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【ニューヨーク=勝田誠】国連安全保障理事会と北大西洋条約機構(NATO)はこのほど、NATOが今年8月から、アフガニスタンに駐留する多国籍軍・国際治安支援部隊(ISAF)の指揮を執ることで正式合意した。地域的な安全保障機構であるNATOが欧州から完全に外れた地域で指揮権を握るのは、1949年の発足以来初めて。今回の合意は、米国による新たな安全保障体制構築への第一歩としても注目されている。
安保理の議長国メキシコは24日、NATOのロバートソン事務総長がアナン国連事務総長にあてた書簡に回答する形で、ISAFの指揮権担当を求めたNATO提案を受け入れた。指揮国の交代に安保理決議は不要だ。
2004年半ばまでの駐留が予定されるISAFは、これまで英、トルコ、独・オランダが半年ごとに指揮を執ってきた。ただ、現兵力4800人の9割以上がNATO加盟国からの派遣で、NATO側は指揮権担当の狙いについて、「ISAFの計画性と指揮系統に一層の継続性を持たせるため」と説明している。
ISAFは、安保理諸決議に基づいてアフガニスタンの国家再建を担う国連現地機構に協力し、治安維持を担当する。NATO側は、NATOが指揮権を担った後のISAFについて、「任務は変わらず、兵士もISAFの肩章を付ける」と強調している。
一方、安保理とは距離を置き始め、「国連迂回(うかい)」、あるいは「国連無視」の姿勢を明確にし始めている米国は、NATOの地球規模での活用には積極的だ。パウエル米国務長官は4月のNATO外相会議で、戦後イラクの治安維持でNATOの活用を検討していることを明らかにした。
米同時テロ後の米国の強固な意志を読み誤ったフランスなど欧州各国が一定の力を持つ安保理と比べて、米国中心の軍事同盟であるNATOは、対テロ戦争への積極参加をスローガンに、地球規模での展開に早急に道を開いてきた。
このため、各国の国連外交筋の間では、NATOのISAF指揮について、「米現政権が、国連安保理と距離を置きつつ、NATOや日米安保などの軍事同盟を最も有効に活用する姿勢を示した第一歩」との見方が広がっている。
また、外交筋などは、NATOがISAFを指揮することに込められた2つの意味を指摘する。
ひとつは、安保理でイラク戦争に最後まで反対したフランスへの「懲罰」だ。フランスはNATOに政治加盟しているだけで、軍事加盟しておらず、米国を中心とする軍事機構の「正式会員」でないため、これを利用して同国の立場を弱めることができるわけだ。
もうひとつは、米国の「直属機関」であるNATOが、遠く欧州から離れ、ロシア、中国やイラン、インド・パキスタンと近接する戦略的要衝アフガニスタンで、本格活動を開始する地政学的な意義だ。
(2003/5/1/00:59 読売新聞 無断転載禁止)