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“素人集団”執念実る、経産省立ち入りで不正輸出摘発
東京・大田区の商社「明伸」が今月8日、核兵器開発にも使える機械を北朝鮮に不正輸出しようとしたとして、警視庁公安部に捜索された。摘発の裏には、従来にない経済産業省の積極姿勢がある。兵器関連の不正輸出事件では、公安部に促されて形式的に告発するのが常だった同省が、今回は自ら異例の立ち入り検査を実施し、不正を突き止めた。ミサイル、核。北朝鮮の脅威が迫り、ようやく拍車がかかってきた〈危機管理〉の内幕は――。
■勉強会■
先月初旬、経産省の一室で、小さな勉強会が開かれた。講師役の幹部は、同省では数少ない不正輸出の立ち入り検査経験者。“生徒”は、数日後に「明伸」への立ち入りを控えた同省貿易管理部の6人の職員だ。
「(立ち入り先で)ゴミを捨てに行く者がいたら、証拠隠滅の恐れがある」。検査時の目配りのポイントからロッカーの開け方まで、証拠収集のイロハが徹底された。ふだんは行政指導で輸出規制を行う職員たち。外為法の輸出令で立ち入り検査の権限が与えられてはいるが、「『伝家の宝刀』を抜いたことはなく、検査に関しては素人集団」と経産省幹部は明かす。
これに対し、「明伸」は北朝鮮貿易を専門とする商社で再三、不正輸出の疑惑が指摘されてきた。10年ほど前にも警察当局が兵器関連機器の調達情報を得て内偵捜査をしたが、証拠をつかめなかった。一筋縄ではいかない。
しかし、チャンスは巡ってきた。昨年11月、同社は北朝鮮に直接、今回と同じ「直流安定化電源装置」を輸出しようとしたのを同省に指摘され、断念したばかり。改めて税関に出された書類では、輸出先は香港経由でタイの通信企業とされたが、同省は「最終的には北朝鮮に渡る」と確信を持っていた。同省は不正輸出ルートに当たる香港やタイでの同時検査の準備も進めた。
■告発■
4月8日昼、職員は明伸本社の立ち入り検査に着手した。ほぼ同時に、タイでは経産省の意向を受けた日本大使館員が書類上の輸出先の通信会社に足を運んだ。「北朝鮮の商社から頼まれて、輸入先になった」。前触れもない突然の聴取に、タイ企業幹部が思わず漏らした。香港では、香港当局が停泊中の貨物船に協力依頼に基づいて踏み込み、装置を差し押さえていた。
一方、明伸では、社長が職員に追いつめられていた。苦し紛れに「マカオの企業に頼まれた」などと話すと、すぐに職員がマカオの日本領事館に連絡し、確認を求める。タイと香港の状況も刻々と携帯電話で伝えられ、うそは暴かれていった。
本当の輸出先の北朝鮮の商社は朝鮮労働党の傘下で、米国も機器の流入先として警戒していた存在だったが、タイ経由のルートは未把握。検査結果を聞いた米国務省の幹部は、歓声を上げたという。
「本当にできるのか」。経産省から立ち入り前に相談を受けた当初は、“素人集団”への危惧(きぐ)をあらわにした警視庁も、4月下旬には検査結果に基づく告発を受けた。
■正念場■
一昨年12月の北朝鮮工作船による銃撃事件では、レーダーなど船の主要な精密機器が日本製だったことが分かり、北朝鮮対策の甘さに国際批判が強まった。
今回の不正摘発は一応、その批判にこたえた形となった。事件概要は19日に韓国・釜山で開かれるNSG(原子力供給国会合)でも報告されることになり、経産省幹部は「さらに国際ネットワークを強化し、北朝鮮向け輸出を取り締まる」と意気込む。
現代コリア研究所の佐藤勝巳所長も「これまでは全く対策が取られなかったが、第一歩を踏み出したという意義がある」と言う。
最初の一歩が大きな一歩だったのかどうかは、これからの成果次第で決まる。
(2003/5/18/03:05 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20030518i301.htm