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アメルさんの隠し部屋見取り図
隠し部屋の入口の穴に入ってみせるアメルさん。普段は石のふたがしてあった=ヌマニヤで
バグダッドが陥落した翌日の先月10日、同市の南東180キロにある農村の民家で、床下に掘られた50センチ四方の穴から男性が救出された。フセイン政権に追われ、穴に入ったのは81年12月。家族以外知られることなく、近所の人たちも死んだものと思っていた。21年4カ月の穴蔵生活の末、自由と太陽の光をようやく手に入れた。
男性は、チグリス川のほとりにあるヌマニヤ地区に住むジュワド・アメルさん(48)。バグダッド大学生だった70年代末にイスラム教シーア派の非合法組織アッダワ党に参加。その後、兵役中に組織が摘発を受け、逃走生活が始まった。
自宅に逃げ込んだアメルさんは、まず、6畳ほどの寝室の奥の部分を土壁で仕切り、隠し部屋を急造。床下に入り口の穴を掘り、その中に入った。26歳だった。
隠し部屋は幅60センチ、長さ2メートルほどで、窓はなく、天井からかすかに漏れる明かり以外は真っ暗。室内に直径1センチほどの、のぞき穴や、トイレ、井戸を掘った。入り口の穴から母アジザさん(74)が毎晩差し入れる食事だけで生きてきた。
支配政党のバース党員が何度も自宅を捜索に来た。家族は近所の人に「アメルの行方は分からない。処刑されたのだろう」と言い続けた。数年前から同居している弟の妻さえ、アメルさんの存在を知らなかったという。
最もつらかったのは5年目の86年。イラン・イラク戦争に徴兵された弟が戦死した。葬儀に集まった親族の声を聞きながら静かに泣いた。だが、外に出て逮捕されれば、自分だけでなく家族も殺される。
支えになったのはラジオだ。BBCのアラビア語放送を一日中ヘッドホンで聞いた。時には弱気になる母に、対イラク包囲網が狭まっている様子を言い聞かせ、「フセイン政権は崩壊する。おれは必ず自由になる」と励まし続けた。差し入れの廃品を改造して電熱器や扇風機を自作し、コーランを何千回も暗唱した。
救出時、アメルさんは、肌が白く、筋肉が退化し、うまく歩けない状態だった。歯はすべて抜け落ちていた。日光がまぶしすぎ、数日間はサングラスが手放せなかった。それ以外は医師も驚くほど異常は見あたらなかった。
突然姿を現したアメルさんに、駆けつけた村人は抱き合って泣いた。信じられず「死人が生き返った」と騒ぐ人もいた。
アメルさんは言う。「本当に長かった。外へ出て、みんながすごく年をとったことと、死んだ人や生まれた子どもがいっぱいいるのに驚いた。サダム(フセイン大統領)がどこかに隠れているとしたら、きっとこの自由の大切さを身にしみて感じているはずだ」 (05/21 15:41)
http://www2.asahi.com/special/iraqattack/TKY200305210206.html