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BNPパリバ証券会社・経済調査部チーフ・エコノミストの河野龍太郎さん(Ryutaro Kono/Chief Economist, BNP Paribas Securities(Japan) Ltd.)は、デフレによる実質債務負担の増大が(とりわけ非製造業の)設備投資を抑制する メカニズムが働いていることには変わりないとしながらも、こう語る。「少なくとも大企業製造業に限って言えば、株価 下落、イラク戦争、SARS禍といった一連の要因による不確実性の高まりがなければ、業績の改善を背景に、03 年年初から設備投資はもう少し改善していてもおかしくなかった」。 これまで、「極端に悲観的な予想がもたらした株安が設備投資をはじめ実体経済に悪影響を与えている」と指摘してきたが、株安の修正と共に、実物経済への悪影響も和らいできた、と言う。
<中長期的に資本ストック調整がかなり進んでいる> 不確実性が和らいだこと以外にも、今後設備投資が改善に向かう、もうひとつの要因がある。それは、「中長期的にみて資本ストックの調整がかなり進んでいること」である。 図(後掲)は、名目ベースの純資本ストックの水準と伸び率をプロットしたものである。 バブル崩壊後の90年代前半にはかなり大きなストック調整圧力が働き、設備投資が大幅に削減されると同時に、資本ストックの伸びも大きく低下した。95、96年の景気回復期に設備投資が増加し、資本ストックの伸びが高まる局面は見られたが、90年代末以降は、資本ストックの伸びは低い水準が続いている(99〜00年に情報通信関連の設備投資が増加したが、資本ストックの伸びはほとんど高まらなかった)。こうした背景には、企業の成長期待がすっかり萎縮していることがある。だが、「これ以上、資本ストックの伸びを低下させることが難しい状況となっていることもある」と言う。つまり、中長期的に資本ストックの調整が進んでいるのである。
<資本ストックのうち約78兆円は、毎年、陳腐化等で除却> 資本ストックのうち約13%は、毎年、陳腐化などで除却(=資本減耗)される。現在の純資本ストック(=生産能力)を維持するためには、企業は少なくとも、1年間で資本減耗に相当する約78兆円程度(=600兆円×13%)の設備投資を行う必要がある、と言う。02年度の名目設備投資は71.3兆円(前年比▲4.6%)であり、資本ストックの減耗分を下回る水準まで低下しているのである(実質ベースでは85.7兆円 と前年比▲0.7%となっている)。法人企業統計をみても、02年にはいって設備投資は、減価償却費と同程度の水準まで低下している。 つまり、「既存の生産能力を維持するための最低限の水準まで、設備投資は削減されているわけである」。景気見通しが改善してくれば、設備投資を増加させる企業が出てもおかしくはない。
<ただ、今後の設備投資の回復は極めて緩やか> もちろん、先に述べたようにデフレが続く限り、企業が設備投資を抑制し続けるメカニズムが働くため、いくら設備投資の「下限」が見えてきたといっても、設備投資の本格的な拡大は期待できない。「03年度に設備投資が改善しても、それが需給ギャップの縮小につながるような経済の本格回復をもたらすとは予想されない」。資本ストック水準からみた「下限」が存在する一方で、デフレが回復の足を引っ張るため、今後の設備投資の回復は極めて緩やかにとどまる、と見る。