現在地 HOME > 掲示板 > Ψ空耳の丘Ψ27 > 676.html ★阿修羅♪ |
|
転載
「21世紀を解読する」第62号=2003年6月4日(水)
=====================================================
**************************************************
◆<サミット報道>大本営発表垂れ流しと同じだ!
**************************************************
エビアン・サミットの終了を報じるNHKテレビのニュースは3日午後7時で、私は
たまたま夕食がてら眺めていた。原稿の冒頭は、
<フランスのエビアンで開かれていたサミット=主要国首脳会議は日本時間のきょう
夕方、最終日の討議を行って議長総括をまとめ閉幕しました。
議長総括では北朝鮮による拉致事件の解決を目指す日本の立場への全面的な支持を表
明し、新型肺炎の制圧に国際的な協力を進めていくことなどが盛り込まれました>
だった。末尾近くにもう一度
<一方、北朝鮮については「北朝鮮に核開発の放棄を求める我々の立場は首脳宣言で
表明した。核問題と拉致事件など未解決の人道的問題の包括的な解決を平和的手段によ
って追求する関係者の努力を支持する」として、拉致事件の解決を目指す日本の立場へ
の全面的な支持や拉致被害者に対する支援を表明しています>
と繰り返される。その後すぐに、被害者家族会代表の横田滋と拉致被害者蓮池薫の父、
秀量があい次いで登場、
「国際世論を高める意味で大きな意義があったと思います。各国の結束を高めるという
ことであり、拉致問題の解決に大きな力になると非常に喜んでいます」
という主旨のことを言うという作りだった。
私は胸がむかついてきた。すぐにプロ野球観戦に切り換えた。
サミットの議長総括がどういう性格のものであるか、NHKの担当者たちは誰でも知
っているはずだ。サミット準備のシェルパ(首脳の代理人会合は半年も前から断続的に
行われている。
日本政府が額面どおり拉致に憤り、核をもてあそぶ北朝鮮を「危険」とみているのな
ら、外務省の経済担当外務審議官である日本のシェルパは、北朝鮮問題での政治宣言を
出すことを目指したはずである。拉致も核も、北朝鮮に抗議する姿勢はタテマエだけの
ことで、ことなかれ主義の外交官が多いから、そういう姿勢をとらなかった可能性も否
定できない。
そうでなかった場合でも、ちょっとした「打診」をやってみて、すぐに止めてしまっ
たのではないか? 朝鮮半島問題で日本の立場を支援しようというのは、アメリカだけ
だ。英仏独伊のヨーロッパ勢は無関心だろう。ロシアは、日本の主張を取り入れた宣言
には「反対」のはずだ。今回初めてサミットの会合に招かれ、G9の仲間入りに歩み始
めたとみられる中国も、もちろん同じ立場だ。
つまり今回のサミットで、拉致問題は、前進などしなかった。参加各国の冷淡さが支
配したというのが実情だろう。政治宣言にはならなかったから議長総括となったという
ことである。議長「総括」は、議長の「サマリー」である。「要約」と訳す方が実態に
近い。各国首脳の発言の中で、異論のなかったものをずらずらと並べていくのである。
そんなところに1項目入っても、北朝鮮は反発も何もしないことが確実だからこそ、
中ソも異議を申し立てない。日本のパワーは「経済力」しかなかったのだから、衰えた
とはいっても、拉致がらみの1行ぐらいは入れさせることができる。議長総括に盛り込
まれたということの実態はこんなことなのである。
小泉純一郎はサミット終了後の記者会見で、拉致問題を訴えたことを述べた後、
<各国首脳の同意と共感を得たと理解している>
と語っている。
サミットの自由討議の場で、首脳は忙しい。発言の機会は自分でつかまなければなら
ず、発言内容も考えておく必要がある。だから他の首脳の発言など、あまり聞いていな
いのである。日本の首相は、議論を呼ぶような発言はしないからなおさらである。小泉
の発言も、誰も聞いていなかったに違いないのである。しかし最後に「理解している」
を付けておけば、何ごともウソではなくなる。
NHKの
<拉致事件の解決を目指す日本の立場への全面的な支持や拉致被害者に対する支援を
表明しています>
という原稿は、タテマエだけで曲解したものであり、ほとんどウソ同然である。ほん
とうの意味が分かったなら、横田も蓮池も怒り出すに違いない。おそらくNHKも他の
メディアも、横田、蓮池にウソを教え、
<大きな意義があったと思います>
と言わせたのだろう。
前々回で触れた小林信彦のコラムの
「兵隊さんのおかげです」
と同じことではないか。
まったく非合理的な作戦によって、敗け戦を重ねていたのに、新聞は「勝った」とし
か言わない大本営発表を垂れ流しした。それと同じことではないか。
政治宣言にできず、敗北だったはずのサミット(外交戦の現場)について、「勝った」
と虚報する。そして関係者に「小泉さんのおかげです」「政府のおかげです」と言わせ
る。
日本のメディアは、第2次大戦中の報道のどこをどう反省しているのだろうか。
=====================================================================
このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行
しています。
解除は http://www.mag2.com/m/0000024557.htm から。