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政府が8月から、牛肉の輸入にセーフガード(緊急輸入制限)を発動し、今年度いっぱい関税を引き上げることが確実になった。わずかかもしれないが、小売価格に跳ね返るとみられている。
セーフガードは、輸入が急増したときに、国内産業を保護する措置として、世界貿易機関(WTO)も認めているルールである。しかし、今回の発動はとても納得できるものではない。
今月末に発表される4〜6月の統計で、輸入量が前年比で17%を超えて増えれば、法律によって自動的に発動される。
日本が関税率を段階的に引き下げる見返りに、米国やオーストラリアなどの輸入相手国との間でかわした取り決めに従ったまでだ、と農水省は主張する。
しかし、昨年のこの時期は、牛海綿状脳症(BSE)の影響で、輸入は大幅に減っていた。輸入が急増したというよりも、BSEという特殊な事情がなくなり、もとの状態に戻っているだけだ。
そもそも昨年の急減は、政府のBSE対策の失政が招いたことであり、それを棚上げにして、発動するのはおかしい。外食産業などは、そう主張する。
どちらに理があるかは、おのずから明らかだろう。
このセーフガードを定めた法律は、3月に国会で延長が決まった。民主党は、BSEの影響を避けるために、2000年と比べた増加率に基準を変えるべきだとの改正案を出したが、生産者の保護を優先させる自民党など与党に否決された。
農水省はBSEをきっかけにして「消費者に顔を向けた農政」に転換したと言っていたが、今回の対応をみれば、看板だけの話としか言いようがない。自民党の族議員と農水官僚が決める政策によって、不利益を被るのは結局、消費者である。
「政府に裁量の余地はない」などと弁解する前に、政府・与党はどうしたら消費者の納得が得られる仕組みに改めることができるか、真剣に考えるべきだ。
牛肉だけではない。豚肉も8月から3年連続でセーフガードが発動されることになりそうだ。
日本は世界最大の食肉輸入国だ。下がる一方の自給率に歯止めをかけるためにも、小手先の輸入制限ではなく、国産品の競争力をつけ、消費者に買ってもらう工夫を重ねる必要がある。
農水省は、生産農家の経営規模を大きくしたり、流通、販売面での改革で消費者を味方につけたり、という基本プランを掲げている。それに沿って努力している生産者も多いが、今回のような保護策の行き過ぎは、かえって改革を遅らせる。
WTOの新ラウンドでも、世界各国が力を入れる自由貿易協定(FTA)でも、関税による保護はなくす方向を目指している。世界の流れに逆行してはならない。