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【バグダッド=吉形祐司】イラク戦争後の国家再建の鍵を握る米国の復興人道支援庁(ORHA)が活動を加速させている。
「イラク人による統治」を掲げるORHAが、まず取りかかったのは公務員の賃金支払い。さらに、国民生活に直結する省庁を手始めに、イラク人責任者を次々と指名している。中には旧支配政党のバース党員も含まれているが、既存の官僚機構を活用し、行政機能の早期回復を図る方針だ。
ORHA広報官によると、職場復帰した公務員に支払っているのは一律20ドルの「緊急手当」。米国が凍結した17億ドルのイラク資産のうち14億ドルを主に給与関連支出に充てている。
また、省庁の再開では、石油省、工業鉱物資源省、保健省などのトップ人事を優先し、各省庁運営委員会の責任者として前政権下の次官級イラク人を指名。さらにORHAが選んだ米国人専門家を上級顧問として後見人に据え、その補佐役に亡命イラク人専門家をあてている。
工業鉱物資源省の場合、実質的な大臣にあたる委員会の責任者(監督官)には、前政権で次官を務めたアハメド・ガイラニ氏を指名。上級顧問に元駐スーダン米大使のティム・カーニー氏、その補佐役に米国籍を持つ亡命イラク人のラムセイ・ジッドゥー氏が就任するといった具合だ。
ガイラニ氏を含め、新任の省庁トップはいずれもバース党員。ORHAは人選過程の詳細を明らかにしていないが、カーニー氏は「不適格者とは大量破壊兵器の開発やテロ行為、著しい人権侵害に携わっていたかどうかで決まる」と述べ、党員の無差別な排除はしなかったことを示唆した。
イラクは元来、教育・医療水準が高く、官僚機構も整っており、既存の人材の再活用は合理的な手法だ。ORHAは行政機能が軌道に乗れば、暫定政府に順次権限を移していく方針だ。
ガーナー氏が5日、予定より半月前倒しする形で「暫定政府指導部が今月中旬までに発足する」と発言したのも、イラク人による政府を望む声が、国民の間で高まりつつある現状に鑑みたものと見られる。
しかし、イラク国民が、ORHAの活動を十分に理解しているかどうかには疑問も残る。各省庁は今後、新給与体系を策定して正規の月給を支払うが、「緊急手当」を手にした公務員の多くは20ドルを2か月ぶりの“月給”と勘違いし、「これでは何も出来ない」と不満を漏らした。
確かに、20ドル(実勢レートで4万イラク・ディナール)は「5人家族を1週間支えるのが精一杯」(バグダッド市民)。コメや小麦粉、砂糖などが250ディナールで配給されていた開戦前と比べて生活は困窮しており、「治安も生活もよくならないなら、米軍は出ていけ」との主張に結びついている。
このためORHAは今月15日に放送を再開する国営テレビなどを通じ、広報活動を強化していくとみられる。
(2003/5/6/21:19 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030506i214.htm