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マイバンク放浪記〜新生銀行篇〜
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投稿者 転載 日時 2003 年 7 月 09 日 21:04:36:

 先日、新生銀行に口座を開いた。みずほ、三井住友、シティバンク、UFJに次ぐ5つ目の銀行の口座だ。別に銀行口座を開くのが趣味ではないのだが、「これ」っていう銀行にめぐりあわないんだよね。どこも等しくイマイチな感じ……と思っていたら、今回、新生で口座を作るにあたって、その「定説」をくつがえすような衝撃の経験をしたのである。というわけで、一年前、このコラムで書いた「メインバンク乗り換えプロジェクト」の続編として、その一部始終をここで公開。

 きっかけは、一杯のコーヒーだった。霞ヶ関の官僚フレンドとランチをしたあと、新生銀行本店1階のスターバックスでコーヒーを飲んだ。いまとなっては、あれも戦略かと思うのだが、あそこのスタバには椅子がない。で、いきおい、コーヒーを片手に銀行内をうろついたうえに、その辺にあるパンフレットなど手にとったうえに、熟読してしまったうえに、次のような会話を展開してしまった次第である。
「金利がいいねえ」
「やっぱり不良債権ないって強いなあ」
「でも支店が少ないよね。ATMが使えないと不便だよー」
「でもコンビにでおろせるんだってよ」
「あ、ほんとだー。しかも手数料はタダ。けっこうよさげー」
 気がつけば、新生銀行のまわしモノ。スタバのコーヒーに何か入ってたのか。銀行をあとにする私たちの手には、おすすめ金融商品のパンフレットがしっかりと握られていた。

 数週間後、再び内幸町にある新生銀行本店へ。この日は例のスタバ正面の受付案内ブースに直行。
「あのー、口座開きたいのですが、どちらに行けばよろしいですか」
「ありがとうございます。こちらで結構です。身分証明になるようなものはお持ちですか?」
 おぉー受付で口座開けてしまうのか……と心底驚いたが、これはフェイントだった。
 受付の女性が私の免許証をスキャナーで読み取ったあと、番号札を渡して言った。
「あちらのソファがあるコーナーでお待ちください。係りの者が迎えに参ります」。
 えっ?いまなんておっしゃいました?「係りの者が迎えに来る」っておしゃいました?
 ここは銀行のはず……銀行とは、お客は「呼ばれるまで延々待って、呼ばれたら自分からカウンターに歩み寄って行き、要件を告げる」ところじゃなかったっけ?
 ソファー脇に置いてあったファッション雑誌を読むともなくめくりながら待っていると、来ましたよ、本当に。若い男性がお迎えに……。この男性を「新生君」と呼ばせていただく。

 新生君に案内されて、半個室のようなブースに入る。出入り口のところだけ開いた壁で囲われたプライベートな空間だ。そこに新生君と向き合って座る。彼は口座開設にあたって、必要なことを過不足なく説明した後、手際よく私の免許証の個人データをパソコンに入力し始めた。入力後、プリントアウトした申込書を私に見せて、「こちらで間違いございませんか」と確認。
「はい、それで結構です」と署名欄にサインする私。すると新生君、やおら立ち上がり、
「では、いまからカードを作ってまいりますのでこちらでお待ちください」と言い残してどこかに消えていった……と思ったら、すぐに出来たばかりのカードを持って戻って来た。
 ええーっ、そんなすぐできちゃうんだ?銀行のカードって口座を開いてから一週間後とかに「配達記録」便で郵送されてくるもんじゃなかったの?そして昼間家にいない人は、「不在通知」がきて、再配達をしてもらってやっと2週間後くらいに手に入るんじゃなかったの?それが、「いまここですぐに」発行されてしまった。すごいなーっていうか、他の銀行はなんであんなに時間かかるんだよ。新生銀行には通帳がないので、カード発行で口座開設は完了。「え?もういいの?」という感じである。預金0円でも、文字どおりサインひとつで口座がひらけた。面倒な各種書類記入はまったくなし。すばらしい。

 帰りに、店内のATMで現金を入金。エントランスロビーにあるインターネットカフェから家賃の更新料を振り込んでみた。しごくカンタンである。しかも手数料はタダ。ふつう600円かかる(これはかかりすぎだろう、しかし…)ので、その分まるまる浮いたぞ!とまたスタバのコーヒーを買ってしまったので意味がないという話もあるが、それでもお釣りがくるくらいだ。
 ここまで読んで「新生、案外いいな」と思った人、一つ要注意なのは、今後この銀行も今はやりの「口座管理手数料」をとる予定があるということ。予定では月平均30万円以上の残高が有料顧客と優良顧客(と新生銀行が呼んでいるわけではない)を分けるラインとのこと。

 以上のような経緯で私は新生銀行の顧客となった。周囲には、「とうとう魂を売ったのか……」との声もある。破綻した日本の銀行を買い叩いた“ハゲタカ”外資を儲けさせていいのか、と。まあそういう見方もあるだろう。でもそんなことは一預金者としてはどうでもよいこと。なけなしのお金にわずかでもいい金利をつけてくれる銀行、各種手数料をとらない銀行は、エライ。でも、新生銀行がやっていることはそんなに特別か。否、他の業界ではまったくふつうにやっていることである。居心地のいい店内、感じのよい店員、スピーディーなサービス、客の手間をとらせない工夫、商品のわかりやい説明、そして他商品力……消費者相手の商売は、これら全てに完璧を目指してしのぎを削っている……のがふつうである。いままでそんなことしなくてもよかったのが銀行だ。だから、ふつうのことをやるだけで「銀行でこんなサービスが受けられるなんて」とお客さんは思わず目頭をあつくする(かどうかは知らんが)。業界は違うが、病院も同じだ。「お待たせしました」と言うだけで、お金を払うほうの人が感動してくれるなんて、他の業界じゃありえない。

 でも、顧客ってすぐに馴れてつけあがる生き物。業界全体のサービスのスタンダードが上がってきたら。「当行では初めて」のサービスをしても「いまどきこんなんあたりまえなんじゃー!」と、感動してくれなくなる。だからサービスで評判をあげたい銀行は、はやく取り組みましょう。あとまわしにすればするほど、やるメリットは減り、やらないデメリットだけが増して行く。「あの銀行、お役所みたいなんだよ」なんて言われたりしてね。

この新生銀行話には後日談がある。

 同じく新生に最近口座を開いたという友人によると、六本木ヒルズのATMは全て新生銀行のものらしい。新生のATMは全都銀のカードによる出金が無料。顧客にとってはありがたい限りだ。やっぱり新生はエライねえ、という話になったが、その場にいた別の友人が「でもあそこのインターネットバンキングって、けっこう危ないって聞いたことが……」と衝撃の発言。事実、一年程前にインターネット口座申し込みページでセキュリティホールがあるかもと言われた都銀に新生銀行も名を連ねていた。彼は「金利とかいいとは思ったけど、あれでやっぱり口座をつくるのはやめようと思った」そうである。実際の被害は報告されていないので、ここは信じることにしよう。いくらサービスよくても個人情報が漏れたらアウトだよ〜。がんばってくれ、新生銀行。

・新生銀行のホームページ
 http://www.shinseibank.com/

http://www.president.co.jp/pre/special/aiai/065.html

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