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http://www.morganstanley.co.jp/securities/jef/wib/030707/doc02.html
ウィークリー・インターナショナル・ブリーフィング 07.07.2003
グローバル:拡大する債務
Burrowing Deeper Into Debt / Rebecca McCaughrin
現在、米国はかつてない以上に外国資本に依存している。しかし、最近のバリュエ
ーション調整により、最後の審判日は必ずしも迫っているとは言えないかもしれな
い。
2002年末、米国の国際投資ポジション(ネット)はかつてないほど悪化した。現在、米
国はかつてない以上に外国資本に依存している。しかし、最近のバリュエーション調
整により、最後の審判日は必ずしも迫っているとは言えないかもしれない。
米国の投資ポジションに関するデータは毎年公表されている。これは、月次取引統
計とは異なり、資産価格と為替レートの変動を考慮に入れているため、米国が抱え
る対外債務をより時価に近い形で反映したものとなっている。直近のデータによる
と、米国の債務ポジション(ネット)は2002年末、時価ベースで2,910億ドル増加し史上
最高の2兆6,000億ドル(GDPの25%)に達した。資産と負債はともに減少したが、米
国の対外資産保有高の減少幅はさらに大きく、対外不均衡の拡大につながった。
対外債務が拡大しているのは米国だけではない
先進国中、オーストラリアとニュージーランドの対外債務の対GDP比は米国より大
きく、スウェーデンは米国と同水準にある。新興市場の数多くの国々も対外債務の
対GDP比は米国よりも高い。債権者がデフォルト・リスクを認識し、新規資本の供与
に消極的になるまで、あるいは最悪の場合、元本の返済を要求し始めるまで、対外
不均衡は永久に継続し得る。米国が最終的に評決の時を迎えるのかどうか、またそ
れはいつになるのかは推測に頼る他ない。
債務拡大の原因
対外債務の全般的な水準にだけ焦点を絞ると誤解を招く可能性がある。弊社が思う
に、より重要なのは、債務拡大の基本的な要因――金融フロー、資産価格の変動、
為替レートの変動――である。最近のFRBの調査レポートによると、資産価格と為
替レートの変動は金融フローよりも早く安定に向かい、経済成長へのマイナス効果
は小さくなる可能性がある。この調査レポートの執筆者は、対外不均衡のかなりの
部分はバリュエーションの変動に起因するため米国の対外債務の急増は一般的に
考えられているほど大きな問題ではないかもしれない、と指摘している(Cedric Tille
著"The Impact of Exchange Rate Movements on US Foreign Debt"、Current
Issues in Economics and Finance,Federal Reserve Bank of New York, 2003年1
月号)。
現在、米国はかつてない以上に外国資本に依存している。しかし、最近のバリュエ
ーション調整により、最後の審判日は必ずしも迫っているとは言えないかもしれな
い。
各要因はネットの債務ポジションに対してどのように影響しているのだろうか。純債
務残高に対する金融フローの影響はわかりやすい。外国人投資家が米国資産を新
たに購入すると債務ポジションの増加につながり、米国人投資家が対外資産を新規
に購入すると資産ポジションの増加につながる。
資産価格の変動による調整は、金融フローの影響を過大評価/抑制/無化する。
米国と海外の資産価格が連動すれば、グロス・ベースの資産の変動がグロス・ベー
スの負債の変動を相殺するため、ネットの債務ポジションへの影響は小幅にとどま
る。対照的に、米国と海外の資産価格が乖離すれば、債務ポジションへの影響は
大きくなる。
為替レートの変動による影響は、外貨へのエクスポージャーの大きさによって異な
る。ドル安は外貨建て資産の価値を増加させるが、ドル建て資産には影響しない。
米国の場合、債務はほぼドル建てであり、資産の約40%が外貨建てとなっている。
このため、ドル安はグロス・ベースの資産価値を押し上げ、ネットの投資ポジション
には好ましい影響をもたらすことになるだろう。
過去10年間、米国のバランスシートを悪化させてきたのは主に金融フローだが、最
近はバリュエーションの変化の影響が見逃せない。2001年、バリュエーションの変
化が原因でネットの債務ポジションは3,610億ドル(全体の悪化幅の50%を占める)増
加した。だが、2002年、バリュエーションの変化はネットの債務ポジションを低下させ
る方向に働いた。
バリュエーションの変化の影響により、投資ポジションは迅速かつ大幅に変化する。
経済システム全体に影響が及ぶまでに何年もかかる貿易フローとは異なり、バリュ
エーションの変化は即座に現れる。2002年に見られたように、2.6%のドル安と資産
価格変化の世界的な収斂は米国のバランスシートに大きく影響し、債務拡大ペース
は減速した。今年に入ってから、金融フローがネットで2002年の5,280億ドルから
4,510億ドル(年率)へ減速する一方、ドルはさらに約5.5%下落している。これは、経
常収支赤字がさらに拡大したとしても、ネットの債務ポジションはさらに改善し得る
可能性があることを示唆している。