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傘かしげと現代人
(12月13日掲載)
http://www.sanin-chuo.co.jp/column/meisou/2002/11/13.html
東京のJR日暮里駅で先週末に、電車から降りる際、乗り込んできた男と肩がぶつかり、殴られた男性が重体になる事件が起きた。こうした出来事はここしばらくなかったが、デフレ不況もあって世の中はすさむばかりだ
▼この事件を耳にし、「傘かしげ」という言葉が頭に浮かんだ。先日来松した富士常葉大学教授の帆足養右さんがあるフォーラムで口にした。江戸時代、雨の日に狭い路地で擦れ違う際、たとえ自分がぬれても、傘の滴が相手に掛からないよう、相手と反対側に傘を傾け合った気配りのこと
▼ところが現代人は、相手の滴が自分に掛からないよう、傘を向けるのだという。帆足さんは「現代人は相手への思いやりが薄らいでいる」と指摘した。自分ならどうするか、と考えていたら、顔が赤くなった
▼傘を相手の傘より上にする人もいるかもしれないが、それでは解決にならない。確かに滴は相手に掛からないが、相手が同じ行動に出たら切りがないからだ。そこには相手も気配りすることへの配慮が欠けている。「傘かしげ」には暗黙の了解があった
▼このような江戸時代の思いやりの行動を「江戸しぐさ」という。その中には「肩引き」というのもある。混雑している際に、互いに右肩を引き、ぶつからないように擦れ違う。「肩引き」が今もきちんと残っていれば、日暮里駅の事件も起きなかっただろう
▼最近、リサイクル都市だった江戸の検証など江戸時代を見直す動きが盛んだ。思いやりや人情まで見習うというのは寂しい話だが、今やある程度必要かもしれない。肩が触れただけで殴るという「平成しぐさ」はどう語り継がれるのやら。(竹)