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◆軍核保有国としての北朝鮮
【 二〇〇二年秋以降問題化してきた北朝鮮危機を簡単に振り返ってもらいたい。】
二〇〇三年四月下旬、北京において、米中朝間で北朝鮮問題をめぐる交渉の条件についての話し合いが行われた。これまで、北朝鮮側は、アメリカとの二国間交渉を主張し、一方ワシントンは、日韓、そしておそらくはロシアも交渉メンバーとする多国間協議を求めてきた。
ここにきて、双方ともある程度の柔軟性を示すようになった。北朝鮮は、アメリカとの直接交渉を求めつつも、中国がホスト役を務めることを認めると発言しだし、一方ワシントンも、交渉は多国間交渉でなければならないとしつつも、中国が重要な役割を果たすことを受け入れた。今後北朝鮮問題をめぐる交渉には、米中だけでなく、少なくとも、韓国と日本を関与させる必要がでてくるだろう。
こうして米朝は曲がりなりにも交渉に入ったが、それは今後の交渉の道のりが険しいことを予兆するものとなった。北朝鮮が核兵器の保有を公式に認めたからだ。アメリカ側は、問題解決の条件として、北朝鮮が自らの核開発計画を「検証可能な形で、完全かつ不可逆的(=二度と再開できないように)解体する」ことを求めた。一方、北朝鮮側は、北朝鮮を攻撃しないという安全保障上の保証、主権の尊重及び自国と他の世界の貿易に関する不干渉の確約をアメリカに求めてきた。
◆今後の交渉はどうなる
【表面的には、双方の条件は両立できるようにも思えるが。】
相互の不信感が非常に大きいことが、これまでも最大の問題だった。ブッシュ政権は、(対北朝鮮援助と核開発計画の凍結を取り引きした)一九九四年の枠組み合意を平壌が踏みにじっていると考えている。平壌は特定の施設や計画を閉鎖・凍結したものの、他の方法で秘密裏に核開発を試みてきた、と。
一方北朝鮮は、アメリカは「相互に敵対的な意図を持たない」とした九四年の共同声明を踏み外していると考えているようだ。平壌は、「ブッシュ大統領の発言然り、アメリカはさまざまな手法で、北朝鮮に対する強い敵意を露わにしている」と反論する。
質問に戻れば、あなたが言うように、双方が示している条件は、ある意味では両立できるかもしれない。だが、そのためには、米朝がともに「相手が条件を守り、互いの国益を犯さないこと」を確信する必要がある。そのような信頼関係は米朝間には存在しない。
【報道によれば、北朝鮮の政権交代を求めるペンタゴン文書が存在するようだ。ワシントンの高官の多くが、金正日政権を崩壊させるのが好ましいと考えているのだろうか。】
「北朝鮮での政権交代が実現しない限り、いかなる合意をとりまとめても無駄だ、現在の北朝鮮の政権は信用できない」と考えている政府高官は数多くいる。ただし、文書が実際に存在するかどうか、その意図が何であるかについては、私には分からない。
政権を交代させることは、相手国の人々の行動を変化させることに他ならない。いずれにせよ、ブッシュ大統領は、全ての選択肢を検討すると明確に示唆しているし、他の選択肢が尽きた場合には、最終的に武力攻撃を検討するであろう政権内の集団が存在するのも事実だ。
もっとも、現段階では外交路線が武力行使よりもはるかに好ましい。なぜかは、現実を考えればわかる。例えば、北朝鮮はいざとなれば、ソウルを壊滅状態に陥れ、数十万の人々に犠牲を強いるだけの通常戦力を持っている。北朝鮮はイラクではないし、われわれが問題を解決するには、ソウル、東京、北京、モスクワなどのパートナーと協調する必要がある。だが、こうしたパートナーたちは、そのような武力行使路線に反対しているし、これまで、「妥当な保証があれば核兵器を放棄する」という北朝鮮側の提案を十分に試すような交渉をアメリカは行っていないと考えている。
◆対朝敵対路線をまず放棄せよ
【北朝鮮の核開発計画を解体させるために、ブッシュ政権は何を試みるべきだろうか。】
決してやってはならないのは、この二年間のワシントンの政策、つまり敵対政策を今後もとり続けることだ。敵対路線をとる必要はない。
【(あなたの言う敵対路線とは)、例えば、ブッシュ大統領の二〇〇二年の一般教書演説、つまり、イラク、北朝鮮、イランを「悪の枢軸」と呼んだ演説のことか。】
それも含まれるし、ブッシュ政権が、「米朝が敵対的な意図を互いに抱かないことを約束した二〇〇〇年十月の共同宣言は支持しない」とした表明して以降の一連の対朝声明のことだ。
ワシントンは本気で北朝鮮と交渉する気があるのかどうか、私は心配している。「いかなる合意も、国際社会を構成するその他の諸国の参加と各国の利益を統合したものでなければならない」とするブッシュ政権の立場に私も異論はない。たしかに、現政権が言うように、これは、アメリカと北朝鮮だけの問題ではない。だが一方で、米朝間の対立が突出して問題化しているのも事実であり、国際社会の文脈を踏まえた上での、米朝間の了解が最低限必要になる。北朝鮮側が、「われわれを脅かしているのは国際社会ではなく、アメリカだ」と主張し、アメリカからの(安全保障上の)保証が必要だと主張しているのもこのためだ。
だが、有り体に言えば、私も北朝鮮に「多国間枠組みを受け入れなさい」と呼びかけるだろう。国際社会による保証でもあなたのためになると説得すべきだろう。米中間の三国間交渉を受け入れたとはいえ、いまのところ、平壌が「多国間枠組みが役に立つ」とみている様子はない。
ワシントンは、北朝鮮との対話を行い、アメリカが敵対的な意図をもっていないことを伝えるとともに、核開発計画を解体する必要があること、そしてこれが絶対条件であることを相手に認識させる必要がある。
だが、そのためには、ブッシュ政権が二〇〇二年の十月以降とってきた敵対路線を改める必要もある。「九四年の枠組み合意を踏みにじって行ってきた悪質な計画をまず放棄しなさい。そうすれば、今後についても話し合ってもよい」とブッシュ政権は表明してきた。
しかし、相手が、将来がどのようなものになるかについてのイメージを描けるような含みも持たせるべきだろう。たしかに、合意を破って北朝鮮側が手にしたものについては、何の「見返り」も与えることなく、核開発計画を解体させるのが妥当な路線だ。しかし、そうすることが最終的に自国の国益になると平壌が判断しないかぎり、平壌が核開発計画の解体に応じるとは考えにくい。
【現在のところ、アメリカ政府は、核解体に応じた場合の北朝鮮への見返りがどのようなものか、具体的にコメントをするのを避けているようだ。】
そのとおりだ。「将来の北朝鮮との関係がどのようなものになるか、われわれは大胆な構想を持っており、そのなかには前向きな要素が数多く含まれている。だがわれわれは、君たちが合意を破って手にしたものをまず解体しない限り、そうした未来像について話し合うつもりなどない。これに応じれば話あっても良い」。ワシントンは、実質的にこう言っている。
◆核武装か、戦争か
【 あなたは最近の論文(共同執筆論文)で、現状がこのまま進んでいけば「(完全に)核武装した北朝鮮、あるいは戦争」という選択肢しかなくなると指摘している。そうなる可能性はあるのか。】
あると思う。北朝鮮が核の保有を認めたという報道から判断しても、そうした問題設定を考えるべきだろう。「核保有を既成事実として受け入れ、今後のことを考えるか」、それとも、「核を解体せよ、さもなければ、何かが待ち受けている。ここで言う「何か」の具体的意味は分かっているはずだ」と強硬策にでるかだ。
北朝鮮が核を保有しているとすれば、それにどのように対処するかの決定を下さなければならない。アメリカが、北朝鮮の核保有という現実を受け入れ、折り合いをつけられると判断すれば、その後、さまざまな問題を招き入れることになる。一方、アメリカがそうした兵器を、強制的に排除すると主張しても、大きな問題を抱え込む。したがって私は、交渉こそが現実的路線だと考えている。それが可能かどうか見極めるべきだし、ワシントンは、現にそう試みようとしていると思う。
【中国は問題解決の推進役を担うのか、それとも、彼らは交渉のお膳立てをするだけなのか。北京は自らの提案をするつもりがあるのだろうか。】
現段階で、その質問に明確に答えるのは難しい。北朝鮮は中国はたんに交渉のお膳立てをしてくれただけだと語り、かたやアメリカは、中国は交渉枠組みの完全なメンバーだと語っている。
中国の外相が、北朝鮮問題を話し合うためにパウエル米国務長官に電話をかけてきたことなどをみても、中国は、北朝鮮が言うよりも、はるかに深く問題にコミットしていると私は感じる。
朝鮮半島に大きな利益を有している中国が、状況に対してどう立ち回れば、自国の利益を守り、高められかを判断するにはまだ時間がかかると思う。中国は「北朝鮮を予期せぬ行動、中国の国益にそぐわない行動に駆り立てるかもしれない大きな圧力をかけること」を望んでいないが、一方で、北朝鮮の核武装化も望んでいなし、北朝鮮政府の崩壊も、朝鮮半島が極度の混乱状態に陥るのも望んでいない。
「大量破壊兵器を持つならず者国家が、兵器を拡散・使用するのを阻むためなら、アメリカは大規模な軍事力を行使する能力だけでなく、その意図も持っている」。今回の問題に関するイラク戦争の最大の影響は、この点を中国側に強く印象づけたことだろう。●
http://www.foreignaffairsj.co.jp/CFR-Interview/romberg.htm
◆中国は張子の虎である。図体ばかりでかくて国家の体をなしていない。SARSに対する対応も満足に出来ず、北朝鮮に対しても影響力があまりないことが暴露された。北朝鮮が核武装した場合一番困るのが中国だからだ。