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頭が混乱している構造改革派 経済コラムマガジン
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投稿者 力なき市民 日時 2003 年 7 月 06 日 18:08:37:


03/7/7(第304号)


頭が混乱している構造改革派

設備投資の激減
先週号まで、経済の循環を説明し、これを前提にしたデフレ克服策を提案した。この提案した政策は極めて明解である。経済循環には、所得に従属的に決まる消費の流れとは別に、漏出と注入があり、注入を漏出より大きくすれば、経済は拡大し、反対に漏出を大きくすれば、経済は縮小に向かう。したがって筆者の提案は積極財政への転換を行い、注入を増やし、漏出を小さくすることである。これをとりあえず金利や物価がほかの国並に上昇するまで行えば良い。

しかし今日のように経済が不調の状態では、設備投資は伸びない。実際、本来資金の受取り主体のはずの企業までが貯蓄超過となっている。企業が金を使わないのである。政府部門も注入(財政支出)を減らし、漏出を増やそうとしている(増税)。また住宅投資もピークが過ぎ、今後減る一方である(注入の減少)。残るのは輸出(注入)だけである。これを維持するため、政府は一生懸命為替介入を行っている。今年に入って、7兆円も米ドルを買支えている。この資金の一部が日本の株式市場に流れており、株高を演出している。

しかしこのような政策もいずれ限界がある。本来必要のない外貨準備高も、60兆円を越える異常な数値になっている。むしろ筆者は、為替介入に使っている資金を財政支出に使えと言っているのである。


問題は、改革派の主張である。彼等は必ず、「バブル崩壊後、財政を投入したが効果はなかった。後は改革しかない。」とばかの一つ覚えの主張を行う。たしかにバブル崩壊後、公共投資などの財政支出を増やした。これは注入の増加である。また住宅建設の促進政策が行われた。この住宅投資も経済の循環では注入になる。

しかしバブル崩壊後、一方で設備投資という注入が激減していることに改革派何故なのか一切触れない。次の表は当時の設備投資の名目GDP比率の推移である。

設備投資の名目GDP比率(単位:%) GDP比率
87年 16.5
88年 17.6
89年 19.0
90年 20.0
91年 20.2
92年 18.4
93年 16.0
94年 14.6


この表から分るように、バブル崩壊後、設備投資はものすごい勢いで減少した。年間、20から25兆円(GDPの約5%)も減ったのである。これは大変と、政府は財政支出を増やし、住宅建設の促進政策を行った。そしてこれでも足らない分は輸出の増加で補い、かろうじてマイナス成長を免れたのである。過剰消費傾向の米国でさえ、ITバブル崩壊後の設備投資の減少でデフレ懸念が囁かれているのに、元々過剰貯蓄体質の日本で設備投資が大幅に減少したのである。

このため政府と家計には借金が残り、貿易収支の大きな黒字は、95年をピークとする円高で反撃された。とにかく設備投資という注入の大幅の減少を財政・住宅投資・純輸出という注入の増加でやっとカバーしたのである。世間では、当時のバブル崩壊による資産価格の下落ばかりが注目され、このような地味な経済数値の変動は軽視されている。

財政支出を増やしたから、経済はなんとか持ったのである。このように「バブル崩壊後の財政支出が効果がなかった」という話は「真っ赤な嘘」である。しかしメディアには、このような発言をするエコノミストや政治家が数多く登場する。しかし彼等は、当時の経済の状況を全く理解していないか、あるいは意図的に嘘をついているのである。

経済の循環を考えると、財政支出の効果がなくなったということは、財政支出によって所得が発生しても、その所得を一切使わないということを意味する。つまり新たに発生した所得は、全て貯蓄されるということを意味する。全く非現実的である。

たしかに財政政策の効果が小さくなるということは考えられる。貯蓄率が大きくなって、乗数値が小さくなる場合である。しかし家計の貯蓄率がことさら大きくなったというデータはない。むしろ最近では、貯蓄率が小さくなっている(これには複雑な事情があり、これ以上ここでは触れない)。このように財政支出の経済効果については、いい加減な話が多く、さもそれが正しいように語られているのである。

改革の終着駅
改革派の言っていることを、経済循環で理解することは難しい。通常、経済循環は支出(需要)をスタートに生産が決まり、生産によって所得が決定する。そしてこの所得からまた支出が決まり、再び生産へと繋がる。

しかしほとんどの改革派の人々は頭の中が混乱している。主張もバラバラである。「不良債権処理」「高金利政策などによる弱い企業の排除」「規制緩和」「財政支出の削減」など、改革の中味も人によって異なる。

これらを基本的な経済循環で考えてみる。改革派の主張は、支出(需要)からスタートするのではなく、むしろ生産からと言った方が良い。つまり生産部門の合理化を改革と称している。改革派の人々は頭が混乱しているので、わざわざ「おたく達の言っていることはこうですよ」と解説してあげる必要がある。

つまり改革によって資金力のない企業が排除され、資金に余裕のある企業だけがかろうじて残るのである。また規制緩和が及ばない業種や、為替介入という奨励金を貰っている輸出企業も大丈夫である。しかし問題は、このような経済の循環を前提にすれば、生産したものが全て売れるという保証がないことである。むしろ倒産や失業が増え、国内の購買力は弱くなる。普通に考えると、国内ではどうしても生産物が余るのである。

したがって余った生産物を海外に輸出する他はない。まさに外需に依存する日本経済の今日の姿である。そして国内の需要不足をごまかすため、当局はとんでもなく巨額の円高阻止の為替介入を行っているのである。

分りやす言えば、決済してもらう予定のない「丸井のクレジットカード」を大量に米国に渡し、日本の余剰生産物を買ってもらっているのである。最近、米国資本は、このクレジットカードで、日本政府の政策によって安くしてもらった日本企業の株式をせっせと買っている。もしクレジットカードの支払いをデフォルト(変動相場制の日本の円には本来外貨準備は不要である。もし巨額の外貨準備を取崩し、国内に戻せば、たちまち円高になる。つまり介入資金は、半永久的に日本には戻らない。これではデフォルトと同じである。)すれば、ただで日本企業を買収できることになる。デフォルトまで行かなくても、85年のプラザ合意と同じように、米ドルの為替レートを半分に調整することになれば、日本の外国に持つ資産の価値は半分になる。

なんと日本の当局は、米国資本が日本企業を買収しやすくするように、クレジットカードを渡すだけでなく、株の持合い解消まで指導している。そしてインチキ会計士もこれに加担している。この状況を見ながら、小泉首相も「改革」は進んでいると喜んでいる。


ただし改革派の主張が正しい唯一のケースが考えられる。生産力が支出(需要)を下回る場合である。例えば500の生産力に対して、600の支出がある場合である。このようなケースでは、生産部門の合理化によって生産力を増すことが必要になる。そしてこの場合、仮に失業が発生しても、直ぐに次の職を見つけることが容易である。簡単な教育訓練で労働者の移動が可能なのである。これは竹中大臣がいつも言っていることである。しかしこのような状況は、日本には全く当て嵌まらない。反対に、日本は、需要が慢性的に不足するデフレで困難に陥っているのである。

構造改革派の変種で「創造的破壊」派がいる。これは経済学者シュムペータを教祖とする一派である。来週号はこれを取上げる。

今日のような経済政策を続けて行っておれば、業界の3番目、4番目のクラスの企業は全て外資に買収されることになる。買収するのは、競争で一旦日本に負けた外国の資本である。そのような国は自国の為替レートをどんどん切下げるので、そのうち競争力を回復させるのである。

為替レートを4分の1に切り下げたフランスに日産は買収され、3分の1に切り下げた米国に、長銀と日債銀は買収された。内需拡大を放棄し、外需依存の経済を続けると、外国資本にこき使われる日本人が増えるという法則である。競争で負けたはずのフランス人が優雅にバカンスを楽しみ、勝ったはずの日本企業ではリストラが横行し、過労死が頻発する。これを推進しているのが小泉首相と周りの改革派の人々である。そのうち日本人は頑張ったから、御褒美として「円を高くしてあげましょう」と言われるのである。

改革派のばかなエコノミストは、このよう状況が続くことを助長している。昔、英語でゼミを行ってる教授がテレビに登場していた。直ぐに外国資本にこき使われやすくするための人材育成のようである。この教授も改革派なのであろう。このような流れを阻止するには、内需拡大によって、物価を上昇させ、円の価値が下がることによって、円安を実現させる必要がある。為替介入によって円安を実現させても、次の円高が待っているだけである。

筆者は、ずっと円安論者である。ただしそれは積極財政で実現させる必要がある。今日のような為替介入でごまかせば、将来、それだけ大きな円高調整が待っていることになるのである。ただし、日本が積極財政に転換すれば、日本の景気が良くなると予想した資本の流入が起こり、むしろ円高になる可能性がある。難しい問題である。その時こそ、為替介入による円高阻止しかないかもしれない。

http://www.adpweb.com/eco/index.html

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