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Kohut: Muslim "Fea and Loathing" of the U.S.
アンドリュー・コート
ギャラップ社元代表
ピュー世論調査センターディレクター
ピュー世論調査センターのディレクターであるアンドリュー・コートは、イラク戦争によってアメリカに対して世界中の人々が持つイメージはますます悪くなってしまったと述べている。ワシントンに対する反感が多くのイスラム教国家で広がっており、アメリカを自国に対する脅威だとみなす国まで存在する。ピューセンターが行った最新の世論調査で、「八カ国のイスラム教国家のうち、七カ国で国民の大多数が、アメリカは自国にとって軍事的脅威となりうると考えていることがわかった」とコートは語っている。彼はまた、「去年の段階でアメリカはイスラム教徒に嫌われていた。今年になってアメリカは嫌われるだけでなく、恐れられてさえいる」とも述べている。
イラク戦争によってヨーロッパにおいても反米、反ブッシュ感情が高まっている。ブッシュ大統領は「ヨーロッパのことを理解していないし、気にかけもしない典型的なアメリカ人だとヨーロッパ人の目には映っている」とコートは語っている。
聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・ディレクター) 二〇〇三年六月十八日 (邦訳文は、インタビューからの抜粋・要約)
その他のインタビューはこちらからご覧になれます。:http://www.foreignaffairsj.co.jp/source/CFR-Interview/Interview-Index.htm
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ピュー世論調査センターが実施したアメリカに対する世界の態度に関する最新の世論調査の結果は懸念の残るものだった。まず世論調査の結論を簡単にまとめてほしい。
アメリカのイメージは世界中で悪くなっている。二〇〇二年にわれわれが実施した調査の結果、9.11前の一九九九年、二〇〇〇年に米国務省が実施した調査よりも、アメリカに好意的な人の数は、現在ほとんどの国で少なくなっていることが明らかになった。さらにイラク戦争後に二十カ国とパレスチナ自治区で行った調査の結果、アメリカのイメージはさらに悪くなっていることが分かった。この調査には、アメリカ人自身のアメリカに対するイメージも含まれている。
アメリカのイメージ以外にも、イラク戦争によって世界の人々が分断されたことが分かる調査結果がある。例えば、国連のイメージも世界中で悪くなった。国連は国家に対していい影響を与えていると考える人の割合は、戦争に反対した国だけでなく、アメリカとイギリスにおいても小さくなっている。アメリカとの関係をもっと縮小すべきだと主張するヨーロッパ人が増えたことも分かった。第二次世界大戦後の国際関係の中心だった大西洋間の友好関係は、イラク戦争によって国民感情の上では崩れてしまった。またアメリカに対する市民のイメージが最も悪いのはイスラム世界だということも分かった。
いまでもイスラム世界でのアメリカのイメージは最悪なのか。インターネット上の記事を見ていると、イラク戦争の終結以後、イスラム世界のアメリカに対する報道は穏健になってきたように思えるが。
報道機関はそうかもしれない。しかし、われわれの今年と去年の調査結果を比べてみると、アメリカに対してイスラム世界が持っているイメージは去年の時点でも既に非常に悪かったが、今年になってさらに悪くなったことが分かる。イスラムに対する脅威が存在すると考えているイスラム教徒はほとんどの国で増えている。イスラムに対する世界規模の脅威が存在すると多くのイスラム人が思っている。その脅威とはもちろん、多くの場合アメリカのことだ。イスラム教徒が多数派を占める八カ国のうち、七カ国で大部分の人がアメリカは軍事的に自国の脅威になるかもしれないと考えている。去年、彼らはアメリカのことを嫌っていた。しかし今年になって彼らはアメリカを嫌うだけでなく、恐れるようにもなった。
イスラム世界については、もう一点付け加えたい。去年の調査では反米感情を抱いているのは中東とパキスタンのイスラム教徒だった。一方、今年の調査では、世界中のイスラム教徒が反米感情を抱いていることが分かった。例えばアフリカのナイジェリアのイスラム教徒やインドネシアのイスラム教徒もアメリカに対して反感を抱いている。イラク戦争後のアメリカに対する敵意が深まり、広がっていると言えるだろう。また、調査によって、非常に多くのイスラム教国家で、人々がオサマ・ビン・ラディンを信頼しているという驚くべき結果も明らかになった。
ヨーロッパ人のアメリカに対する態度についてはどうか。
好意的な意見は去年よりも少なくなっている。アメリカは単独行動主義的だ、ヨーロッパはアメリカとは異なる独自の外交政策を模索しなければならないという意見が強くなりつつある。もちろんイラク戦争後、アメリカに好意的になった人もいるが、程度の問題に過ぎない。フランス人とドイツ人の約四〇%がアメリカに対して好意的な意見を持っているが、かつてのような友好的な関係に戻るまでにはまだ障害が数多くある。
ヨーロッパの敵意は、ブッシュ大統領個人に向けられたものなのだろうか、それともアメリカという国全体に対して向けられたものなのだろうか。
われわれがそのような質問をすると、ヨーロッパ人はしばしば「アメリカが問題なのではなく、ブッシュが問題だ」と答える。ただし、公正を期して言うならば、今回の一連の調査で、アメリカの力に対する憤り、疑念が存在することが分かった。ヨーロッパから見ればブッシュ大統領のせいで事態が悪化したように見えるかもしれないが、歴史的に見て、現在のようにアメリカだけが超大国で、残りの世界との間には非常に大きな力の差があれば、ある種の憤りを世界が感じるのは当然のことだ。
9.11の後にも、ヨーロッパの人々は当初アメリカに対して強い同情を示したが、すぐに「アメリカ人も、弱いということがどういうことか知ることはいいことだ」と言うようになった。このような態度がアメリカの力に対する憤りを反映した態度だ。去年、多くのヨーロッパ人は、アメリカはサダム・フセイン政権を打倒したいのではなく、本当は石油資源を手に入れたいからイラク侵攻を考えていると主張していた。これはアメリカの動機に対する疑いの目を示している。彼らは問題はブッシュにあると言っているが、私の推測では、アメリカに対するヨーロッパの敵意は、単にブッシュのせいというわけではないと思う。
先日、ツァイト紙の発行者、編集者であるジョセフ・ジョフィにインタビューした時、彼は、問題はブッシュがビル・クリントンとは違うこと、つまりヨーロッパ人はクリントンの性格が好きだったが、ブッシュ大統領はクリントンとはまったく違う性格であることにあると言っていた。そういうことは考えられないのか。
ブッシュは、ヨーロッパを理解せず、他の大統領ほどヨーロッパのことを気にかけない典型的なアメリカ人であるという印象をヨーロッパ人に与えてしまった。イラク戦争どころかテロリズムに対する戦争が始まる前の二〇〇一年八月の時点で、すでにヨーロッパ人はそのような印象を持っていた。イラクが問題になるかなり前、ブッシュが大統領に就任してわずか六ヶ月後には既にヨーロッパにおけるブッシュの支持率はクリントンの支持率より四〇ポイントも低くなっていた。どうしてブッシュを支持しないのかヨーロッパ人に尋ねると、彼らはブッシュが京都議定書から離脱したこと、ヨーロッパから輸入する鋼鉄に関税を課したことを理由に挙げた。このように、はじめからヨーロッパ人にはブッシュに対する敵意があったのは確かだ。
ブッシュ大統領のヨーロッパにおける支持率は、ロナルド・レーガンの大統領就任一年目と同じくらいだろうか。
分からない。ブッシュ大統領の支持率と比較できるようなレーガン元大統領の支持率のデータがないからだ。ただ、パーシング・ミサイルをドイツに設置しようとし、またブッシュの「悪の枢軸」発言と同じようにソ連を「悪の帝国」と描写したレーガンは、ヨーロッパ人から愛されてはいなかった。しかし当時は現在と違ってソ連という共通の脅威が存在したため、ヨーロッパの人々も米欧の安定的な関係に関心を寄せていた。テロとの戦いは、現在でも多くのヨーロッパ人から支持を受けているが、一年前と比べれば支持は弱くなったし、そもそもかつてのソ連の脅威と匹敵するほど米欧関係を深める力とはなりえない。特に西欧の中でもロシアの近くに位置するドイツにとってはそうだ。
他国の人々はアメリカを好きではないという事実は、逆にアメリカの反発を招く可能性がないか。
フランス人やドイツ人のことを好きではないと言うアメリカ人の割合は、アメリカ人のことを好きではないと言うフランス人、ドイツ人の割合とだいたい同じだ。またフランス、ドイツ製の製品の購入をボイコットしようと考えたことがあると答えたアメリカ人の数はアメリカ製の製品の購入をボイコットしようと考えたことがあると答えたフランス人、ドイツ人の数よりも多い。カナダを好意的に見るアメリカ人の割合までもが減少している。カナダに対して好意を示すアメリカ人の割合はそれでも依然としてかなり高い。しかし去年に比べれば低くなっているのも事実だ。
この現象は二〇〇四年の大統領選挙にはどのような影響を与えるだろうか。
分からない。共和党出身の現大統領でも「ヨーロッパから距離を置こう」などと主張するとは思わないし、民主党からの候補者が「世界はわれわれを嫌っている。アメリカが自国の防衛を最優先しているからだ」などと主張するとも思えないからだ。それよりまずイラク戦争に対してアメリカ人がどう感じているかを見るべきだ。大多数のアメリカ人が「イラク戦争によってわれわれの危機は小さくなった。イラク戦争はテロに対する戦いを助けた」と考えている。このように考える人の数が変化するまでは、他国が持つアメリカのイメージのような問題は政治的視点からは些細な問題でしかない。
イラクの大量破壊兵器(WMD)に対する世論の態度は変化したか。
大きな変化はないが、あえて言うなら、戦争が終わった現在、戦争を正当化するために人々が欲していたイラクのWMD所有の決定的証拠はそれほど重要ではなくなった。
ということは、イラクでいまだにWMDを発見できずにいることは、報道や数人の民主党議員の注目は集めているものの、まだ政治的問題にはなっていないし、今後もならないだろうということか。
まだ政治的問題にはなっていない。政治的問題になるとすれば、それはアメリカが突然イランあるいは北朝鮮に目を向けたときであり、そのとき、大統領はイラク戦争でWMDが発見できなかったために、世論を新たな戦争支持に向けるのに苦労することになるだろう。イラク戦争は、アメリカ人の生命という点からするとそれほどコストがかかっていないために、国民も今のところ支持している。
アメリカの世論は、引き続きイラク問題に関わり続けるのを支持し続けるだろうか。
もっともすばらしいのは、国家建設が支持されていることだ。かつて国家建設という言葉は汚いイメージの言葉だった。しかし、アメリカ人は国家建設がアメリカの利益になる、つまりわれわれを守る手段だと考えているため、アフガニスタンやイラクにおける国家建設を支持している。
アフガニスタンでは、アメリカは十分な行動をとっていないという非難が多く寄せられている。
いや、政府が認識している以上に、アメリカが行っていることに対する支持も存在している。
アメリカの政策決定者にとって、あなたが行った世論調査はどのような意味を持つだろうか。
世論調査の結果は、アメリカでは悪いニュースだとみなされている。しかし、この世論調査から、政策を形成する上で考えなければならない二つの問いが明らかになった。悪いニュースとみなされている世論調査の結果の一つは、われわれが現在、イスラム世界の人々から恐れられているという事実だ。しかし、この結果をもとに政策決定をする上で考えなければならないのは、「われわれに危害を加える可能性のある人を抑止することになるから、イスラム世界が抱いている恐れによってわれわれは安全になるのだろうか。それともこの恐れによってアメリカに対する憎悪が深まり、テロを支援する人が増える可能性があるから、われわれはより危険にさらされることになるのか」という問いだ。
あなたはどう思うか。
私は意見を持っていない。私の役割は世論を調査することであって、政策提言をすることではないからだ。第二の問いは、「国連をどれほど気にかけるべきか」という問いだ。国連安保理は紛争を平和的に解決しうる唯一の場だから重視すべきなのか。あるいは国連はバルカン半島においても、西アフリカにおいても、イラクにおいても危機に対する役割を果たせなかったのだから、それほど気にかけなくてもいいのか。
アメリカの世論はこれまで国連をずっと嫌ってきたのか。
そういうわけではない。アメリカの世論は常に国連のやり方には批判的だった。しかし一方で、共和党員は認めたくないかもしれないが、世論が国連を支持してきたのも確かだ。アメリカ人は伝統的に国連を平和のためのフォーラムとみなしてきたし、他にそのような役割を果たす場は存在しない。
Copyright 2003 by the Council on Foreign Relations, Inc. & Foreign Affairs, Japan
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フォーリン・アフェアーズ「日本語版」○月号
・米外交問題評議会のウェブ・リソースによれば・・・
・米外交問題評議会のガーズマン・インタビューシリーズの〇〇氏へのインタビューによれば・・・
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