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IRAQ
The U.N. Role
Updated: May 9, 2003
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国連は戦後イラクで大きな役割を担うことになるだろうか。
今後数週間にわたって、その件が国連で論争されることになる。五月九日に安保理に提出された戦後イラクの経済と政府について米英がまとめた決議案は、占領当局にかなりの権限を与える一方、国連については諮問的役割に限定する内容となっている。
米英の安保理決議案の骨子はなにか。
・ 米英が、少なくとも今後一年間にわたって、イラクの政治や経済資源を管理することを認める。
・ イラクの石油資源からの収益、そして、現在の石油と食料の交換計画の三十億ドルの資金を「イラク支援基金」へと移す。この新設の基金は、国際的な監督の下で米英が管理する。
・ イラクの石油資源からの収益が間違いなくイラク民衆の恩恵となるように、国連、世界銀行、国際通貨基金、「地域機構」がアドバイザー役を担う。
・ 兵器売却を規定する条項以外の、すべての対イラク国連制裁を解除する。石油と食料の交換計画を四カ月間で段階的に廃止していく。
・ 国連の特別調整官は、援助の支給、難民や国内避難民の帰還、イラク政府の形成、法・司法制度の改革、経済復興を(側面から)支援する。
どのような国がこの決議案を支持しているのか。
アメリカ、イギリス、スペインが今回の決議案の共同提出国だ。しかし、スペインのインボセンシオ・アリアス大使はすでに決議案の微調整を求めている。
イラク戦争に反対した一部の理事国も、今回はそれほど強硬な反対姿勢をとっていない。アンゴラのマーチンス国連大使は「さい先のよいスタート」だと語り、チリのバルデス国連大使も「これまでの反応は上々だ」とコメントしている。ドイツの国連大使も、今回はアメリカ案に反対しないと示唆している。
反対すると思われる国は。
ロシアとフランスだ。両国とも安保理常任理事国としての拒否権を持っている。仏露はそれぞれ対案を用意している。このため、二〇〇三年のイラク戦争前のような刺のある外交的応酬が再現されるのではないかという懸念もある。中国は、これまでのところ立場を明らかにしていない。
フランスは何を望んでいるのか。
フランスは、「国連の大量破壊兵器(WMD)査察官が米軍とともにWMDがイラクに存在しないことを確認するまでは、国連制裁を解除するのではなく、一時的凍結措置にとどめるべきだ」と主張している。
湾岸戦争後の一九九一年四月に対イラク制裁措置を承認した国連決議六八七号では、制裁を解除するには、イラクに大量破壊兵器が存在しないことを確認する必要があると規定されている。
しかし、最近ではフランスも妥協することに柔軟な姿勢を示している。五月九日にフランス外務省のドビルパン外相は「フランスは今回の外交交渉に、パートナー諸国との緊密に協調して、建設的な姿勢で臨んでいる」というコメントを出している。
ロシアは何を望んでいるのか。
ロシアの立場は、フランスよりも厄介だ。対イラク制裁の一部を残すこと、国連の査察チームの活動をイラクで再開させることをロシアは提案している。ロシアは、「国際的に承認されたイラク新政府が誕生し、イラクでの国連の中核的な役割が認められるまでは、石油と食料の交換計画を継続すべきだ」と主張している。
しかし、交渉においてロシアは柔軟な態度をとるだろうと指摘する専門家もいる。パウエル長官は、イラクでの国連の役割その他についてロシア側と話し合うために五月一四日〜一五日にモスクワを訪問する予定だ。
なぜ仏露は国連制裁の解除に反対しているのか。
制裁を解除すれば、国連のイラク石油の管理体制にピリオドが打たれ、(安保理メンバーとしての)フランスやロシアの戦後イラクへの影響力が低下するからだ。フランスとロシアは、米英によるイラク占領に正統性のお墨付きを与えるようないかなる行動にも反対する姿勢をとっている。「イラクでの危険に満ちた状況を監視し、アメリカの戦争意図が正しかったかどうかを確認するために、国連の査察官を送り込む必要がある」と主張している。
仏露の立場は彼らの経済利益への配慮に影響されているだろうか。
専門家の多くは、自国の経済利益への配慮が彼らの立場に大きな影響を与えていると考えている。ロシアとフランスは、サダム政権との間で石油開発契約を交わしていたが、アメリカが管理する戦後の再建プロジェクトの受注契約から締め出されるのではないかと不安に感じている。
また、イラク政府はロシアに対して六十〜八十億ドル規模の債務を負っている。したがって、ロシアとアメリカが戦後イラクについて合意に達するには、何らかの経済的誘因が必要になると専門家はみている。
決議案をめぐる今後の見通しはどのようなものか。
「2003年のイラク戦争前に起きた列車事故のような国連での外交的混乱を再現してもかまわないと考える外交関係者はほとんどいない」とリー・フェインシュタイン(外交問題評議会シニア・fフェロー)はみている。しかし、列車事故のような外交的混乱のしこりがいまも残っているために、アメリカ側が妥協する必要が出てくるかもしれないとみる専門家もいる。ここで争点とされるのは、イラクに国連査察官が戻って活動することを認めるかどうかだろう。これこそ、米ロ間で現在話し合われているポイントだ。
国連の場で妥協が成立しなければどうなるのか。
国連の承認が取り付けられなければ、アメリカとイギリスは、国際法的には非常に曖昧な状態なままイラクで活動することになる。国連が制裁措置を解除しなければ、イラクとの貿易取引に前向きな企業を見つけるのも難しくなるとみる専門家もいる。
http://www.foreignaffairsj.co.jp/source/Iraq/UN.htm