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【東京新聞】イスラエル軍、イラク戦争の陰で…
http://www.asyura.com/0304/war33/msg/220.html
投稿者 愚民党 日時 2003 年 4 月 27 日 22:52:55:

パレスチナ弾圧 巧妙化
イスラエル軍、イラク戦争の陰で…
現地で取材 土井敏邦さんに聞く
 イラク戦争は収束しつつあるが、依然パレスチナ和平は解決への道筋が見えない。イラク戦争中、イスラエルの目立つ動きはないように見えた。だがパレスチナ人への攻撃は、国際社会に気づかれないよう巧妙化していた。イラク問題の陰で何が起きているのか。今月上旬まで現地を取材したジャーナリスト、土井敏邦氏に聞いた。 (鈴木 穣)

 ■飛び散る金属弾

 一九九一年の湾岸戦争時、イスラエルは、パレスチナ自治区に全面的な外出禁止令を出し、パレスチナ人たちを閉じこめた。食料の買い出しはおろか、仕事にも行かれず経済的にも追い込んだ。

 今回もイラク戦争の「テロとの戦い」を口実に、人権侵害が懸念されていた。だが表面上は大きな動きはなかったように見えた。二〇〇〇年九月から始まった第二次のインティファーダ(民衆蜂起)への報復で、イスラエル軍は自治区に侵攻、すでに外出禁止措置や移動の制限、家屋破壊などを実施している点が大きな理由とみられた。

 しかし、実態はそうではない。土井さんは明かす。「実は手口は巧妙になっていた。『インカージョン(急襲)』。イスラエル軍はそう呼んでいる」

 二月十八日から今月十一日まで土井さんは、イスラエル南部の主にガザ自治区にいた。イラク戦争下にイスラエル軍が自治区で何をするのか見極めるためだ。

 土井さんが衝撃を受けた事件は三月五日、北部のジャバリア難民キャンプで起きた。「イスラム原理主義組織ハマスがロケット砲を造っている」とイスラエル軍が主張する工場が戦車の砲撃で破壊された。

 「報道された映像で確認すると、軍が撤退しだしたので、消防車で駆けつけた消防士らが消火作業を始めた。そこに戦車から砲撃された」。これだけでも人道上問題だが、ここで終わらなかった。

 「砲弾が空中で爆発して金属片が四方に飛び散る破片弾だった。バタバタと人が倒れた。軍の武器PRビデオでは見たことがあるが、使われたのは初めて見た。明らかに人間の殺傷を狙った兵器だ。しかも民間人と分かっていたはずだ」

 この攻撃で子ども二人と高齢者一人を含む十二人が死亡した。

 イスラエル軍の攻撃は、多くの民間人を巻き込んでいる。この二日前の同月三日、ガザ中部のブレイジ難民キャンプでは、民家が爆破された。

 「ハマス幹部の家の破壊が目的だったらしいが、狙う家の周りに爆弾を仕掛け爆発させた。難民キャンプは住宅が密集している。周りの民家も破壊された。しかも通常、荷物を運び出す時間を与えるためイスラエル軍は、爆破予告から三十分待つが、この時はいきなり爆破した」

 この攻撃で少なくとも八人が死亡した。妊娠九カ月の女性や十四歳と十六歳の少年もいた。「どの攻撃も深夜に戦車やブルドーザーなどで侵攻、夜明けには撤退する。しかし毎夜のようにガザのどこかで攻撃を繰り返す。一度攻撃した場所もまた攻撃する」

 ■犠牲は毎回数人

 NGO「パレスチナ人権センター」の調査でも、二日と空けずガザ地区内各地を「強襲」している。

 だが「犠牲者は毎回数人というケースが多く、メディアが大きく報じない。それに取材しようにも、夜間だと記者も無差別に攻撃されるため現場に近づけない。メディアの目がないところで攻撃は執拗(しつよう)に行われている。これがインカージョンの中身だ」

 こうするのはイスラエルにとって苦い経験があるからだという。

 「昨年、ジェニン自治区への大規模侵攻で多くのパレスチナ人に犠牲が出て、国際社会の批判にさらされた。それを避けイラクに耳目が集まっている間に実行するため、目立たないような作戦に変えた」

 土井さんが今回心を痛めたもう一つの問題は家屋破壊だ。特にガザ南部のエジプト国境沿いにあるラファ難民キャンプの被害が深刻だった。

 「イスラエル軍は、国境沿いに幅数十メートルの緩衝地帯を設けるために、国境に接してあるこのキャンプで家屋破壊を続けている。戦車が威嚇射撃をする中で、ブルドーザーが破壊する。住民は、いつ来るか分からない相手におびえ、夜も道路側の部屋には寝られない」

 イスラエル側は、この難民キャンプでエジプトから武器密輸が行われていると主張する。土井さんは「セキュリティーを理由にイスラエル軍は何でもする」と憤る。

 ■失業率7割にも

 家を失った住民はテントや借家住まいを強いられる。土井さんが滞在していた現地の知人も家を半壊させられ、一カ月四十ドルで借家生活をしている。十人家族で生活費は一カ月四百ドル必要という。農地も破壊され、移動の制限を受け、仕事にも行けず失業率は60−70%といわれる。貯金を食いつぶす毎日だ。だが家屋破壊も大きくメディアで報じられることは少ない。先月十六日、ブルドーザーにひかれ死亡した米国人女性、レイチェル・コリーさんが、ここでの家屋破壊阻止活動中に惨事に遭った。土井さんは国際社会の関心の低さが、この惨事を誘発したとの懸念も感じている。

 「イスラエル軍は『レイチェルさんが見えなかった』と説明しているが、ひかれる前、二時間にわたりブルドーザーの運転手に訴えている。それに服装も目立つ蛍光色の上着を着ていた。一緒に活動していたメンバーも撃たれた。意図的としか思えない」

 二〇〇〇年から既に八百軒以上が破壊されている。全土では一万二千軒にも上るという報告もある。

 ブッシュ米大統領は今月、北アイルランドでの米英首脳会談後に、中東和平交渉に取り組む姿勢をあらためて表明した。

 「家屋破壊や道路の寸断など、将来のパレスチナ国家のインフラがどんどん切り崩されている。こんな状態を許して、どうやって和平を実現し国家をつくれというのか」

 二十八日午後六時半から、土井さんの報告会が開かれる。会場は中央大学駿河台記念館。会費千円。問い合わせはNPO法人「パレスチナ子どものキャンペーン」=電話03(3953)1393=へ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030427/mng_____tokuho__000.shtml

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