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フセイン政権崩壊:米、石油めぐり思惑露骨  [毎日新聞]
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投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 10 日 04:01:41:


 フセイン政権崩壊から9日で1カ月。米国は同日、対イラク国連経済制裁を解除するための新たな安保理決議案を英国、スペインとともに共同提出する。イラクの石油輸出の制限を外し、その収入を戦後復興の財源にしようという「戦勝国」らしい発想だ。ロシアなどが抵抗しているが、その裏にも利益確保の思惑があり、利権の奪い合いの様相が一段と強まっている。

 ■米国 国連軽視に反発の恐れ

 米政府は制裁解除を求める理由について「制裁はフセイン政権による大量破壊兵器の開発・取得を阻止するためだった」「その政権はもはや存在しない」「イラク国民のために経済復興が必要であり、石油収入を充てるのが合理的だ」――といった説明をしてきた。

 これは一応、説得力ある論理であり、制裁解除問題は、戦争前の対イラク武力行使容認決議をめぐる論議ほどには深刻化しないだろうという見方が一般的だ。

 ただ決議案は「米英優先、国連軽視」の性格が、あまりに鮮明だ。米英がイラク占領統治の主体であることを明記し、その統治主体を意味する「オーソリティー」(権威国、支配者)が案文中に9回も登場する。

 例えば、石油や天然ガスの輸出代金はイラク中央銀行に設けられる「イラク支援基金」の会計に入るが、同銀行は既に米国人が運営している。同基金の諮問委員会を構成する国際通貨基金(IMF)や世界銀行が米国の影響下にあることは周知の事実だ。

 さらに、同基金からの支出は「オーソリティー」の管理下で行われることを明記。「オーソリティー」による統治は最低1年間保証され、安保理が拒否しない限り継続するという項目もある。

 一方、国連は人道支援、復興支援、イラク暫定政権の支援という分野においてのみ「死活的な役割」を果たすことになっている。しかし国連事務総長が任命する「特別調整官」は、決議案中に3回しか登場せず、「死活的な役割」を持つとは考えにくい。

 決議案がこのまま採択されれば、米英のイラク統治と石油資源管理に他国が口を出す余地はほとんどなくなる。国連が主導している現行の「石油・食料交換計画」で利益を得ているロシアは、戦争の大義名分となった大量破壊兵器の問題を決議案が棚上げしている点を批判する見通しだ。

 イラクの戦後復興には、米政財界も熱い視線を注いでいる。チェイニー副大統領と関係が深いハリバートン・グループが油田復旧を受注、シュルツ元国務長官が役員を務めるベクテル・グループがインフラ復旧を受注したのも、その一例だ。

 こうした状況が続けば、改めて「何のための戦争だったのか」という疑念が特にアラブ世界などで深まり、反米感情をかきたてる恐れもある。

【ワシントン中島哲夫】

 ■イラク バース党員の処遇課題に

 バグダッドなどイラクの主要都市では、官公庁で復職希望者の登録が始まり、警察官が街頭の交通整理に戻るなど、行政機能は徐々に回復に向かっている。その一方で、旧政権政党・バース党員の処遇や公営企業の統廃合など、新生イラクが抱える難題も明確になりつつある。

 「フセイン体制への逆戻りは許さない」。7日、バグダッド市内のホテル前に、医師数十人が集まった。バース党員の保健省元幹部が同省に復帰することに抗議するデモで、医師数人が同ホテルで作業する米復興人道支援室(ORHA)の担当者と元幹部に詰め寄った。元幹部は終始、押し黙ったままだった。

 復興作業を取り仕切る同支援室は、電気、水道などライフラインの復旧、治安確保を当面の最優先課題とする。各省庁に管理委員会を設置、米英関係者をアドバイザーに据えている。復職希望者は面接後、職員登録を行い、元幹部クラスを委員会責任者に登用するケースもある。この際、かつて諜報ちようほう活動に関与していなかったことを確認するとされるが、関係筋は「復帰する職員が増えれば増えるほど、選別は難しくなる」と話す。

 保健省と同様の現象が起きているのが鉱工業省だ。同省は化学薬品や食品、機械など計52の国営企業を抱えるが、複数の国営工場で工場長の復帰に反対するデモや集会が発生。同省管理委員会のモハメド・アルガイリナイ氏は4日の会見で「バース党員だからといって元幹部を排除すれば、管理能力を持つ者が皆無になってしまう」と苦しげな表情を浮かべた。

 自由主義経済への転換も高いハードルだ。多くの工場は従来、採算や住み分けを無視して操業してきたが、今後は統廃合、民営化が必要になる。鉱工業省に関係する労働者は約10万人。アルガイリナイ氏は「大幅な職員整理が必要。外資導入で新たな産業を興してから吸収したい」と語る。

 同支援室の作業計画には、国防省や内務省、情報省の復興は当面、想定されていない。関係筋は「警察官も全員の復帰は無理」と見る。軍人も含めた失業者問題は今後の大きな不安定要因の一つになっている。

 ただ、同筋は「フセイン政権崩壊後、発電所や水道局などでは直ちに職員が職場に戻って来るなど、イラク人の職業意識の高さを感じる。行政機能が軌道に乗るまで時間はかかるまい」と述べ、前途を悲観視していないことを強調している。

【バグダッド小倉孝保、竹之内満】

 ■投降、拘束の要人は19人に

 4月9日のバグダッド陥落後、米軍が指名手配したイラク要人55人のうち、米軍に投降、拘束された要人は19人に上る。米軍はフセイン大統領を筆頭に、要人の重要度を55位までつけたが、これまで拘束された要人で最も順位が高いのは10位。フセイン大統領をはじめ、長男のウダイ氏、二男のクサイ氏らの行方は依然として不明だ。

 拘束された主な要人は、アジズ副首相やアミン国家監視局長、サーディ大統領顧問、フセイン大統領の異父弟のワトバン元内相、バルザン元国家情報局長、「ミセス炭疽たんそ菌」の異名を持つ女性科学者、アマシュ氏ら。このほか、80年代末にクルド人への化学兵器使用を命じたとされるマジド元国防相は死亡したとみられている。【外信部・高橋宗男】

[毎日新聞5月10日] ( 2003-05-10-01:51 )

http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20030510k0000m030122000c.html

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