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「出会い系サイト規制法案」の審議が大詰めを迎えている。参議院内閣委員会(小川敏夫委員長)では3日、3時間半にわたって議論されたが、「なりすまし」による書き込みで無実の第3者が捜査対象となるケースをどのように防ぐのかなど、法案の問題点は残ったままだ。谷垣禎一・国家公安委員長も捜査の難しさを認め、法律関係者の一部からは「満員電車内での痴漢事件以上に、えん罪が頻発する危険がある」という声すら出ている。法案は修正もないまま、5日にも与党の賛成多数で可決される見込みだ。(太田 阿利佐)
■■「なりすまし」の書き込みで捜査対象に
「自分の携帯端末やパソコンから、第3者が児童を誘引する書き込みをしたら、本人の全く知らないうちに捜査対象となり、通信記録が調べられていることになる。これは通信の秘密の保護に抵触しないのか。なりすましによるえん罪の発生をどのように排除するのか」。3日の参院内閣委で行われた岡崎トミ子委員(民主)の質問に対して、谷垣国家公安委員長自らが答弁したが、明確な防止策は示されなかった。
いわゆる出会い系サイトに、買春など援助交際の相手方を誘う書き込みをした者を、児童(18歳未満)も含め処罰する規制「出会い系サイト規制法案(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案)」は、急増する買春事件に対応するため昨年秋から検討が進められ、3月には国会に提案というスピード法案だ。国会での議論などを通して、これまでにいくつかの論点が浮上している。
論点の一つは、児童買春禁止法では児童を保護の対象として処罰しないのに対し、出会い系サイト規制法案では買春に至らない誘いかけの段階で児童を処罰する。また、出会い系サイト(インターネット異性紹介事業)の定義が非常に広いこと▽誘いかけという表現に対する規制であり、隠語などの取り扱いが困難なこと▽なりすましの書き込みがあった場合、なりすまされた人物の通信ログなどが押収され、通信の秘密が侵害される可能性があること――などだ。
■■捜査の困難さ認める 谷垣国家公安委員長
特に「なりすまし」の問題は大きい。同法案の第6条では18歳以上の大人に対して「児童を性交の相手方として誘引する」だけでなく、「対償を示して児童を異性交際の相手方となるよう誘引する」ことを禁じている。実際に買春したかや、援助交際をしたかは関係ない。書き込みだけで、処罰(100万円以下の罰金)される。書き込みの連絡先として、誰かの電子メールアドレスや携帯電話番号を登録、記入しただけでも、その誰かが捜査対象になる可能性がある。
さらに書き込みに、「なりすまされた誰か」が普段利用している端末(職場のパソコン、放置した携帯電話)などが一時的に利用された場合、無罪の証明はさらに困難になる。第6条は、児童についても書き込みを禁止しているが、いじめの被害なども想定される。
谷垣国家公安委員長は3日、岡崎委員の質問に対し、「なりすましは他の犯罪でもありうるが、インターネットの場合は(なりすましが)より想定され、また捜査もなかなか難しい」と懸念を表明した。その上で、捜査の手順について「不正誘引の書き込みについて、サーバーを特定し、通信記録を差し押さえ、端末を特定する。端末を実際に利用した者を特定するために、端末の契約者や利用時間を特定することになる」と説明。さらに「被疑者の特定に困難さがあることについては、配慮が必要だ。他人になりすまして書き込みをするケースに対して、より慎重な捜査手法を確立していかなければならない」と述べ、えん罪の防止に現状では「慎重な捜査」しか手立てがないことを明らかにした。
■■買春被害児童 書き込みあれば処罰対象
児童買春禁止法との整合性についても、議論はすれ違ったままだ。3日、警察庁の瀬川勝久・生活安全局長は、「この法律は、児童買春という行為に至る前に児童に対して措置を講じて犯罪被害を防止し、またこうした行為(書き込み)のはんらんによるほかの児童への悪影響を阻止するものだ」と説明。外務省も同日、「その悪質性に鑑み、誘引行為を処罰するもので、児童買春の前段行為を処罰するものではない。したがって、(被害児童を処罰しないとした)ストックホルム宣言の趣旨には反しないと関知している」と答弁している。 しかし、吉川春子委員(共産)は「これまでは、児童買春後、大人は処罰されたが、少女は処罰されなかった。しかし今後は、少女側が書き込みをした事実があれば、少女は身柄を拘束のうえ少年院に送致される可能性もある。現に児童買春の被害者となっている少女を罰するのは、国際法の精神を踏みにじるものだ」と強く反発した。
また、黒岩宇洋委員(無所属)も「リアルの世界では、セックスを伴わない援助交際は犯罪でもなく、禁止すらされていないのに、インターネットというだけで、書き込んだだけで処罰対象になる。とても乱暴だ」と主張した。
■■法案通過は「権力への警戒感の欠如」
法案については、今なお、人権問題に詳しい法律関係者らから批判の声が上がっている。「誰のための人権か〜人権擁護法案の本当のねらいは何か〜」などの著書がある梓澤和幸弁護士は「第6条に定められた犯罪を構成する要件が余りにもあいまいで、たった1度の書き込みも捜査対象になる。ネット上に児童を誘う書き込みがあるだけで現行犯と認定されれば、令状なしに逮捕される可能性もあるのではないか。警察当局は、そのようなことはしないと主張するかもしれないが、法案を見る限り、法律上可能だ」と力説する。
さらに「『どこかのサイトに、特定の人物のメールアドレスや携帯電話番号と児童買春の誘いかけがあった』ということを口実にした、公権力による通信ののぞき込みもないとは限らない。このような法案が簡単に国会を通過してしまうのは、権力に対する警戒感の欠如の現れだ」と厳しく指摘している。
しかし、同法案は5日の審議を経て、同日にも採決・可決され、早々に成立する見通しだ。国会の会期延長が未定で日程にゆとりがないうえ、出会い系サイトをきっかけにした事件の急増という現実を受けて、同法案を批判する世論が高まらないことが背景にある。
法の運用は適切に行われるのか、捜査の行き過ぎは本当に起きないのか。児童保護の美名の下、権力行使の拡大の可能性を十分チェックできずにいる国会の責任は重い。
【関連サイト】
[衆議院]
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index.htm
[参議院]
http://www.sangiin.go.jp/index.htm
[出会い系サイト規制法案・全文]
http://www.mainichi.co.jp/digital/zenbun/deai/01.html
[出会い系サイト規制法案、参議院でスピード審議か]
http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200305/30/3.html
[出会い系サイト規制法案、対象サイトの基準判明]
http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200305/15/1.html
[衆院委で出会い系サイト規制法案可決 なりすましの被害発生も]
http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200305/15/2.html