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【エルサレム樋口直樹】イスラエル政府は２５日、パレスチナ独立国家樹立への指針となる新和平案「ロードマップ」の受諾を閣議決定した。イスラエルがパレスチナ国家の樹立を容認するのは１９４８年の建国以来初めてで、パレスチナ自治政府誕生の契機となった９３年の「オスロ合意」（パレスチナ暫定自治合意）以来の歴史的転換点となる。ただし、パレスチナ難民がイスラエル領などに戻る権利（帰還権）は認めないとの留保条件を付けており、パレスチナ側はこの点に反発し、全面履行を求める姿勢を示した。
ロードマップの受け入れを求めてきたブッシュ米大統領は今回の正式受諾を機に、シャロン・イスラエル首相やアッバス自治政府首相を交えた首脳会談を開催し、ロードマップの早期履行などを促す方針。また、シャロン、アッバス両首相の２度目の直接会談が早ければ２６日にも再開され、過激派対策などで意見を交換する見通しだ。
閣議では、連立内閣を構成する右派・国家宗教党や国家統一党の閣僚が、ユダヤ人入植地の凍結や自治区からの軍撤退を求めるロードマップの受諾に強く反発。また、過激派の武装解除やパレスチナ難民の帰還権放棄をロードマップ受け入れの条件としてきた最大与党リクードからも慎重意見が相次いだ。しかし、ロードマップ拒否は最大の同盟国である米国との関係悪化につながるとのシャロン首相の説得が功を奏し、２３閣僚のうち賛成１２、反対７、棄権４の小差で受諾を決定した。
一方、イスラエル建国などに伴って周辺国に離散したパレスチナ難民がイスラエル領内などに戻る帰還権については、全閣僚の半数を超える賛成１６で認めないとする決議を採択。大きな留保条件を突きつけた。
先にロードマップの受け入れを表明しているパレスチナ自治政府のアッバス首相は２５日、「ロードマップの変更は受け入れられない」と述べ、イスラエル側に全面履行を強く要求した。
◇ことば ロードマップ
米国と欧州連合（ＥＵ）、国連、ロシアの４者で構成される通称「カルテット」が４月３０日、パレスチナ紛争の最終解決に向けイスラエルとパレスチナ自治政府の双方に示した新和平案。０５年のパレスチナ独立国家建設とイスラエルとの平和共存について具体的なスケジュールなどを示した。
計画は３段階に区分され、今年５月末までの第１段階でパレスチナ側が暴力の即時無条件停止を宣言。イスラエルは治安が改善された段階で、００年９月の大規模衝突以降にヨルダン川西岸やガザ地区で占領した地域から軍を撤退させ、すべての入植活動を凍結する。
今年６月から１２月までの第２段階で暫定的な国境線を持つパレスチナ国家を樹立。０４〜０５年の最終段階でパレスチナ国家とイスラエルとの間で恒久的な地位協定を締結するとしている。
◇ことば 帰還権
４８年のイスラエル建国と第１次中東戦争などでイスラエルから周辺アラブ諸国などに逃れたパレスチナ難民の数は約４００万人にのぼる。パレスチナ側は国連安保理決議１９４に基づく全員の帰還権を主張。イスラエル側は自国内に難民が大量に流入し、人口構成が変わることなどを恐れており、ロードマップ内に難民帰還権を認めないことを明記するよう、米国に求めていた。
［毎日新聞５月２６日］ ( 2003-05-26-00:57 )
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