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イラク侵攻をテレビはどう伝えたか(雑木 Zakki)
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投稿者 新規投稿 212 日時 2003 年 5 月 05 日 21:01:44:

イラク侵攻をテレビはどう伝えたか
 2003.05.01
 公正欠くNHK、民放は温度差

 3月20日(日本時間)午前11時半過ぎ、アメリカはイラクへの攻撃を開始した。テレビメディアは開戦当日、NHK、民放全局が特別番組を編成し、イラク攻撃を伝えた。
 各局の昼ニュースは、ほぼ11時半から始まる。米軍の攻撃第一報は、昼ニュースのバグダッド生中継リポートで伝えられた。民放各局はテレビ東京を除き、11時半の昼ニュースから午後7時まで、報道特番を組んだ。
 NHKは11時50分から深夜も休止することなく、事実上の24時間体制で報道した。開戦当日の視聴率は、NHKの昼ニュースが16・1%、午後7時のニュースは20・8%を記録した。
 放送部会では、NHKをはじめ各局の報道特番をモニターし、分析した。開戦当日、テレビは米軍のイラク攻撃をどう伝えたのか。
 NHKの伝え方はまさに異様だった。
 その特徴の第一は、米国防総省が提供した巡洋艦から発射される巡航ミサイルの映像を10時間余りの間に61回、多い時には1時間に13回も放送したことである。閃光と爆音に包まれたこれらの映像が意味する凶暴な暴力と破壊そのものの行く下には、殺され傷つく多くのイラクの人々がいることを想像しようともせず、視聴者を無機質かつ圧倒的な暴力の表象で威嚇する行為ですらあった。

 米英軍に肩入れ

 次に言えることは、攻撃についての伝え方の偏りである。ワシントンからはブッシュ政権が開戦を決意するまでの経緯などを、現地周辺からは米英軍の動きなどを、さらに世界各地からは各国の反応などを14か所もの中継を使って伝えたが、攻撃に反対する各国の反応は別として、ほとんどの記者がブッシュ政権や米軍筋からの情報だけを頼りに攻撃の目的や作戦の推移を伝える事に終始した。取材の安全を最優先にしてバグダッドの映像は外国のテレビ頼り、空爆の現状はホテルの従業員に電話取材するだけといった姿勢からは戦争の実相は伝わらない。
 また、スタジオ出演したほとんどの記者・解説委員・ゲストらは、口をそろえて最初の攻撃が限定的なもので、市民やインフラへの被害を少なくすることを意図したものであったと暗に強調し、その目的のためならフセイン中枢部の暗殺も肯定されると言わんばかりの解説を繰り返した。
 先制攻撃の是非や、開戦の口実が大量破壊兵器の排除というブッシュ政権の当初の建前から、フセイン政権壊滅、さらにイラク解放とくるくる変わったことに対する厳しい批判も最後まで聞かれなかった。その一方で、クウェートに展開する米軍兵士や、イスラエル国民に対して、イラク軍が生物・化学兵器を使う可能性があると現地の記者が繰り返し伝えるという具合に、総じて米英軍に肩入れした報道の姿勢がうかがえた。
 こうしたNHKの姿勢は公共放送としての公正さや中立性を損なうだけでなく、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に扱うという自らの放送番組基準にも反するものだ。

 低レベルの解説

 民放はどうか。放送時間帯によっては情報量が少なく、画−的に比較はできないが、攻撃の真実を多角的、多面的に伝えようとする努力の点で、温度差を感じさせた。
 民放各局とも、3月20日午前11時半の昼二ユースで米軍の攻撃開始を速報し、報道特番体制に入った。
 日本テレビの場合、特別番組はフリージャーナリストによるバグダッドと北部クルド人自治区からの生中継と、女性記者の米陸軍従軍リポート(生中継)を軸に構成した。しかし、情報は米軍やワシントンから流されるものに限定され、ビデオのパッケージ企画やスタジオのゲスト解説も展開したが、本質に迫るには十分とはいえなかった。
 「ステルスが飛んで、バカバカ爆弾を落とす」など、稚拙で低レベルの解説を繰り返したゲストの軍事評論家は逆に日本テレビの報道特番の価値を貶める結果を招いた。
 ただ、番組の最後でバグダッドからフリージャーナリストの佐藤和孝さんが「市民と話したが、これは始まりにすぎない、もっと激しくなると言っていた。ミサイルを本当に打ち込むとは、その瞬間まで信じられなかった」と、イラク攻撃の本質を衝くリポートも見られた。

 多角解明努力も

 TBSの「筑紫哲也NEWS23」は、時聞を1時間延長して拡大版を放送した。番組のタイトルは「イラク開戦緊急特番、この戦争の正体を考える」。
 攻撃開始初日のニュースをまとめて伝えた後、ゲストを交えて(1)たった一国の意志で世界の運命は決まるのか?(2)新パワーバランスの出現(3)世界の挑戦(4)あぶり出された日本の姿、という四つのテーマで「戦争の正体」に迫った。
 番組では、ブッシュ大統領の暴走を支えるネオ・コンサバティブ(ネオコン、新保守主義者)グループとキーマンのリチャード・パール前「イラク解放委員会」委員長の影響力が指摘された。チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官と石油利権とのかかわりなどにも言及し、「戦争の正体」に迫る多角的解明の努力が伝わってきた。
 筑紫キャスターは「国連や国際法や国際協調だけでなく、外交がこれほど軽んぜられたことはない。まさに、新しい帝国が出現した」と、番組を締めくくった。(放送部会)


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 週刊誌
 2003.04.08
 自制の効かない悪のり企画

 週刊誌の功罪が問われるたびに、「もう一つのジャーナリズムが必要だ」といった擁護論が顔を出す。大機構を伴う新聞、放送に対して小回りの利く、また権力との密着度の少ない週刊誌が時代の真実を伝えやすいという、希望的観測を交えた議論だ。確かにこれまで、「新聞が分かっていて書かない」問題のいくつかを週刊誌が無遠慮に暴いて突破口を開いた実績もある。昨年の鈴木宗男議員追及や山崎拓自民幹事長の女性スキャンダル、最近の大島理森農水相への疑惑報道などでそうした役割を一部果たした。
 しかし、ムネオ追及の裏側で辻元清美を追及する先鞭をつけたのも週刊誌であり、その利用法に密かな工夫を凝らす連中もまた存在する。

 そして週刊誌が決定的にダメなのは、戦争か平和かとか、国の進路にかかわるような大問題で責任のある報道を決してしないことである。
 イラク戦争が迫ってきた。国際世論の多数が戦争回避の道を望んでいる。ところが、3月に入ったらほとんどの週刊誌が「イラク」に触れなくなってしまった。それまでフセインの独裁ぶりを非難するかたわら、ブッシュの思い上がりにも疑問を呈する程度の記事は書いてきた週刊誌が、沈黙してしまったのである。
 おそらく、2月中旬の世界同時1千万人反戦デモが、週刊誌の軽口を封じてしまったのかもしれない。遠い中東の出来事が身の回りの大問題だと初めて気づいたのなら上等だが。

 そんな中で、「新潮」は2週連続で「イラク戦争『20の謎』に答える」と題して、断片的な情報を羅列した(3・13、20)。
 大部分は、「フセイン『北朝鮮亡命説』の奇っ怪」「日本には『イラク料理店』がない」などのヨタ話だが、「どのくらいの『戦死者』が出るか」などは不謹慎のそしりを免れまい。「民間人も含めて犠牲者が数十万人になるとは考えにくい」などと根拠もなしに少なめの数字を出し、だからいいだろうと言わんばかりなのである。あげく、「朝日が笛吹けど踊らぬ『反戦デモ』」などと揶揄する。

 週刊誌では「毎日」だけが、「小泉はブッシュの忠犬か」(3・16)、「それでも平和的解決を諦めるな」(3・23)と正面からこの問題を捉える姿勢を続けている。
 同誌3・16号の「論者が語る『戦争と日本人』」では、従来どちらかと言えば政府寄りと見られていた人に語らせている。たとえば元NHKキャスターの磯村尚徳氏。彼の親しいパリ駐在の日本人記者は、イラク攻撃に反対のフランス側の記事を送っても本社が受け付けてくれない、と嘆いているそうだ。米国系の情報にしか価値を認めない日本のメディアは、「洗脳工作に乗ってしまっている」と。

 イラク関連の報道をおおむね放棄した週刊誌は、再び北朝鮮へのネガティブキャンペーンに力を入れている。「北」のミサイルで日本が壊滅するといわんばかりの恐怖の煽り。これは「有事法制」に直結しやすいと見てか、「プレイボーイ」(3・25)まで、「(自衛隊の)装備の見直しや法改正」を急げとせき立てる。
 そんな中、「蓮池透さん『衆院選』自民有力候補に!」(現代3・22)などという記事まで飛び出した。ほとんど実体的な根拠のない、悪のりの企画である。(亀井淳)

http://www6.plala.or.jp/X-MATRIX/data_b/jcj_0501.html

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