈では、まずイノベーターが現れ、そのうちこれに追随する者が出てくる。これによって投資は大いに盛上がり、経済は発展する。しかし次の段階では、生産が過剰になる。また投資は借入金で行われるという前提であり、事業者はこの返済を行うことになる。したがってそのうち投資は減り、不況となる。

しかし不況の中で次のイノベーターが現れ、新たなイノベーションを起こすというのがシュムペータのシナリオである。シュムペータの理論の真髄は、「不況は老朽化した非効率な企業を市場から退出させるために有益である。古いものを徹底的に清算した後に、新しいものが創造される」という主張である。これが有名な「創造的破壊」である。したがって財政政策などで景気を支えるような行為は、この市場の新陳代謝を阻害することになり、厳に慎むべき政策ということになる。

これと全く同じことを言っているのが小泉首相である。昔なら水谷研治氏である。水谷氏は「財政で景気対策を行ってはいけない。緊縮財政で経済は当面落込むが、そのうち日本経済は立派に蘇る。」とずっと言い続けている。小泉首相だけでなく、周りの政策新人類と呼ばれている若手二世政治家や加藤紘一も「国民はしばらく痛みに堪えることになるが、数年先には経済は見違えるように良くなる」と2年前にいっていた。経済団体、特に経済同友会も全く同じ思想である。

バブル崩壊後、日本はずっと不況である。しかしそれにもかかわらず、政府は緊縮財政を行ったケースがある。橋本政権と小泉政権である。むしろ積極財政を行ったのは、小渕政権の初期だけであった。ここ6年くらいは緊縮財政を行って来たようなものである。つまりシュムペータの言っていることが正しいのなら、とっくにイノベーターが現れ、経済は上向きになっていなければおかしい。

現実を見ればはっきりするように、シュムペータの言っていることは「真っ赤な嘘」である。この指摘に対して、創造的破壊派の人々は「改革が途中だ」「規制緩和が不十分」と言い訳をする。またもし彼等のいう創造的破壊を効率的に進めるには、金利を高くすることが有効である。しかし彼等は金利を高くすることを誰も主張しない。とにかく言っていることがデタラメであり、中途半端である。

シュムペータの考えは、経済理論でも何でもない。一種の宗教の教義である。したがって彼等の主張が現実に合わなくても一向にかまわないようで、決して自分達の考えの方が間違っていることを絶対に認めようとしない。つまり創造的破壊派の人々は、シュムペータ教の信者(患者)である。

カバレロとハマーの実証研究
本誌は以前、シュムペータの創造的破壊が嘘であるということを、米国の経済学者が実証研究で証明したと述べた。これは学習院大学の岩田規久男教授が日経新聞の経済学教室に書いていたことを引用したものである。これに関して、本誌の読者から、それはカバレロとハマーの実証研究のことではないかという示唆があった。そしてそれについては、竹森俊平慶大教授の「経済論戦は甦る」(東洋経済)P178〜P187に紹介されていると親切にご教授いただいた。

筆者は、さっそくそれを読んでみた。たしかに該当するような研究が、二人の経済学者によってなされていた。この内容を簡単に述べると、経済が不況に陥ると、生産性の高い企業が残り、生産性の劣る企業が退出するとは限らない。不況下ではむしろ金融の基盤のしっかりした企業だけが残ることになる。また新しく開業する企業は資金力のある企業であり、必ずしも革新性のある企業ではない。つまり不況が続けば「古いものを徹底的に清算した後に新しいものが創造される」ということはないというのである。

このように古いものを徹底的に清算することによって、生産資源が革新的な産業に移動するといったシュムペータの説は間違いということである。カバレロとハマーは、過去からの景気動向と産業の盛衰を研究し、この結論に達した。


しかし経済学者の実証研究の証明がなくとも、シュムペータの説がおかしいことは、日本の現状を見れば一目瞭然である。バブル崩壊後、日本の開業率は低迷している。長い間、廃業率が開業率を上回っている。不況が続けば、イノベータが現われるというシュムペータの説は真っ赤な嘘であることは明らかである。シュムペータが正しいのなら、今頃日本で開業ラッシュが起っていても不思議はない。

米国でも、ベンチャ−企業の開業が盛んだったのは、ITバブルの時だった。つまり景気が良い時にこそ革新的な企業の参入が増えると考える方が現実的である。景気がよくなり、人々が浮かれるような気分になった時に、投資が行われ、開業が盛んになると考える方が自然である。逆に一旦落込めばどこまでも落っこちるのが経済である。落っこちるのを放っておく方が良いというのなら、地方の経済はとっくに良くなっているはずである。拓銀が破綻した北海道なんか、一番景気が良くなっていなくてはいけないはずである。

産業組織論の立場からも、経済が成長し、市場が拡張している時こそ、参入障壁が低くなる。つまり景気が良いほど、新規の事業者にとって参入がより容易になる。反対に景気が悪くなれば、リスクをとる者がいなくなると考える方が自然である。また不況になるほど、企業間の互恵関係は強くなり、新参者の参入はより難しくなると考えられる。


日本の問題は、小泉首相を始め、マスコミに登場する多くの経済学者やエコノミストが、このシュムペータのこのいい加減な論理の信者になっていることである。宗教だから、信者は教義が正しいかどうかを考えない。まさに思考の怠慢である。少しぐらい物事を考えれば良いのにと思われる(カバレロとハマーの実証研究を持出さなくともこのようなことは常識で分るはずである。)。また時流に乗ることばかり考えている人が、このようなインチキ理論によく引っ掛かっている。このように創造的破壊というより、彼等の頭がみごとに破壊されているのである。

ところで経済がどんどん悪くなるだけでなく、最近では日本の社会も荒れて来た。たしかに社会の荒廃と経済の動向の因果関係を論理的に証明することは難しい。しかし経済の落込みとほぼ平行して、犯罪や自殺者が増えていることは間違いがない。経済政策は、政権が交代すれば実現すると思われるが、一旦荒廃した社会はなかなか元には戻りにくいと考える。したがって少なくとも、経済政策の転換は急ぐ必要がある。

本誌は、構造改革派や小さな政府論者達は極めていい加減で、言うことを少しずつ変えて来ることを何度も指摘している。これを本誌では「逃げ水」と表現している。来週号では創造的破壊論の変質について述べる。彼等は根っから卑怯な者の集まりである。

竹中大臣が「サッチャーやレーガンの改革の時も2,3年経済が落込んだ後、経済は上向きになった。日本経済もこれから良くなる。今日の株高もこの徴候であり、今の改革は続ける必要がある。」とテレビで発言している。しかし日本経済が良くなる徴候はどこにもない。

ところでサッチャーやレーガンの時代の英国や米国は、経済がインフレであり、産業は対外的に競争力がなく、経常収支は大幅に赤字であった。全く日本とは条件が異なっていたのである。また両国の経済が本格的に回復したのは、為替が下落してからである。竹中氏は少なくとも、両国と日本の経済の基礎的条件が大きく異なっていたことを知っているはずである。このようにこの人物は、人々をごまかすことに喜びを感じているとしか思えない。

民主党が高速道路料金をタダにする政策を言い出した。当初、車に税金を掛けるという話だったため、「またばかなこと」と無視していた。しかし最近の予算委員会のやり取りでは、国債を発行して、借入金を返済する形を考えているようである。民営化委員会の試算は金利を4%とばか高く想定していた。今日のような低金利なら、料金をタダにすることは可能な話である。

しかしこれについては、既に本誌でも同様の分析を五ヶ月前に03/2/10(第284号)「小泉首相の「もっと重要なこと」」で行っている。この場合問題になるのが、国債を発行して資金を調達し、これで現在の高利の借入金と借換ができるかという点である。財政投融資を返済されても、この資金の行き場がない。これで低金利の国債を買っても郵便貯金への利息は払えない。つまり財務省はうんと言わないはずである。

しかし郵便局が民営化する予定なら、政府はドライに対応することは考えられる。民営化した郵貯の経営を考慮する必要はないと考えられるのである。そうでなくとも郵貯の使い道は狭まっている。そのうち住宅金融公庫の新規貸し出しもなくなり、高速道路も国費で造るという。また大口のお得意様であった旧国鉄債務もどんどん償却されている。ところで小泉首相は、このような状況を理解して郵政事業民営化と言っているのかどうか全く分らない。

http://www.adpweb.com/eco/index.html

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