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現代コリア2003年7・8月号
高情報院長の北朝鮮起爆実験証言をどうみるか
西岡力・（現代コリア研究所主任研究員）
七月九日、韓国国会情報委員会で高泳老・国家情報院長は「北朝鮮は一九九七年から二〇〇二年九月まで七十回にわたり平安北道亀城市龍徳洞で核起爆実験を実施した。韓国政府は九八年四月からこの事実を知っていた」と証言した。
亀城市での起爆実験については、筆者は本誌九九年三月号拙稿で「アメリカは偵察衛星で九七年初め、北朝鮮が平安南道亀城市に起爆装置の実験場を建設していることをつかみ、九七年から九八年にかけて少なくとも三回の起爆実験が成功したことを確認した。米国政府はそれを韓・日政府に通告した」と書いており、ジャーナリストの恵谷治氏がロシアの商業衛星写真で、筆者が指摘した亀城核起爆実験場が平安北道亀城市の東北部を流れる東倉江の上流部にある沢の合流部（旧・龍徳里）に存在することを確認した。そこにははっきりと九つの爆発跡と、指揮所、観測施設、爆発物組立工場、保管倉庫と推定される建物六棟が見えると、恵各氏は指摘している（『週刊ポスト』平成十一年四月十六日号）。
また、朝鮮日報は二〇〇二年十二月十八日付けで「（韓国）政府関係者を通じて確認した結果、北朝鮮は九八年以後、起爆実験を七十余回実施した」と回数まで正確に書いていた。
つまり新しい事実が判明したわけではないのだ。韓国では高証言を受けて、金大中批判が高まっている。北朝鮮が核開発を続けている証拠を握っていながら、南北首脳会談を実現のため五億ドル以上の現金を裏金として金正日に渡したのは、国家反逆罪であるという強い非難である。
しかし、問題は金大中だけでない。クリントン大統領もこの事実を知りながら、金大中の太陽政策を支持し毎年五十万トンの重油を金正日に送り続けてきた「共犯」だ。もちろん、百七十万トンのコメを貢いだ日本の自民党政権も同罪だ。
金正日は韓国から現金を、アメリカから重油を、日本からコメをただ取りしつつ、着々と核ミサイル開発を続けていたということだ。このことを本誌は継続して告発してきたが、ブッシュ政権成立と九・一一テロ勃発までは、無視され続けてきた。
焦点は、アメリカが察知し日韓両政府も通報を受けていた軍事情報を、このタイミングで公式に確認した意図は何かということだ。特に、本誌でも指摘してきたように高泳老・国家情報院長は親北朝鮮的人物だ。その高院長がこれを語ったという点をどうみるか。
高院長は六月下旬訪米し、ＣＩＡ長官と会談している。この席で、衛星写真を見せられたという報道がワシントン発で出ている。米情報衛星写真で確認された情報は当然米国の許可がなければ公開できない。米ＣＩＡは高院長にあなたの口から公開しなければ、こちらで公開するという脅しをかけた可能性が高い。米国政府から最初にこの情報が出れば、アメリカ政府が金大中元大統領の処罰を望んでいるのではという観測が広がったはずだ。
一方、金正日を刺激しないという大原則に忠実な高院長の立場からすると、北朝鮮は現在、公然と核保有を宣言し、国際社会を恐喝している。したがって、起爆実験を実施していたという事実の公開は金正日の意向に反するものではないという判断も高院長側にあったかもしれない。
アメリカは三月、日本政府に対し、北朝鮮の保有する核爆弾の小型化が進んでいるという情報を伝えた。ブッシュ政権は国内外に金正日の危険性をアピールし、フセインの次に打倒すべき目標は金正日だという世論を作ろうとしているのだろう。
今回の高院長証言は米国政府からするとその一環ということだ。ブッシュ政権は金正日がアメリカ本土まで届く核ミサイルを持つことを絶対許さない。一方、金正日は核ミサイル開発を絶対止めない。この秋、この両者の絶対矛盾が朝鮮半島問題を大きく動かすことは間違いない。その大激動は目の前に来ている。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。