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増田俊男の時事直言!(2003年5月15日号)
http://www.luvnet.com/~sunraworld2/jiji-chokugen/jiji_191.htm
リヤド(サウジアラビア首都)爆破の真相
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リヤド市内で星条旗が掲げられていた三棟のビルが同時に爆破された。周到に準備
されたテロである。注目すべきは、タイミングが絶妙であった点である。アメリカ主
導で進められてきたイスラエル・パレスチナ和平「ロードマップ」協力再確認の為、
パウエル米国務長官がリヤドを訪問する数時間前であった。もし何事もなければパウ
エル長官はサウジの協力を得てロードマップは確実なものになっていただろう。アメ
リカ主導の中東和平政策(ロードマップ)は当事者のパレスチナ自治機構、アラブ諸
国、EU、ロシア、などから支持を集めていたが、肝心のもう一方の当事者であるイス
ラエルは執拗に反対していた。そのためサウジをはじめ中東諸国はアメリカに対しイ
スラエル説得を強く要請しており、来週シャロン・ブッシュ会談で決着をはかること
になっていた。もし今回の事件無しに両首脳会談が行われたならシャロンは苦境に立
たされることは確実だった。イスラエルがさらにロードマップを拒否すれば、世界か
ら孤立してしまう。かといって受け入れるなら隣りのならず者国が国際主権を持つ事
になる。単なるテロリストからの攻撃と主権国家からの攻撃ではイスラエルの安全に
とって天地ほどの違いがある。パレスチナ自治機構が国際主権を握れば、今日まで好
き勝手に行えてきた「ならず者」(パレスチナ)に対する報復攻撃は国連安保理の許
可なしには出来なくなる。だからイスラエルはテロが続行している現状でロードマッ
プを受け入れるわけにはいかないのである。
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歴史は繰り返す
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かつてイスラエルにとって全く同様の危機が迫ってきたことがあった。パレスチナ
自治政府に国際主権を与えることを決めたオスロー合意の期限1999年が迫って来た時
である。
ところが突如1998年8月、タンザニアとケニアの米大使館が同時爆破され、犯人はア
ルカイダの仕業とされ、パレスチナ自治機構のアラファトもテロリストであったこと
から、オスロー合意は反故となり、イスラエルは国難を免れたのである。イスラエル
の第二の危機は前述の米大使館爆破容疑者9名(ビン・ラーディンの手下と言われる)
が2001年9月12日NY地裁で裁かれることが決まった時である。爆薬の化学分析、爆破直
後のイスラエル軍の行動、等々から犯人はアルカイダではないことが証明される手は
ずになっていたからである。幸い前日9月11日NY同時多発テロが勃発し、WTCで翌日の
裁判の打ち合わせ中の弁護団、証拠もろともこの世から消えてなくなってしまったと
言う。第三の危機は今回の中東和平ロードマップであった。アメリカはイラク戦争後
サウジから米軍撤退を打ち出すことによりアラブ諸国の大半からイラク戦争とロード
マップの支持を取り付けていた。米軍のサウジ撤退はビン・ラーディンがサウド王家
に強く求め続けていたことであった。
ところが今回の爆破事件でブッシュは「容赦ない犯人の捕獲と処罰」を宣言し、米
軍の即時撤退はご破算となった。アメリカはパレスチナが歓迎するロードマップと引
きかえにパレスチナ自治機構議長のアラファトの退陣を求め新米政権樹立に成功した
が、一方パレスチナ過激派の対イスラエルテロは止まらず、イスラエルにロードマッ
プ不支持の正当な理由を与えていた。アメリカにとってロードマップはもとより中東
の主導権を握るための方便でしかない。拙著「目からウロコのマーケットの読みかた」
(アスキー)で解説しているように、イラク占領後のアメリカの狙いは中東の混乱と
第五次中東戦争である。利益共同体イスラエルの安全保障に致命的なロードマップな
ど無用。サウジからの米軍撤退も方便。今回の「アルカイダの仕業?」がロードマッ
プと米軍サウジ撤退を反故にしてくれたというわけ。ビン・ラーディンはサウジの王
家を脅迫してまで米軍撤退を求め続けている。
アルカイダが米軍のサウジ撤退を反故にするリヤド爆破を実行する理由はない。今
後アメリカが何故ビン・ラーディンとサダム・フセインを生かしているか、その理由
がだんだんわかってくるだろう。