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(回答先: Re: ゾロアスター補遺(その3) 投稿者 ビルダーバーグ 日時 2003 年 6 月 12 日 11:16:57)
参考までに。
ゾロアスター教の主神アフラ・マズダー=バラモン教のアスラ(阿修羅)です。
つまり、アフラ(ahura)=アスラ(asura)なのです。
ゾロアスター教(拝火教)はゾロアスター(ザラスシュトラ)によって創始され
た宗教といわれていますが、その聖典『アヴェスター』の言語を一般にアヴェス
ター語と呼びます。古代ペルシャ語以前のペルシャ語ですね。
一方、バラモン教は創唱者なき民族宗教で、日本の神道と同じくインドの神道で
す。ただし、その教義は日本神道と違って高度の抽象性と体系性をそなえた神学
を生み出しました。ウパニシャッド哲学はその最たるものです。
バラモン教の聖典を『ヴェーダ』と呼びますが、そこに用いられているヴェーダ
語(サンスクリット語より古い言語)と、アヴェスター語とは、非常に近縁性の
高い言語だといわれています。インド・ヨーロッパ語族の中のインド・イラン語
派と一くくりにされるほどです。
インド・アーリア人とイラン・アーリア人とは、おそらく元をたどれば同じ民族
で、もともと同じ多神教を共有していたものと思われます。
しかし面白いことに、彼らは分裂後、相手の主神を自己の宗教の中では低い地位
に貶めました。あるいは、同じ神概念を一方は神聖なものとし、他方は邪悪なも
のとしたのです。
例えば、deva。インドでは、デーヴァは「神」を意味し、神聖なものを指します。
ところが、これに対応するアヴェスター語のdaeva(ダエーワ)は「悪魔」を意
味します。ダエーワは、破壊霊アンラ・マンユの不義を受け入れたため悪魔とな
った、とされているのです。
そして、ahura。ゾロアスター教の主神アフラ・マズダーの「アフラ」です。最
高神であり善神であることは言うまでもありません。
イランのhは、インドではsで表されます。ちょうど日本の関西のhが関東では
sに対応するのに似ています(「わかりまへん」と「わかりません」の対応。日
本では、sがhに変化した)。つまり、「アフラ」はインドでは「アスラ」に対
応するわけです。(asura は、サンスクリット語やパーリ語でもやはりasura で
す)
インドのアスラは、元は善神でしたが、インドラ神(帝釈天)等インド独自の有
力神の台頭によって、次第にその敵、悪魔、鬼神と見なされるようになりました。
ついに、血気盛んで闘争を好む鬼神という性格が定着しました。
こうした神格の相違には、インドとイランの近親憎悪、もしくは歴史的な反目が
背景にあったのかも知れません。
蛇足ながら、インド・アーリア人のバラモン教が、のちにインド被征服民の土着
信仰と融合して、ヒンドゥー教になったのは周知のところでしょう。
仏教は、紀元前5〜6世紀の原始仏教以来、部派仏教(いわゆる小乗仏教)、大
乗仏教、密教(金剛乗仏教)など様々に展開しましたが、部派仏教の多くの教典
が輪廻転生を教義に取り入れ、この中に五趣もしくは六道輪廻の教えが説かれ、
地獄道・餓鬼道・畜生道・阿修羅道・人道・天道という輪廻世界が描き出される
ようになりました(五趣輪廻では阿修羅界は独立した世界としては立てられてい
ません)。ここでは、アスラは闘争の象徴です。
阿修羅(あしゅら)というのは、asura の漢訳(音写)語です。
日本の奈良・興福寺にある有名な阿修羅像は、三面六臂(三つの顔と六本の腕)
をもつ、女性のように端正な顔の神像ですが、眉根を寄せた表情に闘争神として
の性格が表れているとともに、その美しさに善神であった頃の面影が宿っている
と見ることができるのではないでしょうか。
ひとりの神が、善神となるか邪神(悪魔)となるかは、人間次第なのでしょうね。