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【モスクワ=古本朗】低威力の核爆発により地下施設を破壊する新世代核兵器の開発がロシアで進んでいる事実が、このほど露核産業最高幹部の証言で明らかになった。米政府も21日、同様の低威力核兵器の研究・開発に上院の承認を獲得したばかりで、今回の証言は、水面下で進展する21世紀の核開発競争の実態を浮き彫りにするものだ。
低威力核兵器の開発推進を本紙に証言したのは、元露原子力相で、現在も「原子力省・戦略安定研究所」所長として、核産業界を指導する立場にあるビクトル・ミハイロフ氏。
同氏によると、開発中の兵器は、空中から深さ数十メートルの地層へ突入、鉄筋コンクリートで防護された地下施設を、核爆発の地震波で破壊する能力を目指す。威力はTNT爆薬換算で「数十トン―2、3キロ・トン」といい、かつて広島に投下された原爆(約15キロ・トン)より小さい。同氏は「開発は約10年前に始まった」とする一方、弾頭を積む運搬手段や使用目的は明確にしなかった。だが、米国は同様の低威力核を反米「ならず者国家」の大量破壊兵器の地下貯蔵庫などを破壊する手段として検討中で、ロシアも同様の目的を想定している模様だ。
同氏は、アフガニスタンやイラクで米軍が、地下破壊用に使用した通常型の地中貫通爆弾「バンカーバスター」では破壊力不足だった、と指摘。「低威力」とはいえ核ならば十分な破壊力が得られる反面、「核爆発が遮蔽(しゃへい)あるいは半ば遮蔽された条件下で発生する」ため、地上の放射能汚染面積は限定され、「比較的、環境を汚さない核兵器だ」と強調した。また、核実験による性能検証については「必要ない」との見方を示した。
一方、米国は1996年から、威力をTNT換算300トン―10キロ・トンと 調節可能で、地下2―8メートルへ突入して爆発するB61―11地中貫通核爆弾をB2爆撃機に配備、2年前の「核体制見直し」(NPR)報告で、さらに新しい低威力核開発の可能性を示した。米上院は今月21日、政府の要請に基づき、5キロ・トン以下の低威力核の研究・開発を禁じていた93年以来の規定を、「生産段階移行には議会の承認を要する」との条件付きで撤廃している。
今後、米露間で低威力核の開発競争が激化する気配だが、問題の1つは、これまで破壊力が巨大過ぎ、深刻な放射能汚染を引き起こすため「使えない兵器」だった核が、低威力化などにより「使える兵器」と目される傾向が強まる点だ。また、大量破壊兵器施設の破壊を目的とすることで、使用正当化の口実も見つけやすくなりかねない。
(2003/5/29/03:04 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030529i301.htm