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【ティクリート（イラク北部）＝吉形祐司】イラクのフセイン大統領の６６歳の誕生日にあたる２８日、大統領の出身地ティクリートでは、市民が路上に繰り出し、小躍りしながらフセイン支持を訴えた。陥落から半月。イラク最後の要衝は、今なお根強いフセイン人気に包まれていた。
首都バグダッドから北へ約２００キロ。幹線道路をまたぎ、「ティクリートはサダムによって栄華を得た」と書かれた巨大な門が現れた。昨年までは、誕生祝賀の横断幕や食事をふるまうテントが並んだ路上も、今年は閑散としている。
米軍の厳重な検問。「サダムの誕生日だ。警戒を強めている」と兵士の１人。豪華な門構えの大統領宮殿は米軍が接収し、市内の肖像画は米軍が破壊したが、壁という壁には「サダム万歳」「誕生祝賀 イラク栄光の創設者」と祝辞が並ぶ。軍や情報機関の主要ポストは同郷者がほぼ独占してきただけに、米軍占領下でも、恩恵を受けた市民の心は変わっていない。
だが、この日の朝、目抜き通りのサダム通りにいた、会計士のアドナン・アルディアブさん（３７）は「誕生祝賀も、米軍がいては不可能だ」とぽつり。色とりどりの布きれとフセイン大統領の写真を掲げ、個人的に誕生を祝っていた農業イマート・アハメドさん（３５）は「今年は自宅でひっそりとお祝いだ」と語った瞬間、嗚咽で後が続かなくなった。
しかし、市民の沈黙は正午には、限界を超えた。「誕生祝賀 イラク全国民の誕生日」と書いた横断幕を手にした市民約５０人が、アル・アタバ通りに繰り出した。大統領の写真や国旗を手に、拳を振り上げて「我々はサダムの右腕だ」「くたばれブッシュ」と連呼。通りがかりの車も、クラクションで応じた。だが、行進は３００メートル進んだところで、米軍が解散を命じた。
◇
ティクリート南郊にあるフセイン出生地のオウジャ。ヤシに囲まれた大統領一家の別荘がひっそりと残る。二重の外壁で囲まれた敷地に入ると、空爆で３階建ての邸宅は壊滅状態だ。
１階広間では、直径５メートルほどのシャンデリアが落下。別棟の室内プールには水が張られたまま。中心街で聞こえた支持者の叫び声とは対照的に、無人の宮殿には、時折、ガラスの破片を踏みつける「ジャリッ」という音が響くだけだった。
(2003/4/28/20:58 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030428i212.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。