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哲学クロニクル 第393号
(2003年7月2日)
姿を消した大量破壊兵器についての常識(2)
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イラクでは大量破壊兵器が発見されず、ブレア政権は苦境に立っているようです。
今回はこの問題をめぐるウォーラーステインのコメントの後半部分です。
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姿を消した大量破壊兵器についての常識(2)
イマヌエル・ウーラーステイン
http://fbc.binghamton.edu/commentr.htm
ところでアメリカはイラクに兵器があるかどうかを確認することに、それほど大き
な関心をもっているのだろうか。アメリカの鷹派は、イラクに侵略したかったか
ら、イラクに侵略した。イラクが中東の反米運動の中心だったからだ。ブッシュ
政権の全員が、イラクには大量破壊兵器が存在しないことを絶対的に確信してい
たところで、アメリカはイラクに侵略したことだろう。ウォルフォウィッツは、
兵器に重点をおくのは、官僚主義的な便宜によるものだと語っていた。というこ
とは、これはアメリカ議会や国民のうちで、戦争を支持しない人々を説得するた
めの手段にすぎず、実際の理由ではなかったということである。
たしかにアメリカは大量破壊兵器に懸念を抱いていた。しかしそれは、世界の他
の諸国や勢力が、アメリカに大きな制約を加えることがないようにするという決
意を示すものだ。とくに軍事的にはこれを絶対に認めないという意味なのだ。
何度も指摘してきたことだが、アメリカは欧州連合がアメリカから政治的に独立
することを許容しえないし、他の諸国が核兵器を所有することを許容しえないの
である。
もちろんイギリス、ロシア、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル
などの諸国はすでに核兵器を保有している。しかし今後十年程度は、核兵器を開
発する潜在的な能力をもつ諸国に、核兵器を開発させないというのがアメリカの
政策である。北朝鮮、イラン、リビア、エジプト、アルジェリアだけが対象では
ない。
日本、韓国、カザフスタン、ウクライナ、ベラルーシ、ドイツ、南アフリカ、ブ
ラジル、アルゼンチンにも禁じるということなのだ。こうしてみると多数の諸国
があるようだが、潜在的な核保有国は、実際には十数カ国に限られるのである。
この政策の根拠はごくシンプルなものだ。戦争の間に、ごく小さな核兵器が一つ
投下されるだけで、アメリカの軍事行動の支払うコストは非常に高くなる、いや
高くなりすぎるのだ。最近は非対称戦争がよく取り沙汰される。アメリカは兵器
については他の諸国を圧倒しているので、どんな敵にも勝利を収められるという
のだ。しかし大量破壊兵器は、こうした非対称状態を解消できる。他の諸国がア
メリカにこうした兵器を使用したら、アメリカの世論と、世論が戦争を認可する
意志に、どれほど大きな政治的な影響が及ぼされるか、考えてもみてほしい。
だからアメリカが核拡散を阻止しようとこれほど懸命に努力しているのは、よく
理解できることである。しかしアメリカのこうした試みは、夢物語にすぎないと
言わざるをえない。政府を変えてみても(体制を変えてみても)、問題はまった
く解決されないのである。
イランの核兵器開発計画を開始しは、宗教指導者たちではなく、アメリカが政権
につけたシャーだったことを忘れてはならない。イスラエルは、イランをイラク
に対抗させようと、これを教唆していたのである。またイラクの化学兵器計画は、
イラクをイランに対抗させようとしたイギリスとアメリカが教唆したことも忘れ
てはならない。
アメリカのイラク侵攻は、あらゆる国で大量破壊兵器を開発するための計画を阻
止するものではなく、反対に加速するものである。ところでアメリカはいま、イ
ラク占領という、力を枯渇させるような長期的な活動に従事している。このため
世界での自国の権益を保護する能力は増大するどころが、低下しているのである。
6月30日付けのファイナンシャル・タイムズ紙は、イラクはブッシュ大統領のチェ
チェンになったのでないかと問い掛けていた。たしかに、アメリカがイラクの大
量破壊兵器問題をシニカルに利用したことが、ブッシュにやがて効いてくるに違
いない。アメリカ軍の兵士たちは、始まったばかりのゲリラ戦争で、これからま
すます激しい攻撃をうけることになるからだ。
ブッシュ大統領は、あらゆる権力者が学ぶ教訓を、これから学ぶだろう。権力に
は制限があるのだ。とくに、慎重かつ知的に行使されない権力にはね制限がある
のだ。最近の歴史において、ブッシュ大統領ほど権力を、無謀かつ放埒に行使し
た権力者はいないのである。
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投稿者 乃依 日時 2003 年 7 月 01 日 21:41:30: