現在地 HOME > 掲示板 > 戦争32 > 883.html ★阿修羅♪ |
|
【ワシントン=佐々木良寿】戦後イラクの政治体制構築問題で、米国が、イラク国民で多数派を占めるイスラム教シーア派を通じたイランの影響力拡大に警戒感を深めている。
新政権樹立に向けて、反フセイン各派が主導権争いを激化させるなかで、イランの動きがトルコなど周辺諸国を刺激する可能性もあり、米国の描く民族、宗教が融和した民主国家建設への道が険しさを増すことは必至。ブッシュ米政権は、イランに対して警告するなど、外部からの干渉排除に全力を挙げている。
イランの動きを巡っては、23日付米紙ニューヨーク・タイムズが、米政府当局者の話として、イランで訓練を受けた亡命イラク人ら工作員が、フセイン政権崩壊と前後してイラクに潜入し、シーア派の中心地である中部の聖地ナジャフ、カルバラ、南部のバスラなどで、宗教指導者との接触を深めている、などと報道。これを受けて、ホワイトハウスのフライシャー報道官は同日、「工作員を使ってシーア派社会を不安定にすることは、イラクへの干渉であり、イラク国民による民主主義建設という我々の考えに反するものだ」と不快感を表明。「いかなる外部の干渉にも反対するとの立場はイラン側にすでに明確に伝えてある」と強調した。
シーア派はフセイン政権下では弾圧されたが、イラク国民の6割前後を占める。同政権崩壊後、シーア派内部も対米協調派と反米派の確執が伝えられるなど1枚岩ではない。しかし、「民主的な連邦制」で原則合意しながら反フセイン各派の思惑が交錯し、権力の空白状況が続く中で、22日の聖地カルバラへの100万人規模のシーア派巡礼は、同派の持つ組織力と潜在的な政治エネルギーを見せつけた。実際、ワシントン・ポスト紙は、フセイン政権打倒に精力を傾注するあまり、シーア派パワーを過小評価し、反米感情の高まりに準備ができていなかった、との米政府関係者の話を伝えている。
フライシャー報道官は、「イラクのシーア派社会は非常に多様だ。外部の考えを押しつけようとしても奏功する可能性は低い」と述べているが、その米国自体、イラクの「外部勢力」であることも事実。「イラク国民による民主化」というブッシュ政権の方針を字義通り進めるとすれば、シーア派の意向は無視できない。米国は既に、戦後のイラクに影響力を持つとみられた親米のシーア派指導者アブデルマジド・ホイ師が今月10日、帰国直後にナジャフで暗殺されるという誤算に見舞われている。イランなど「外部勢力」の干渉を未然に防ぐためにも、親米宗教指導者の早期育成などを急ぐものとみられる。
(2003/4/24/23:01 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030424id23.htm