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油屋さんの次なる標的  萬晩報通信員 園田義明
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投稿者 力なき市民 日時 2003 年 7 月 01 日 10:59:59:

油屋さんの次なる標的

2003年06月29日(日)
萬晩報通信員 園田義明


 ■最初の犠牲者

 回答期限でもあったのだろうか?

 待ちきれないブッシュ政権は、世界的な英経済紙フィナンシャル・タイムズを使って、日本に対する脅しをかけてきたようだ。6月26日、日本の企業連合が、長年交渉を進めてきた総額20億ドル(約2400億円)の大型プロジェクトであるイランのアザデガン油田開発計画で、米政府が日本に計画から撤退するよう圧力をかけていると報じた。

 米政府当局者らの話として伝えたもので、記事によれば、ライス大統領補佐官が日本政府高官と接触し、今月中旬にはカンボジアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の際、パウエル国務長官が川口順子外相と会談し、見直しを持ちかけた。またアーミテージ国務副長官もワシントンの駐米大使に同様のメッセージを届けたようだ。

 同様の記事は、ブッシュ政権のタカ派に近い産経新聞が6月20日付朝刊で報じられているが、米国政府から日本政府に対する「懸念」として扱われている。また、外務省筋の話として、「米国はこの問題を深刻に受け止めている。日本が米国の懸念表明を押し切って契約に踏み切れば、日米関係にも影響が出るかもしれない」と指摘したと紹介している。やはりすでにこの時点で「懸念」ではなく「圧力」だったようだ。

 フィナンシャル・タイムズによれば、個別取引にまで米国が直接介入するのは初めてと見られている。米国が、核開発やテロ組織アルカイダへの支援が懸念されるイランへの圧力を強める中で、最初の犠牲者が、イラク戦を支持した数少ない同盟国日本に向けられたのである。

 ■イランと日本との関係

 イランは、世界第5位の石油埋蔵量と世界第2位の天然ガス埋蔵量を有する資源大国であり、日本は、輸入原油の約12%をイランから購入してきた。またイランにとっても日本は最大の原油輸出先でもある。日本は、原油の安定供給及び中東地域の安定確保の観点から、イランとの関係を重視し、特に改革派ハタミ現政権発足後は、積極的にハタミ大統領の対外融和路線を支援してきた。

 特にイラン南西部にあるアザデガン油田は、イラン最大級の油田であり、確認埋蔵量は約260億バレルとされる。2000年のハタミ大統領訪日時に両国間で交渉開始に合意し、2001年7月、平沼赳夫経済産業相がテヘランでハタミ統領と会談し、開発の早期契約に向けて努力することで合意した。

 参加する企業連合は、国際石油開発(旧インドネシア石油)、石油資源開発、トーメンの3社で、フィナンシャル・タイムズによれば、この企業連合の関係者が数日内の契約を結ぶためテヘランで今まさに待機しているようだ。契約近しのニュースは、6月27日付米ブルームバーグでも詳細に報道されている。

 実は、このアザデガン油田には採算を疑問視する声があるのも事実である。地表が石灰岩質で覆われているため、効率的な採掘は困難とする見方や、油質への疑問もある。

 しかし、2000年に失効したアラビア石油のサウジアラビア・カフジ油田をめぐる交渉失敗のばん回を狙う経済産業省、2005年3月に廃止される石油公団の天下り先確保、再建中のトーメンの生き残り作戦などの思惑が絡む複雑な背景を持つ事業となっている。

 企業連合の国際石油開発(旧インドネシア石油)は、石油公団が50%出資しており、石油資源開発の石油公団の出資比率は66%である。この二社には、すでに多くの石油公団退職者が役員として天下っている。

 そして、残る一社であるトーメンも豊田通商との経営統合を念頭に経営再建中である。しかも、トーメンは、5月30日に約100億円の第三者割当増資の詳細を発表し、増資引き受けで、豊田通商は出資比率が現在の約11%から19.71%に高まり、新たにトヨタ自動車は10.64%を出資する2位株主となる。つまり、実質トーメンはトヨタグループ企業となる。

 トヨタ自動車現会長の奥田碩氏は、昨年、日本経営者団体連盟(日経連)と経済団体連合会(経団連)が統合して発足した日本経済団体連合会(日本経団連)の初代会長であり、政府の経済財政諮問会議のメンバーでもある。

 おそらく、政府・財界関係者は、夜を徹して情報収集と関係各国への協力を呼びかけている最中であろう。

 ■イラン・リビア制裁強化法(通称ダマト法)

 イラン・リビア制裁強化法(通称ダマト法)は、イランとリビアの石油・ガス部門に年間2000万ドル(当初は4000万ドル)以上投資する外国企業に制裁を科す米国の法律であり、1996年8月に成立した。米上下両院は2001年7月、同法を5年間延長する法案を可決し、ブッシュ大統領が8月3日に署名して成立した。

 このイラン・リビア制裁強化法で動きのとれない米石油メジャーをしり目に、日欧企業がイランに投資攻勢をかけてきた。フランス・ベルギー・ドイツの連合体である石油メジャー・トタル(旧トタルフィナ・エルフ)は、カスピ海からイランの湾岸に抜けるガス・パイプラインの建設を検討、伊ENIも油田開発に調印している。中国もイランでの資源開発に意欲的な姿勢を見せており、米メジャーは焦燥感を強めていた。

 イランの核開発への懸念を強めている米政府は6月25日、国際的な圧力を強める一環として、「イラン・リビア制裁強化法」の海外企業に対する適用を強化する方向で検討を開始した。各国企業をイランとの取引から撤退させることによって、イランへの実質的な制裁を強化、外交攻勢をいっそう活発化させる狙いがある。

 6月24日付の米紙ワシントン・ポストはABCテレビとの合同世論調査結果を発表したが、イランの核兵器保有阻止のため米軍の軍事行動を支持すると答えた人は56%で、反対は38%にとどまったと報じるなど、不気味な兆候も見え始めている。

 ただし、現時点ではイラク同様の武力行使は考えにくい。対イラク戦を見せしめにチェイニー副大統領、ライス大統領補佐官等が適当に強硬発言を繰り返しながら、イラン、そして北朝鮮への「封じ込め」政策を強化しつつ、綻び始めたパクス・アメリカーナの再構築を目指すことになるだろう。そのスケープゴートとして日本のアザデガン油田問題が最初のターゲットになったのである。

 従って、圧力をかけたい本命は、フランスを中心とする欧州勢であろう。ここにイラク戦の隠れた米国の意図がある。やがて米国主導の「『古い欧州』封じ込め戦略」の全貌が明らかになるだろう。

 ■燃料電池市場に本格的に動き始めたガリバー

 報道によれば、日本側は米国の圧力に抵抗しているが、イランの核問題をめぐる国際原子力機関(IAEA)での協議で進展が見込まれる9月ごろまで、契約を先延ばしすることでしのごうとしているようだ。しかし、ブッシュ政権としては、イランそして、北朝鮮問題は2004年の大統領選に向けて、いつでも使える状態に温存したいカードである。従って、少なくて1年、再選された場合は、5年間の延期も覚悟せねばならない。米国側の真意を確認しつつ、こっそりとイラク戦反対組のフランス、ドイツ、ロシア、そしてブッシュ批判の声を上げつつある米国内の国際協調派と連携を取り合うことをお勧めしたい。

 「今日、生まれた子供が最初に運転する車は、汚染のない水素自動車になるだろう。」

 日本では見逃されがちだが、今年1月のブッシュ大統領の一般教書演説の内容である。そして「水素・燃料電池イニシアチブ」という研究開発計画を打ち出した。今後5年間で12億ドルを投じ、2015年までに水素利用を商業ベースに乗せることを目指している。5月8日には、米エネルギー省が、5年間で1億5000万ドルを投じて、水素を利用する燃料電池自動車の開発を支援するプログラムを始めると発表した。

 また、6月16日には、エーブラハム米エネルギー長官とEUのビュスカン委員(研究担当)が、ブリュッセルで燃料電池などの関連技術の研究開発を、米国と欧州連合(EU)が協力して進める覚書に調印する。

 燃料電池分野で先行する日本に対して、米欧が追撃姿勢を強化し、技術開発から市場を見据えた各国間の主導権争いへと進みそうだ。今回トヨタグループが狙われたのは、燃料電池を巡る思惑がある。

 トヨタ自動車の直接出資も検討されたが、「イランを『悪の枢軸』の一角とするアメリカを刺激しかねない」との配慮から見送られたトヨタグループ主導のイラン国内の天然ガスを利用したGTL(ガス・ツー・リキッド)生産事業が進行中である。GTLは、DME(ジメチルエーテル)と並んで燃料電池用燃料として期待されている。

 日本人でありながら、カメレオンのようにだれかれ見境なく米国にすり寄るマザコンに我らの技術が守れるわけがない。今再び彼らは「北朝鮮問題重視のためのイランからの名誉ある撤退」なる不思議なキャッチコピーを登場させるのだろうか。このコピーが許されるとしたら、イランのアザデガン油田に匹敵するイラクの油田と天然ガス田のおみやげぐらいあってもいい。

 いつまでも、甘えるな〜 マザコン!

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