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単極構造世界と安保理の崩壊―安保理はなぜ死滅したか(マイケル・J・グレノン)[フォーリン・アフェアーズ]
http://www.asyura.com/0304/war33/msg/1042.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 12 日 20:49:01:


単極構造世界と安保理の崩壊―安保理はなぜ死滅したか
Why the Security Council Failed
マイケル・J・グレノン
タフツ大学フレッチャー・スクール国際法教授

 米欧の対立劇が表面化する前から、すでに国連安保理の命運は尽きていた。第2次湾岸戦争が問題だったのではない。世界の権力構造そのものが、国連憲章が想定していた秩序から大きく様変わりしたのだ。

 地政学をめぐる唯一の「真理」とは、「国はパワーを模索することで、安全保障を確保しようとする」ということだ。この国家の本能的思惑を不器用に管理しようとする法的制度は、最終的にはこの「真理」によって淘汰されてしまう。各国は(好都合なら)法的制度をツールとして利用し、不都合なら無視する。国際的な法の支配の実現を再度求めるのなら、こうした国の行動パターンと単極構造秩序という現実を認識することが第一ステップとなる。


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論文に関するQ&A

国連安保理はなぜ死滅したのか。

 今回のイラクをめぐる意見の分裂によって、安保理が衰退したわけではない。各国間のパワーの格差、文化的隔たり、そして武力行使に関する見解の相違が安保理を衰退に追い込んだ。

 国連が機能するように想定されていた世界の権力構造そのものが、かつてのものとは様変わりしていた。アメリカのパワーが突出し、世界秩序が単極化してしまったことが世界の権力構造を変えてしまった。これを背景に、文化が衝突するようになり、武力行使に対するさまざまな見方が生まれ、安保理の信頼性もゆっくりとした腐食プロセスにむしばまれていった。より静かな環境でなら、安保理も何とか適切に役目を果たせたかもしれない。だが、このように緊張した環境では、もはや役目を果たせなくなっていた。こうした問題の責任が特定の一国にあるわけではない。それは、国際システムの発展と進化の冷酷な結末というほかない。

国連憲章の行く末は。

 国連憲章はすでに、一九二八年のケロッグ・ブリアン(不戦)条約と同じ末路をたどっている。ケロッグ・ブリアン条約を通じて、主要国は国策としての戦争に訴えないことに厳粛にコミットしたが、結局は、主要国のすべてが第二次世界大戦へと突入していった。外交史家のトマス・ベイリーは、「一時の幻想に終わったこの条約は、欺瞞であるばかりか、危険でさえあった。大衆に国際環境をめぐる安全幻想を抱かせてしまったからだ」と指摘した。だが昨今では、「国連憲章が自国の安全を保障してくれる」という幻想に惑わされる国は存在しない。国際法で武力行使を枠にはめようとしたのは二十世紀の国際社会の記念碑的な試みだったが、その実験は失敗したというのが現実である。この失敗を認識せずして、今後なされる同様の実験を成功させる見込みを高めることはできない。

アメリカは武力行使を控えるように求める圧力にどう対応すべきか。

 アメリカはそのような圧力に抵抗するべきだ。シラクが警告したように、戦争が「つねに最悪の選択肢」とは限らない。事実、ヒトラーからミロシェビッチに至るまでの数多くの暴君に対処するには、外交よりも武力行使のほうが優れた選択肢だった。そして不幸にも、WMD拡散に対抗するには武力行使が唯一かつ最善の政策として浮上してきている。民間人に強いる苦しみという点でみれば、経済制裁よりも武力行使のほうが、より人道的対応になることもある(対イラク経済制裁からも明らかなように、経済制裁は兵士よりもむしろ子供たちを飢えさせてしまうことが多い)。

 第二次湾岸戦争後の大きな危険は、アメリカが武力行使をとるべきでないときに、そのような行動に出ることではなく、忌まわしい戦争の記憶、大衆の反発、そして経済の衰退という現象を前に、武力を行使すべきときに、アメリカが武力行動をとらなくなってしまうことだ。世界が無秩序へと陥っていくリスクを前に、アメリカが秩序解体のペースを食い止めるか、あるいは鈍化させるために、果敢にパワーを行使する必要性と責任はますます大きくなっている。


*論文全文はフォーリン・アフェアーズ日本語版でご覧になれます      


Copyright 2003 by the Council on Foreign Relations, Inc. and Foreign Affairs, Japan


http://www.foreignaffairsj.co.jp/intro/0305Glennon.htm


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