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○本日(8月8日)午後1時から、ラジオ日本「ミッキー安川のずばり勝負」に宮崎が生出演します。■ 関西方面のかたは午後二時まで。関東は午後三時まで。○
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宮崎正弘の国際ニュース・早読み
平成15年(2003)8月8日(金曜日)
通巻656号
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あの嘘つきアイリス・チャンがアメリカで英語の新刊
なぜ「TIME」が大きく紹介するの?
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中国と米国が時折、不思議なほどの黙示録的呼吸を合わせて一種の政治陰謀をたくらむ。歴史的結節点とでも言えるときに、そういう奇妙な暗合が見られる。
米国があまり豊かではない知恵を絞って発明した「事後法」が第二次大戦後に東京裁判なる芝居で主役を演じ、大東亜戦争を一方的に日本の悪だと裁いた。
論理矛盾をもろともせず、しかも数多くのでっち上げの証言、フレームアップにより日本の印象を悪くすることに躍起だった。広島と長崎への原爆投下は「終戦を早めるためだった」との口実で正当化された。所謂”南京大虐殺”は、何一つ科学的証拠もないままに教科書にまで掲載されるようになった。
国民党の謀略でも都合のいい政治キャンペーンなら共産党は梃子に利用する。右の文脈から派生した政治宣伝が「南京大虐殺」という虚構を、いかにも本物として、歴史を改竄してでも彼らの正当性を吹聴し、日本人をマインドコントロールにかけておく必要があった。中国(と言っても当時の国連代表権は蒋介石)と米国は、ここで”野合”したのだ。
数年前から世界の英語マーケットでアイリス・チャンの「ザ・レープ・オブ・ナンキン」なる政治謀略本が書棚を席巻し、しかも英国の老舗文庫ペンギンブッックスにまで入ってロングセラーを続ける。
ところが日本の専門家から「使用されている写真のなかの、およそ90%がでっち上げ写真だ」とする明確な証拠を突きつけられるとアイリスはすごすごと退散。日本語版翻訳は見送りになり、彼女の来日予定も突如中止。「ディベート」を期待していた多くの日本人を失望させた。
そうした曰くつきのアイリスが新著を出したが、なんと全米最大部数の週刊誌「TIME」(8月11日号)が、カラー写真を駆使し、大きなスペースを割いて書評しているのだ。
冒頭にのべた米中両国の奇妙な共闘の再現であるのかも?
しかし「アイリスの文章は歴史的証拠の裏付けを欠く」とタイムの書評欄ではスーザン・ジェイケスから鋭角的な指摘をされている。
彼女の新刊の題名は、「アメリカにおける中国人」で、要するに中国人移民の迫害された歴史を物語風につづったもの。今度はアメリカの白人に「いじめっ子」の印象を固定化し、いわばWASP主流に挑んだ形でもある。
中国系アメリカ人は苦力(クーリー)として”ゴールド・ラッシュ”に湧く米国へ大量にやってきた。最初の中国人女性はNY博覧会で「見せ物」になった。中国人は教育を受けてもクリーニング屋になるしかなかった。
「だから」個人的体験もあるが、「義務感として書かなければならない本だと信じる」とアイリスは情緒的な物言いをしている。
ところが前作のごとく科学的証拠なし、主観だけの宣伝文章の羅列をみれば、歴史書としての価値が低いことは一目瞭然である。
いささかの配慮どころが、チャンの中国史における歴史記述は「愛国ナショナリズム」を獅子吼する大陸中国のそれと同じになり「チベット、ウイグル、モンゴルに関しては五千年前から「中国の領土」だ」とか、浅薄な中華思想、あるいは「ロマン主義に陥っている」とするタイムの結論はこうだ。
「過去の歴史を矯正し、改訂するというけれど、その目的は本書にこそ必要だ」。
いくら反日ムードに”ゆるふん”のTIMEにしても、これほどの酷評を展開した理由は、なんらかの商業的あるいは政治的理由で偽知識人の新刊を紙面に大きく取り上げざるをえないにしても、そこには明らかな心理的抵抗と、幾ばくかの良心があったからだろう。
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(読者の声1)8-5付けNYCタイムズにこのニコラスクリストフの社説が出ているが、一見アメリカの広島長崎の核攻撃の反省に見える記事だが、内容はこの攻撃のお陰で更なる日本の悲惨さを救ったという、許しがたい暴言を見逃してはならない。それも木戸や特に米内が原爆が終戦のための天の恵みと言ったのをテークアドヴァンテージしてアメリカの免罪符としている点である。米内の発言は同胞に対して許しがたい暴言であり、自らが海軍陸戦隊の指揮し上海事変を起こし、シナ事変へと泥沼に日本を陥れた張本人にもかかわらず、変わり身すばやく、アメリカのゴマをすり戦犯を逃れた人間のくず(三村文男著愚将米内と山本)であるだけに、米内の偽善と悪徳がそのまま”真摯に”表されているが、ともかくこのクリストフという論説屋こそアメリカの日本属国論の正体を物語っている。この男は前にも日本がシナや朝鮮に謝罪していないと言いがかりをつけアメリカのアジア駐留がこのお陰で不安定要因を蒙っているなど、全く頓珍漢な議論をした前歴のある男。(AO生、世田谷)。
(読者の声2)「宮崎正弘の国際ニュース・早読み 8月6日(水曜日、増大号)」の(読者の声2)を読んで、昭和57年(西暦1982年)の秋、多分10月であったように思うが、東シナ海で操業中の日本の漁船の下から米国海軍の潜水艦が浮上してきて、その漁船を沈没させた事件を思い出した。約一日後12人の乗組員のうち一人だけが日本の他の漁船に救助され、残りはおそらくおぼれ死んだのであろう。事故の後、その潜水艦の乗組員は救助活動を一切せず、また米軍の発表によれば、機密の任務を遂行していたため、米軍に対してもその潜水艦から連絡できなかったとのことである。その後、被害者に賠償金が払われた。日本のマスコミはあまり大きく取り上げなかった。私が注目したのは、この事件に関するThe Economist誌の記事である。なんとその記事には、これは、米国政府がこういったことが起きた場合、日本国民が同反応するかを見るための実験であった可能性がある、と書いてあった。スキャンダラスな報道で著名なNews Week誌ではない。穏当な報道で有名なThe Economist誌の記事である。注目すべきは、次の二点である。
1.この事件に対するその米軍潜水艦艦長及び乗組員の応対は、同誌編集者の眼から見ても以上である。つまり、何か裏がある可能性が高い。
2.他国民が同反応するかを見るための実験としてこういったことを政府が行うことは、尋常ではないかもしれないがありうることである。つまり、欧米の外交の世界では、ひとつのあるべき手法である、とThe Economist誌の編集者は考えている。日本のジャーナリストや政治学者でThe Economist誌を定期購読している人は多くいる。かれらは、おそらく日本に関する記事を関心を持って読んでいることであろう。
しかしながら、なぜこの記事が指摘した点を問題にしなかったのであろうか。無能、無神経としか言いようがない。そして、いみじくも、The Economist 誌の編集者の憶測したとおり、その後米国政府は、しこたま日本政府に邦銀が米国国債を買うように仕向けさせた後、プラザ合意後のドル安で大損させ、湾岸戦争あとには130億ドルむしりとり、実験で大丈夫と保障をもらったかのような行動をとった。同時時期にもうひとつ日本に関する注目すべき記事があった。おそらく海流の変化のためであろうが、当時、大量のイルカが日本近海に現れ、漁船の網に捕らえられた魚を網を食いちぎって食べていた。猟師たちは、櫂でイルカを叩いて追っ払おうとした。傷ついて血を流すイルカや死ぬイルカがいた。年間約2万匹のイルカがこうして死んだと推計されている。世界中の動物保護団体が抗議して、中には日本の漁船を襲うものもいた。
当時、東太平洋で漁をしていた米国の漁船の網に引っかかり窒息死するイルカは年間約20万頭と推計されていた。しかし、動物保護団体からの抗議はほとんどなかった。これらのことを指摘した上で、日本国民はこういったことをされても反論もしない自虐的な国民であると、半ば馬鹿にして半ば哀れんでいるような記事であった。小生には、根本的には同類の問題ではあるが、こちらの方が韓国漁船の問題より、はるかに根の深く日本国民の問題をえぐりだしているように思える(ST生、神奈川)。
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(今週の拙論)@「SARS禍からあけた台湾の活気」(「自由」9月号、8月10日発売)。A「ウォール街に新興のヘッジ・ファンドが登場」(「経営速報」、8月初旬号)。B「江沢民院政終わりのはじまり」(「エルネオス」、9月号)。
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(サイト情報)
1. ブルッキングス研究所の北東アジア政策研究センタ−(Center for Northeast
Asian Policy Studies)の中国関係レポート:
@ "How America Views China-South Korea Bilateralism," by Jae Ho Chung,
Visiting Fellow from Seoul National University, July 2003
http://www.brook.edu/dybdocroot/fp/cnaps/papers/chung2003.pdf
A "China's Emerging Civil Society," by Zhang Ye, Visiting Fellow from
the Asian Foundation in Beijing, June 2003:
http://www.brook.edu/dybdocroot/fp/cnaps/papers/ye2003.pdf
B "Civil Service Reforms in Hong Kong After the Transfer of Sovereignty,"
by Wilson Wong, Visiting Fellow from Chinese University of Hong Kong,
June 2003
http://www.brook.edu/dybdocroot/fp/cnaps/papers/wong2003.pdf
2.ニクソン・センター:"China and the Crisis in Korea," by David Michael Lampton. In the National Interest, July 30, 2003.
http://www.inthenationalinterest.com/Articles/Vol2Issue30/Vol2Issue30LamptonPFV.html
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(再録)
SARSは細菌兵器開発ラボの事故?
情報秘匿・操作の高い付けが回った
(これは「正論」7月号からの再録です。発売期間を二ヶ月経過したのでここに再録します)。
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△軍のバイオ兵器開発事故説を追って
「これぞ中国版チェルノブイリ」と題したロンドン・エコノミスト誌(4月26日号)の表紙は毛沢東が大きなマスクをしたデザインである。
SARSは急速に世界中へ拡がったが、中国政府は発生から四ヶ月近く新型ウィルスの猛威を伝えなかった。中国人民解放軍はこの間、専門家を広東へ派遣して原因がコロナウィルスであることを上層部に報告していた、と5月4日になって軍機関紙が伝えたが、噴飯ものである。
なにしろ中国衛生部が当初発表した患者数に軍病院の入院患者を含めていなかった。
中国当局はWHO調査団に「軍は独自の報告制度を持っており軍病院で得た詳細な情報は公表しないよう要請されていた」と語った。この軍の秘密主義は一部で拡大歪曲され、細菌兵器テロ説となって世界に流布される。最初からSARSは軍事機密に属すると判断されていたからだが、口コミを通じてデマが拡がり、多くの病院から医師、看護婦が逃げ出す騒ぎにまで発展した。
WHOが感染源の疑いのある中国に調査団受け入れを求めたのは3月12日、中国側は「全人代が18日まで開かれている」ことを理由に受け入れを延期し、ようやく3月24日にWHOは北京へ入った。
WHOが「新型コロナウィルス」と特定したのは4月16日になった。
それまでに拡大した中華世界の噂のひとつは細菌兵器の開発中にラボで事故があり、菌が漏洩したとする「中国版チェルノブイリ」説が強かった。結局、情報開示の遅滞が世界中に感染を広めた元凶となり、中国は非難の的となる。外国企業は中国からの撤退を真剣に考えるようになる。
WHOは5月になると新たに天津市とモンゴルの首都ウランバートルをSARSの流行地域に指定した。各地では暴動も起きた。
対策が泥縄式、主導官庁も分からない。中国は北京大学などを閉鎖し、市内に数百万人いるとされる出稼ぎ労働者の帰省を禁止し、農村部住民の医療費優遇など諸対策を打ち出した。すでにこの時点で老百姓(庶民)は大本営発表を信じていない。郊外農村地区では「部外者の立ち入り」を厳密に制限し、道路や小路を封鎖し自警団の検問まではじめる。
こうして情報隠匿は逆に悪い推測を生み、細菌兵器説は米国へ流れ出たのだ。
「炭素菌を研究する中国軍のラボから漏れた」(ゴードン・チャン「SARS危機」、米国ジェイムズ財団発行「CHINA BRIEF」、4月22日号)。
「コロナ・ウィルスとはいえ、過去のウィルスとゲノムはまるで似ていない」(ジュリー・ジャーバディング博士「全米疫病管理センター」、4月17日記者会見)。
「伝染の早さから言っても細菌兵器の疑いは捨てきれない。化学兵器は限定された地域と効力に時間の制限があり、テロリストは炭疽菌のつぎにこれを狙った。中国は細菌兵器の研究開発に余念がなく、46000人が従事している」(リチャード・フィッシャー「ジェイムズ財団」理事)。
「不注意から研究者が感染して外界に広まったという説はかなり説得力がある。事実なら中国は世界の敵となる。しかも中国は最新式の細菌培養装置をアメリカから輸入したと言うかなり確かな報告がある」(「AC通信」4月29日付け)。
生物兵器になりうる可能性があると日本の労働厚生省が警告しているのは炭疽金、天然痘、ペスト菌、そしてボツリヌス症である。
炭疽金テロは現実に9・11テロ事件直後から米国を揺らした。
ボツリヌス症も嘗て米軍が研究し、イラクが一時保有していた。
冷戦時代のロシアでは7万人が化学細菌兵器の研究に従事していた。79年にスベルドボボスクで事故が偶然に起きて僅か4日間で77名が死んだ。
中国でも80年代に化学細菌戦争研究ラボで大事故が発生した形跡がある(ケン・アリベック「バイオハザード(BIO HAZARD)」、ランダムハウス刊、273p)。
「南アフリカ(で失業した)核物理学者,化学、細菌医学、科学者、細菌研究者らが90年代にいくつかの病原菌の種を中国へ売却した」(「ワシントン・ポスト」、4月20日、21日連載記事)。
感染のスピートと死亡率の異様な高さも単なるウィルス説に疑惑を抱かせた。
4月末の統計で「死亡率」は3・5%から4%台だったが、「実際には5・9%から6%と考えられる」(ジュリー・ガーバディン「全米疫病管理予防センター」所長)。ところが5月7日、香港での死亡率はなんと20%に跳ね上がった。
「1918年から19年に猛威を振るった「スペイン風邪」は世界で2300万人が死んだ。が感染者と死亡者を比較した死亡率は2%だった。(中略)謎に満ちたアフリカの「エボラ熱」は、75%から90%という高い死亡率だったが、なかなか感染は拡がらなかった」(ワシントンポスト、4月25日)。
SARS情報隠しの本質は、中国共産党の「宣伝」の嘘がばれていく過程でもあった。
米国の防疫管理センターの活躍を追うと、細菌戦争にいかに対応するかの実戦訓練の如きで、新設の国土防衛省はカナダと合同の最近テロ対策の訓練まで実施した。危機管理への心構えが日本とは違うのである。
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▲潜水艦事故も肝心の情報を隠した
中国のような全体主義独裁国家で、情報の隠蔽及び操作は常識である。
5月2日、新華社は一斉に中国海軍の通常型潜水艦「361号」が山東省煙台沖で訓練中、事故を起こして乗組員70人全員が死亡したと伝えた。「361号潜艇」は「明(ミン)級」で「北海艦隊」に所属し、約20隻保有しているとの発表があった。
ところが米国情報筋は「明らかに明級ではない」と分析した。なぜなら「外国からの軍監を乗せているはずだし、人員は57人が平均。SLBM搭載型ゴルフ級ではないか。これなら乗組員平均が87名」(「STRATFOR」、5月2日付け)だ。またインタファクス通信は北京の複数の軍事筋の話として、電気系統の故障か魚雷などの爆発によって火災が艦内で発生したとの見方を伝えた。
香港の「明報」は4月20−26日の間に事故が起こったのではないかと推測したが、その根拠は@中国の華僑向け通信社、中国新聞社が「中国軍が4月13日から訓練を行う」と報じ、写真などを数回配信した。ところが23日以降、配信が途絶えた。A中国国内向けのウェブサイトに海軍の潜水艦で大きな事故が起きたとの書き込みが一週間前からあった等を挙げた。5月7日づけ「ボストン・グローブ」は中国軍高官の話として「事故は4月16日、潜水訓練中だったので、それから10日間分からなかった」と報じた。
これほど複数の情報が錯綜し、しかも最終確認がない。中国の軍関係の報道はいつもこれなのだ。
もしSLBM搭載潜水艦が事故ともなれば、中国は同型潜水艦がゼロになる。核兵器を搭載したミサイルの海中発射が不能になれば、軍事戦略が変更を迫られるため、明らかに軍に都合の悪い何かを中国は隠した。
おりしも趙紫陽元総書記が死亡した噂が世界を駆けめぐったが、当局は学生らの天安門広場でのデモの再来を回避するため“黙秘”を続けた。趙紫陽の死亡について中国外務省報道局は回答もせず、確認もせず、憶測だけがSARSの流言飛語と混ざって世界中へ飛び交った。
情報秘匿、操作がお得意の国だからこれらの「事件」は愕くに価しないけれどSARS情報に関してはもっと奥行きが深いのではないか。バイオ兵器の事故説だって完全に消えたわけではない。
世界中から非難囂々となって中国側ははじめて広東省での昨年11月からの感染拡大の資料を提出した。だが2月以降の資料は公開せず「既に(新型肺炎は)抑制済みだ」と繰り返した。
発生は広東省仏山市で、元凶ウィルスは「動物」が原因(感冒にかかったアヒルか鶏が犯人とする説)だとされた。
広東省では野生動物の売買が盛んで「野味(野生動物を食材に使う料理)市場」ではネコ、野豚、クジャク、ダチョウ、カメ、ハクビシン(ジャコウネコ科の哺乳類)、ハリネズミなど50種類以上の食用動物が生きたまま売られている。
この段階で華僑たちの噂からバイオ兵器説は消えた。かわって多いのは広東省順徳市が元凶説だ。順徳は生きたままの動物の首を目の目でちょんぎるゲテモノ料理の本場だからというのだ。順徳は香港の不動産王ヘンダーソンランドの李兆基の出身地で、ブルースリーの記念館があるところでも知られる。
さらに次の証言。「広州市呼吸病研究所の鍾南山所長は北京で開かれた新型肺炎に関する会議で「最も早期(の患者)は昨年7月までさかのぼる」と述べ、これまで第1例とされていた病例より約4カ月前に新型肺炎とみられる患者が見つかっていたことを初めて示唆した」(産経新聞、5月6日付け)。
台湾民進党の蔡同栄・立法委員は「新型肺炎のSARSは中国が発生源なのに、SARSという名称では元凶がどこか分からない。政府は大衆の教育のために直ちに名称を『中国肺炎』(China Pneumonia)に変えるべきだ」と言った(4月28日)。ちなみに中国は「非典型肺炎」と命名したが、これもなんだか分からない。
しかも最初に言われたのは「人獣共通のウィルス」説で、SARSが人間から犬に感染し何匹かの犬も死んだそうな。
「人獣共通感染症(Zoonosis)」には恐ろしいほどの実例がある。
主なものだけを列記してみても、馬と人への致死的感染(モービリウイルス)、エボラ出血熱、エマージング・ウイルス、ボリビア出血熱、ハンタウイルス肺症候群、ボルナ病、プリオン病、新型クロイツフェルト・ヤコブ病、ヘンドラ様ウイルス、ニパウイルス。西ナイル熱、ラサ熱等々。
ようやくWHOが特定したのがコロナウィルスの「新型」。ならば「旧型」が存在するに違いない。
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専門家によれば「旧型は牛の急性下痢で、とくに新生の子牛に多く、大腸菌症と並んで、屡々死亡原因になる」という。成牛は牛コロナウィルスの単独感染で発症し寒冷期に多発する(だから今年の冬に第二次感染がありうると警告する医師あり)。
犬のコロナウィルス性腸炎は、発見当時、病原性が弱いとされたが、突然病原性が強くなって世界中に蔓延した。激しい下痢と嘔吐の胃腸炎を起こす特徴があり、伝染力が強く、犬を集団で飼育している場合、短期に蔓延する。また感染した犬はたとえ回復しても数週間発熱はないが、ウィルスを便に排出する。
ますます面妖な話である。
広東省に視察に行った日本の国立国際医療センターチームの調査では、第一号と「発表」された40代の男性は広東省仏山市で健在(?)という。だがSARSウイルスに感染したという抗体が見つからなかったらしい。中国当局認定「第1号」は農業協同組合職員で、その後、快復。妻も感染したが子どもたち四人は感染しなかった。
「第2号」は同省深セン市の独身男性で、調理師。「動物を扱うことが多かった」ため、実家の同省河源市内の病院に入院した。
さらに毎日新聞(4月26日)のつぎの報道を読むとますます頭がこんがらがってきた。
「香港大学の研究チームは、新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の集団感染が問題となった九竜地区の高層マンション群「淘大花園(アモイガーデン)」の患者2人から検出したSARSウイルスの遺伝子を比較した結果、2カ所で遺伝子に違いがあることを突き止めた。(中略)研究チームによると、ウイルスが自らを複製する際に働く酵素の遺伝子と、ウイルス表面の突起をつくる際に働く遺伝子が違っていた。この酵素が変異すると、ウイルスの繁殖力に変化が起きる可能性がある。また、ウイルス表面の突起が変異すると、従来と異なる臓器を攻撃することがある」。
要はウィルスが宿主を動物から人間に替えると凶暴な特性に変異するらしいのだ。
中国当局はいまや二億台ちかい携帯電話が普及し、新しい情報空間を形成している現実を無視し、噂の拡大を放置しながら、いったい何を本気で隠蔽しようとしたのだろう?
北京は08年のオリンピックを控えて観光誘致に懸命だった。そこで二万人を超える感染者と疑惑患者を急遽、隔離する。
温家宝首相は衛生部部長兼任の呉儀・副首相や華建敏・国務院秘書長、劉淇・北京市党書記、王岐山・北京市市長代理をともない小湯山行員を視察した。この小湯山病院は4月23日からわずか1週間で建設されたSARS専用病院だ。ここに中国人民解放軍の1000名以上の軍医を派遣し、SARS感染者への治療を進めていた。
だがあのバラック病棟の急造ぶりを目撃していると「なんかアウシェビッツのユダヤ人収容所みたい}(北京留学生)、「アウトブレーク」の映画を思い出した」という薄気味悪い感想が中国人の間から漏れてくる。本当にコロナウィルス説を信じて良いのか、というわけだ。
筆者は殆ど毎年、ゴールデンウィークと夏休みには中国各地を取材している。実は今年も4月26日出発でJALを予約し、上海、寧波、紹興などのホテルも予約、デポジットも支払った。上海では4月27日まで恒例モーターショーが大々的に開催されると聞いたのでマイカーブームの本場で中国人の自動車にかける一種異様な熱気も取材したかった。専門通訳まで予約していた。
SARSは広東、香港に飛び火していたが、事前の電話では「上海は誰もマスクをかけていません。安心して来てください」。
ところがWHOが現場に査察に入るや、事態は報道されていた以上に深刻で、相当数の感染者が隠されていた。上海は被害から免れているかに見えたのも情報操作が原因で、4月下旬のモーターショーを乗り切りたい一心で被害は極小と喧伝につとめたのだった。また政府肝いりで「アジア版ダボス会議」を狙った海南島ボーアウでの「アジア経済フォーラム」もついに延期に追い込まれた。
日本人小学校も閉鎖。スターバックスはお客さんゼロ、外国企業の撤退がつづき、北京の日本人には帰国勧告がでた。
上海モーターショーは同月24日に突如、うち切られた。トヨダなどは日本人社員のほぼ全員が引き上げた。
「珠海工業デルタへの進出計画の中断もしくは一部撤退が外国企業によって真剣に検討されはじめ、急成長してきた中国が突然土石流に飲み込まれたような惨状になりつつある」と知人の香港駐在員。
現実にマイクロソフトは製造工場のメキシコ移転を打診、理由として「SARS感染が工場労働者に広がり、責任者の台湾人が広東省に出張できず、香港を含む中国南部の物流機能が低下する懸念」をあげた。
筆者はそれでも中国へ行くつもりでいた。すると友人たちが「中国から帰ったら一ヶ月は寄りつくな」の合唱。ついに土壇場で、キャンセル料金を払って延期することにした。
SARSが大問題となる直前の三月にも、広東省の広州から広西省のあちこちをベトナム国境まで南下して取材に回っていた。あとから考えると、この地帯はちょうどSARSが蔓延していた時期にあたる。
華南は「世界の工場」として繁栄するが、裏面では労働者の加重労働をもたらし、加えて衛生管理がおざなりで、下水設備はなく、飲み水は不潔である。労働者はあまり風呂に入らない。
こうした工場インフラの劣悪さはあまり改善されていない。屋台で食事する人は相変わらず汚い食器に共通の箸。街でマスクをかけている人は殆ど居なかった。街の一流レストランですら衛生的とは言えない環境で、トイレの傍が台所、同じ水を使っている。
中国人ガイドの話では肉の厚味を見せるため出荷時に泥水を混ぜているという。十数年前、街でミネラルウォーターを買うと、キャップがおかしい。中身が少し汚い。要するに空瓶を集めて河の水を入れ、ミネラルと称して売っている輩がいた。恐れ入った話である。
なにか防衛本能が閃いたのだろうか、筆者は華南旅行で、いつもなら平気で止まる安宿を敬遠し、四つ星以上のホテルを選んだ。
もうひとつ、各種報道が見落としいるのはAIDSの蔓延ぶりとの関連である。
TIMEが報じた中国における麻薬患者およそ700万人。これに潜在的結核患者およそ一億人(結核だけで年間25万人が死んでいる)。不潔な麻薬の注射針がAIDSの爆発を生み、河南省だけで70万ものAIDSが蔓延しているというのに当局はおざなりの対策しか講じてこなかったのだ。
WHOは「2010年に中国のAIDS患者は1000万人を超えるだろう」と不気味な予測をしている(拙著「本当は中国で何が起きているか」、徳間書店刊を参照)。
こういう劣悪な環境で新型肺炎は急速に感染を拡げる素地を築いていたのだ。
SARSは中国経済を転覆させるばかりか、大げさに言えば「世界同時恐慌」の引き金を引く可能性がでた。
GMの中国における第一四半期の売上げは54%増、フォルクスワーゲンは94%の売上げ増だった。SARSはこれらを突然暗転させる。「中国の製造業がこれほどの落ち込みを見せたのは89年の天安門事件いらい」(ビジネスウィーク、4月21日号)。
北京市長、中国衛生部長(大臣)ら120名の高官が情報公開の不徹底で更迭され、新部長に国務院副総理(外交担当)の呉儀・女史が兼任することとなった。
これとて実態は情報公開をめぐる共産党トップの政争の結果で「衛生部長は江沢民の個人医、それを切られた報復に江沢民は胡錦濤派の北京市長を馘首した」(ワシントンポスト、5月2日)。
かくしてSARS情報を極秘にして数ヶ月、中国指導部が情報を公開をないがしろにした結果が、逆にブーメランのように繁栄経済を正面から直撃した。
広東、香港への投資ブームは死に体に近い。これは必然的に他の沿岸都市を襲う。
経済的被害は数百億ドルを超えるだろうが、中国が狼狽しているのは「国民の健康」ではなく、「投資激減」という経済側面のほうである。
「今年の成長は9・9%から第二四半期はいきなり2%へ下方修正ですとJPモルガン・チェス銀行」(ワシントンタイムズ、5月3日)。SARSは中国の経済的繁栄を一瞬にして奪うテロになる懼れがある。
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○小誌はほぼ日刊 ○転送自由(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2003
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