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核心 : 南米に吹く“離米”の風
十八日に投票予定だったアルゼンチン大統領選は正義党の中道左派勢力、ネストル・キルチネル氏(サンタクルス州知事)が圧倒的な世論の支持を背景に無投票で当選を決めた。南米では、昨秋にブラジルで左派系政権が誕生したばかりで、左派旋風の風力が強まっている。イラク戦争で一段と鮮明になった独善的な米国の姿勢に対する反発が、左派勢力への追い風になっているようだ。
(ブエノスアイレスで、大島宇一郎)
◆不戦勝ち
決選投票の結末は、アルゼンチンの選挙法が想定していない異常事態だった。
四月末の第一回投票で、得票率24・45%を獲得し首位だった正義党党首のメネム元大統領が突然出馬断念を宣言。これを受け、22・24%の小差で二位だったキルチネル氏の当選が決まった。
メネム氏の米国寄りの姿勢や汚職体質をきらった反メネム勢力がキルチネル氏支持に結集したことが大逆転の主因だ。キルチネル氏の後ろ盾であるドゥアルデ大統領が「イラク戦争反対」を鮮明にしたことも、その流れを加速した。十八日の投票に持ち込めば、メネム氏の得票が第一回投票の得票率を下回る恐れまであり、メネム氏は出馬辞退を決断した。
アルゼンチン経済はペソ切り下げに伴って、農産物などの輸出が好調で、下げ止まる兆しを見せ始めた。しかし失業率は17・8%の高水準で、月間七百二十三ドル以下で生活する低所得者層は国民の57・5%を占め、さらに増加中。貧富の差は拡大傾向にある。
ケーラー国際通貨基金(IMF)専務理事によれば、経済情勢が「ぜい弱な状態」に変わりはない。悪化する生活環境に対する民衆の不満が左翼色の強い政権支持に集まった。
◆波乱含み
二〇〇一年末の債務不履行(デフォルト)宣言で、顕在化した巨額の対外債務に苦しむアルゼンチン。地元紙は残高が千三百億ドルもあると報じている。
キルチネル新大統領の初仕事は八月末に切れるIMF緊急融資の切り替え問題への対応。新大統領は、既存融資について元本の削減や利子切り下げを要請中で、国家予算の四分の一を占める利子負担の軽減を図り、浮いた財源を国内に投資したい考えだ。
これに対して、IMF最大の出資国である米国は「新政権には変革の機会が十分ある」(テーラー米財務次官)などと、融資の前提として公共料金引き上げなど、国民負担による財政立て直しを求める声を強めた。
だが前政権の経済政策を継承する方針のキルチネル新大統領は、IMFが求める緊縮財政や国民負担の急増には慎重姿勢。
しかも、これまで対米関係を構築する努力の形跡がなく、「親米でないことははっきりしている」(クラリン紙)といい、融資交渉は波乱含みだ。
一方で、南米の経済情勢は、いつ破裂するか分からない“爆弾”のような状態が続いており、米経済を直撃すれば、たちまち世界経済にも悪影響を及ぼしかねない。
◆軸足移す
「米国と特別な関係は予定していない」
キルチネル新大統領は選挙期間中の八日、続投を決めていたラバニャ経済財政相を伴って、ひそかにブラジルを訪問。ルラ大統領に対して、対米関係では距離を置く考えを明言した。ブラジルなどとの南米南部共同市場(メルコスル)を重視する一方、対米関係でも共同歩調をとる姿勢を鮮明にしたわけだ。
アルゼンチン国内でも「まず南米が団結して米国に対する発言力を高める必要がある」(経営社会科学大学・バッソ経済学部長)と支持する意見が強まっており、米国の“裏庭”だったはずの南米の米国離れがはっきりしてきた。南米を取り込んだ米州自由貿易圏(FTAA)構想を推進してきた米国にとって、南米戦略の練り直しが急務となっている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030520/mng_____kakushin000.shtml